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Hundred Over?(わたでき9サンプル)

「どうかな、マルセイユ大尉」
 デスクに肘をついたグンドュラ・ラル少佐は、端正な口元に、薄く笑顔を浮かべていた。彼女の視線の先には、”アフリカの星”ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ大尉が鷹揚に腰掛けている。
 マルセイユはこれから二週間、ここ第五〇二統合戦闘航空団基地に滞在することになっていた。ロマーニャに続いて、ここ、ペテルブルクでも宣伝映像を撮るのだという。
「どうか、とは?」
 マルセイユは問い返す。日頃の彼女らしくもない、それは丁寧な口調だった。ラルに対し、少なからず敬意を抱いているらしい。
 誰もが驚くような光景だが、不思議はない。マルセイユが新任の少尉としてJG52に赴任した時、ラルは既に経験の豊富な中尉だった。冷静で度量の広い中隊長であり、マルセイユと同じく見越し射撃の名手でもあったラルは、その時点で撃撃墜数も二桁に乗せており、雛鳥も良いところのマルセイユらにとって、遥か上に仰ぎ見る存在だったのだ。それに、マルセイユを持て余したJG52にあってただ一人、その実力を評価してくれていた人でもある。
「この基地さ。懐かしくはないか? 色々と似せて作ったんだが。君も短い間とはいえ、JG52にいた人間だ。ところどころ、当時を思い出すものがあるだろう?」
 マルセイユは苦笑して、肩をすくめた。
「あまり、良い思い出がありませんから」
「そうか。そうだったな……」
 ラルは頷いた。当時のマルセイユの評判を思い出したのか、微笑にやや、苦いものが混じった。
「……しかし、後のアフリカの星を、二週間で放り出すとはなぁ。上の判断とはいえ、惜しいことをした。君がいれば我々はもっと楽をできていたろうに」
「どうでしょう。問題児でしたから。余計な手間を増やすだけだったかも」
「それはそれで楽しいものさ」
 そう言って笑うラルの言葉に、嘘はない。事実、第五〇二統合戦闘航空団の指揮官に任じられた彼女は、部下に好んで問題児を登用した。扶桑、スオムス、そしてカールスラント。各国で持て余されていたエースたちが、彼女の下に集まっている。じゃじゃ馬を上手く統率し、結果を出させるラルのやり方は、マルセイユの上官として確かに理想的なタイプだった。
「君の階級と実績がもう少し低ければ、うちに招きたかったんだが。いや、今からでも遅くないな。どうだ? なんだったら私の代わりに司令をやってもいい。ペテルブルクの星。案外悪くないんじゃないか?」
 さすがにおだてが過ぎる。マルセイユは苦笑して、首を振った。
「私はアフリカの空だけで十分です。ここは大尉にお任せしますよ」
「いや、私はもう駄目だよ。この歳で司令官職に補されたら、もう半ば引退に追い込まれたようなものだ」
「ガランド少将など、将官になって、しかも二十歳を超えてからも時折出撃しているそうですよ」
「あの人は特別だからな、いろんな意味で。それに」
 ラルは笑顔のまま、自分の腰を指さした。
「ここに堪えるのさ」
 冗談めかした口調だったが、マルセイユは笑えなかった。
 ラルが数年前、下半身不随になるほどの重傷を負ったことを知っていたのだ。九ヶ月に及ぶリハビリの末、今は戦列に復帰しているが、それほどの傷が後遺症を伴わない筈はない。
 発言が不用意であったことにようやく思い至り、マルセイユは言葉に詰まった。雰囲気が、気不味いものになりかける。
「まぁ、それはそれとして」
 しかし、ラルもあまり怪我については語りたくないらしい。早々に、話題を転じた。
「ここはJG52の名物女がいるからな。滞在している間、退屈することはないだろう」
「名物?」
「覚えているだろう? ヴァルトルート・クルピンスキー」
「ああ、あの……」
 脳裏を、長身の貴公子然とした少女の顔が過ぎった。
「少し前まで大尉だったが、今は中尉だ。君が滞在する間、案内役と僚機の役目を果たすよう言ってある。精々こき使ってやってくれ」

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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

