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久しぶりだねウィルバー・パーク君

死の際で、僕は全てを諦めた。
17年間心の奥底から望み続けた、自由な日々も。幼馴染の女錬金術師に抱いていた、仄かな恋心も。友達という存在への、淡い憧れも。いつか旅に出るんだという、眩しい目標も。全部、全部。ひとつ残らず捨て去った。
ただひとつ。
せめて、苦しまないように、痛くないように、殺してください。
その願いだけを、残して。

「お目覚めかい」
気が付くと、暗く湿った地下室に、仰向けに寝かされていた。
天井から吊るされたランプが、偏屈な幼なじみの顔を照らしている。
起きてまず彼女の顔を拝めたのはこの上ない幸せなのだが、この部屋だけはいただけない。
折角の目覚めを台無しにしている。
「亞…阿……吁」
どうしたことだろう。
声が出ない。
「ああ、無理するな。まだ馴染んでいないのだろうさ」
馴染んでいない?
当然、質問は返せない。
喋れないだけでなく、全身が動かないらしい。
身体の内側から蝋で固められたような。あるいは、筋肉を針金と交換されてしまったような。
唯一自由になる目で、僕は状況の説明を求めた。
それはもう、必死に。
「ふふ…どうやら聞きたいようだね?私の…そう、崇高にして偉大、至高で孤高で偉大なる天才錬金術師、カトレア・メディ・エルゼベルトの奥義を!!」
違う、そうじゃない…!
というか、今偉大って二回言ったぞ。
「細かい事は後にしたまえ、ウィルバー・パーク君」
そう言って彼女、カトレアは心底落胆した表情を浮かべる。
僕は悪くない……はずなんだが。
「とにかく、だ。今の状況で君に語った所で、すべては理解できまい。状況が突飛であるというか、凡族がいくら生まれ変わろうと到底到達出来ない境地に達してしまったというか。いや、少しばかり脳を腐らせてしまったというのもあるが……そこは許容範囲内だ、問題はない。待ちたまえ。そんな目をこの私に向けるんじゃない。天から授かった私の才能は君を救い、それから世界を救うに足るものだ。む、なにを言っているかわからないという目に変わったな。さもあらん。今の状況で君に語った所で、すべては理解できまい。状況が突飛であるというか……」
勿体つけるあまり、話がループし始めた。
暗く湿ったカビ臭い地下室に寝かされ、さらに身体が全く動かない状態でひたすら同じ内容を繰り返される。これは一体、何の拷問だろう。
状況的に聞かざるを得ないのだが、このままでは精神が崩壊しそうだ。
防衛本能よ、僕を助けてくれ……。もう頼れるのは自分に備わった本能しかない……。
「あ、こら。寝るんじゃない。目覚めさせるのにどれほどの時間がかかったと思っている。三年、そう、三年だ。この天下の大才の貴重な三年間を費やしたんだ。確実に目が覚めるという保証が出来るまで、絶対に眠らせん」
カトレアは注射器を取り出して無造作に僕へと突き立てた。
何故か痛みは感じなかったし、眼球以外は毛ほども動かす事が出来ないので、何所に突き立てられたのかはわからなかった。
「そうだな、ええと……端的に状況を教えてやる。オマエ、死ンダ。ワタシ、オマエ、生キ返ラセタ」
言い辛いことを言う時、カトレアは片言になる。
昔からの癖だ。
少しばかり、懐かしいきぶ、ん、に……?
「混乱しているな。無理も無い。だが、思い出してみろ。私の天才的な頭脳を。そして、お前の容量の足りない可哀想な頭に眠っている死の際の記憶を」
何か、余計な事まで言われているが、しかし、シーンが、なにか、絵のような、えが、あたまにやきついた、あたまのえが、えが、え、え、え、フラッシュバック、スライドして、かみしばい。にんぎゃうげき。
食事。牢屋に繋がれてから、いちばんおいしかた、ですですす。ろおや、がしゃー。あきます。はいてきたおじさん、なか良くなって、よく話した牢番が「じゃあな。スコット」僕の名前を呼ばんでお別れを言ってくれた。外に出されて、久々に日の光を肌にあびひひるかり。ひといぱいで、つみきがおっきい。たくさん。たくさんのおっきいこえがおじさんだした。ぼく、ぼぼぼ、しょ刑台の階段を、一段一段踏みしめて、跪いた。高い所にある処刑台は見晴らしが良かった。青かった。そらが。
「おい!」
目眩がする。
「戻ってこい!」
いたい。いたくないはずなのに、いたい。
「ああ……失敗か……」
ぼく、スコット。スコット・ラーケン。
「やっぱり、彼の記憶を与えたところで、混ざってしまう……」
すこットです。よろしく。よろしく。スコット。ぼく。
「否否否否……こんなところで諦めてたまるか……私は天才だ……。たかが最初の一体をしくじっただけじゃないか……。次こそは、次こそは彼の記憶に身体を与えてみせる。ああ、そうだとも。よし……そうと決まれば、新しい死体を確保しにいかねば……」
スコットです!よろしく!






夏の原稿があまりにも進まないので気晴らしをば…


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