Sweet - Bitter

「よう、お疲れさん」
 陽気な笑顔のリベリアンが、私のデスクに腰掛けていた。何時の間に入って来たのだろう?書類に集中するあまり、まったく気がつかなかった。
 私はあからさまに眉をしかめてみせた。書類は山積みだ。遊んでやる暇はない。剣呑な視線を、朗らかな笑顔へ突き刺してやる。
 しかしそれは、通じなかったのか、無視されたのか……。とにかくシャーリーは、引くどころか身を乗り出してきた。胸にぶら下がった巨大な脂肪の塊を見せつけるようにして。
「なんの用だ。見ての通り、仕事中だが」
 私は苛々と口を開いた。
「睨むなよ。コーヒー淹れてきてやったんだ」
 そう言うシャーリーの手には、二組のカップ。そして口から薄い湯気を立ち上らせる、銀色のポットが握られていた。
 もしこれが宮藤やリーネであったなら、私は礼を言ってペンを置いただろう。少し早い休憩として、部下と雑談をかわすのも良いかもしれない。しかし、この生意気なリベリアンと?悪い冗談だ。
「そんなに疑わしい目で見るなって」
「……ならば普段の行いにに気をつけろ。仕事の邪魔をしにきたようにしか思えなかった」
「ひっでえ」
 シャーリーはからからと笑った。
「それで、何か要求でもあるのか?」
「まさか。私は本当にコーヒーをいれてきてやっただけだ」
「……余剰部品の申請は正規の手続きを踏め」
「しつこいなぁ。……そんなに変か」
「当然だ」
 かもなぁ、とシャーリーはまた笑う。またしても嫌味は受け流された。いつものこととはいえ、嫌味を言うのすら嫌になってくる。
「ああ、もういい」
 私はペンを置いた。
「ん?」
「飲むと言っているんだ。早くしてくれ」
 私の言葉を聞いたシャーリーは、指先でカップをくるりと回すと、
「そうこなくっちゃ」
 上機嫌に、湯気の登るポットからコーヒーを注いだ。

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暴力的三顧の礼サンプル

裏NININ



COMITIA94SPで相方と一緒に出したコピー本の萩原担当分サンプルです。





「翼にッ友達がッ出来たァァァァァァァ!!!!」
 心静かに弁当をつつきたい、そんな憩いの時間昼休み。全く周囲に配慮をしない大音声をあげつつ、巨漢、飛羽棗雲(ひば そううん)は現れた。
「うお!?ゴリラ!?」
「え!何処!?」
「なんだ、棗雲か」
 驚かせないでくれ。
「で、なんだって?」
「だから、妹の翼に友達が出来たんだよ!」
 野太い声で咆哮を上げるゴリラ。
 周りにいるクラスメートはドン引きだ。俺だってドン引きしている。
 誰か助けて欲しい。そう思って周囲を見回すが、誰も目を合わせようとはしなかった。
「薄情者共……」
「?」
 しかし、翼に友達?
 飛羽翼。棗雲の妹であり、この俺、葛原龍太郎の天敵。協調性が微塵もなく、兄とごく少数の認めた人間以外とは一切付き合わない、狂犬女子中学生。
 有り得ないだろう。
 俺は箸を置いて棗雲を見つめた。それはもう、菩薩の如き慈悲深い目で。
「棗雲……ついに脳のゴリ化が……」
「やめろ。そんな目で俺を見るな。……ゴリ化?」
 この男、顔は悪くないのだが、鍛え上げた体躯と脳味噌がゴリラ並。良い意味でも悪い意味でもゴリラだった。そして、それは年々進行していて、高校卒業後の進路は野生に帰ることだと、勝手に思っている。
「とにかく。翼に友人が出来るとか、無い。誰から聞いたんだ?」
「翼からだ!あいつはそういう見栄ははらん!間違いない!」
 机を叩いて力説された。
 確かに翼はそういう見栄や嘘とは無縁だ。そこは俺も認めている。
 というか、今、机……。
「まさか……」
 考え込むふりをして、俺は机の足に目をやった。
 気のせいだと思うのだが、先程の一撃で足が歪んだような。いや、いかな棗雲とはいえ、軽く机を叩いたくらいで……。
「む?どうした、反応薄いぞ」
「あ、悪い。ちょっとばかし考え事をしていた。続けて」
 深く考えたら負けな気がした。気のせいだろう。そういうことにしておく。
「まったく……俺の妹はお前の妹だろう。ちゃんと考えてやれ」
 違います。
 呆れたように言う棗雲がやたら腹立つ。
 その上、目を合わせようとはしないくせに、周囲からは『葛原、そのゴリラなんとかしろよ』オーラが立ち上っていた。何とかしないと後で俺が糾弾される流れだ。
 なんとかするしかない、か……。
「……そういうことは、俺だけに知らせるのは勿体無いな。ほら、放送室なり新聞部なりを占拠して、もっと大勢に知らしめてこいよ」
「…………っ」
 棗雲が静止した。
「……おおおっ……おおおおおおっ」
 ジョークで軽くジャブをいれたつもりが、思いっきりクリーンヒットしたらしい。
 棗雲は呻き声を上げながら崩れ落ちた。
「俺はやろうとした……やろうとしたんだ……!」
「マジか」
「だが、翼が嫌だと……もう口を利いてくれないと……」
 ちなみに。この男、以前同じことをやろうとして失敗した前科がある。たしか翼の身長が一六〇センチを超えたときだったか……。その時は、翼が泣きながら棗雲を鉄パイプでタコ殴りにしていた。
「う……うう……っ」
 教室の真ん中で、人目を憚らず涙するゴリラ。
 号泣ではなく、静かに声を殺して泣くところが非常に気持ち悪い。
 心からやめて欲しい。俺の友人である事を。
「……それで?」
「仲直りしたいから手伝ってくれ」
 出来うる限りの嫌そうな顔で聞く俺と、可愛子ぶって答えるゴリラ。
「無理」
 俺は即答した。



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黒帳の住人 サンプル

kokutyou.jpg




3月21日に予定されていたCOMICぷらねっとさいたま31に出す予定だった物のサンプルです。
中止になっちゃったので、別のイベントに出すチャンスを窺ってるとのことです。







 私は篠原和都(しのはら わと)。家群事務所という胡散臭い事務所で、助手のアルバイトをしています。業務内容が未だによく分からないのですけど、とりあえず私のお仕事は資料の整理とお茶くみ、掃除といった雑用だけなので助かっています。私、家事は得意なんです。
 ここの所長さんのお名前は家群黒屋(いえむら くろや)。本人曰く偽名だそうです。本名は忘れたと言っていましたけど、本当かもしれません。呼び方なんて何でもいいという方ですから。
 黒屋さんは常に真っ黒な髪をオールバックにしていて、丸縁のサングラスをかけています。私は素顔を見たことがありません。服装も常に黒いスーツと赤いネクタイで、上着の下にこれまた黒のベストを着ています。
 お仕事は探偵さんのようなのですけど、私には難しくてよくわかりません。だって、お仕事を持ってくるのは佐々さんという30歳くらいの格好いい方で、依頼人の方と最初から合うことなんて滅多にないんです。その上内容はよくわからないものばかり。探偵さんって普通、迷子のペットを探したり、浮気調査をしたりっていうお仕事ばっかりじゃないんですか?
 しかも、黒屋さんはしょっちゅうお仕事を気に入らないといって断ってしまいます。なのにいつもお金は沢山あって、私へのお給料も良いんです。探偵さんにしてはおかしいので、やっぱり探偵さんじゃないんじゃないかなって思います。
 さて、今回のお話ですけど、これは黒屋さんが資料を見せてくれなかったので、私の記憶を頼りに書いています。だから日記のようなもので、全然確かじゃないんです。事件の背景もわからないし、黒屋さんがどんな風に考えているのかもわかりません。
 ただ、書いてはいけないとも言われなかったので、印象深いこの事件を記録しておこうと思ったんです。
 発端は、ある暑い日の午後でした。
 この日は午後からのお仕事で、出勤したばかりの私は、火照っている体をきんきんにきいたクーラーで冷やしつつ、事務所のお掃除をしたり遅めのお昼の準備をしていました。
 すると、1時間くらい経ったころでしょうか。唐突に呼び鈴が鳴り、私は急いで玄関まで駆けていきました。
 途中、廊下のダンボールを蹴ってしまいましたけど、黒屋さんは見ていないようなので、心の中で謝って、そのまま走りました。滅多に来ないお客さんを待たせるほうが大変ですもんね。
 大抵事務所を訪ねてこられるのは、黒屋さんが『仲介屋』と呼ぶ、佐々さんであることが多いんです。だから、この日もてっきりそうなんだとばかり思って、ドアを開ける前にポケットから手鏡を取り出して髪型をチェックしたりしました。佐々さんは大人の男性という感じで、実はちょっと憧れていたりします。
 でも、扉を開けてびっくり。そこにいたのは若い男性で、佐々さんじゃなかったんです。
 その方は大体20歳前後でしょうか。今時の若い方という感じで、茶色い髪と日焼けした肌、それから右耳の大きなピアスがきらきらと日光を反射しているのが印象的でした。
 男性は何かに怯えた様子で、
「こ、ここに家群って人、いるかな」
 そう言ったので、私はまたびっくりしてしまいました。
 だって、黒屋さんのお名前を知っていたんですから。
 黒屋さんは自分でも言っていましたけど、本当にごく一部の人しか名前を知らないんだそうです。しかもころころと名前を変えるので、今の名前を把握できているのはさらに僅かなんだとか。
「な、なぁ、いるんだろ?入れてくんねーかな……」
 男性はそわそわ落ち着かない様子でしたので、黒屋さんに確認するより先に事務所へ案内してしまいました。多分依頼人なんだろうな、と思ったので。




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燎原の火(C76九鼎ハニーサンプル)

燎原の火サンプル
※画像は印刷時のイメージです
 諸事情によりいくつかの漢字がカタカナ表記になっています



一九四年夏、曹操は徐州の民十数万を虐殺した。
兗州に動揺が走り、張邈も揺れた。
曹操の親友だなどと言われているが、そんなものは周りが勝手に言っているだけだ。自分は少し目をかけられているに過ぎない、ただの部将である。
曹操は、兗州を手にするために劉岱と鮑信を殺したと言われている。どちらも青州黄巾と戦って死んだのであって、下らない噂だ。
だが、曹操の底知れなさと、異質さ。それを間近で見せられてきた張邈は、その噂が心に引っかかり続けている。
怖い。裏切ることも、出奔することも出来ない。地の果てまで追い詰められて、無残な殺され方をされるに決まっている。
だからこの時、張邈は陳留を固めて反乱に備えた。忠義を尽くす限り、自分の命は保障されると思ったからだ。
「陳宮、城の防備はどうなっている」
城壁に登り、陳宮にたずねた。兗州で一斉に蜂起が起きたという報告を受けていた。同調しないとなれば、城外は叛徒で満ち溢れるだろう。
「万全です。これなら、いつ攻められても守りきれます」
「ならば良い」
「今頃、鄄城では大騒ぎでしょう」
「流石に、鄄城が背くことはあるまい。曹操殿の根拠地であるし。なにより、あの荀が守っている。我々はここ、陳留を守ることに腐心すればいい」
 陳宮は地平線をまっすぐに見つめている。どこか毅然とした風であり、張邈は気圧されるような気分になった。
「張邈殿は」
「ん」
「この檄文をご覧になりましたか」
「檄文だと」
 そう言って陳宮は懐から絹を巻いたものを取り出し、張邈はそれを受け取った。鼻で笑いながら読んでいたが、最後に書かれた名を見て目を疑った。あるはずのない名。張邈。自分の名がそこにある。
 血の気が一気に引いた。膝が震え、歯がかちかちと音を立てている。
「ど、どういうことだ」
「見ての通りです。この反乱は張邈殿の名の下に起こったものなのですよ」
「陳宮。貴様、まさか」
「今。ここで私の首を取られても無駄なことです。どう言い訳しても、貴方は曹操に殺される。いや、その前に逆上した叛徒に殺されるかもしれませんな」
「…」
「貴方の生き残る道は唯一つ。殺される前に、曹操を殺すことです。お分かりでしょう」
 張邈は、崩れ落ちた。



テーマ : 小説
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