スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

扶桑の魔女にご用心


 話があるというので呼び出されてみれば、智子は何やら思いつめた表情で立ち尽くしていた。
 何も、格納庫の裏まで呼び出すこともなかろうに。寒さに耐えながら、ビューリングは煙草に火をつける。肺いっぱいに煙を吸い込んだのは、奇しくも智子が口を開いたのと、同時のことだった。
「今日から私と一緒に寝て」
「……ゲホッ!?」
 ビューリングは、勢い良く噎せ返った。
「……なんだって?」
 咳き込むあまり、涙が滲む。潤んだ視界の向こうの人影を、ビューリングは見つめ返した。
「だから、今夜から私と一緒に寝てほしいのよ」
 智子はいたって真面目な顔である。
 聞き間違いであってほしい。しかし、さらにもう一度、
「一緒に寝て」
 智子は繰り返した。
 身を起こし、やっと体裁を繕ったビューリング。
 動揺する内心を、なんとか抑えながら、
「すまんが、私にそういう趣味は」
「私にだってないわよ!」
 智子が叫んだ。
「しかしなぁ、お前……」
「話は最期まで聞いて!」
 最初に突拍子もない結論を言うからだ。そう思いつつ、ビューリングは口を噤んだ。
「私ね、もう限界なの……。あなたしかいないのよ」
 何故か頬を染め、もじもじと身をよじりながら言う智子。
「……すまん。用事を思い出した」
 ビューリングは即座に踵を返した。
「待ってったらー!」
「ええい、離せ、トモコ。お前にはハルカとジュゼッピーナがいるだろう」
「そんなんじゃないわよっ!」
 ビューリングを止めようと腰に抱きついたまま、智子はずるずると引きずられる。
「お願い! 五分、いいえ、三分でいいの! 三分でいいから話を聞いて! じゃなくて、聞いてください!」
「そこまで必死になられると、逆に怖いんだが……」
「どうしろと!?」
 ともあれ、このまま付きまとわれてもかなわない。ビューリングは足を止めた。ただし、微妙に距離はとりながら。
「毎晩毎晩、もう限界なのよ……。安眠できないし、全然疲れは取れないし。私は書類もやらなきゃいけないし、大変なの。なのに、あんなことで睡眠時間減らされて!」
 拒否すればいいのに。しかし、それは言わないでおく。
「だからね、一緒に寝て、あの子たちが私の布団に忍び込んでこないようにしてくれないかなって……」
「……私の安眠は?」
「隣で寝てくれるだけでいいの。一人用のベッドだし、二人寝てれば入る隙間ないわよ。それに、なんかあなたのことは怖がってるみたいだし」
「……嫌だ」
「そんなあ! お願い! あなたしか頼れないの!」
 泣きそうな顔で詰め寄られ、ビューリングは視線を逸らした。
「ただ、なあ……。うん。なんというか、お前と一緒の布団というのは……」
 毎晩毎晩、淫靡な嬌声を聞かさていれば、嫌でも意識してしまう。例えそちらの趣味がないとしてもだ。
 ちらりと視線を戻しすと、智子が目に涙を溜めている。ああ、くそ。ビューリングは内心毒づいた。なんと言おうと、最後には引き受けさせられそうな気がする。
 ビューリングは再び視線を逸らし、鼻先で立ち上る、煙草の煙を目で追った。

「よろしくね」
「……………………」
 ビューリングは目のやり場に困っていた。
 一人用のベッドに二人というのは、想像以上に狭い。枕を並べて横になるとすぐ眼の前に智子の顔があり、静やかな呼吸が聞こえ、智子の体温が肌に触れる。更に、少し視線を落とすだけで、毛布の隙間から智子の白い胸が目に入るのだ。
 部屋が暗いのに、それらはやたらとくっきり目に入り、ビューリングは目を開けていられなかった。日頃お転婆な智子からは感じられなかった色気が、柔和な寝顔になった途端、堰を切って溢れ出したようである。
 何を緊張しているんだ。智子とは女同士じゃないか。いくら自分に言い聞かせても、緊張は解けない。智子がさっさと眠りに落ちてくれて良かった。それだけが救いだ。今の自分の顔は、きっと赤くなっているだろうから。
 鼻をくすぐる智子の甘いにおい。ビューリングは努めて意識しないようにしながら、ベッドの周りをうろつくハルカとジュゼッピーナの気配に集中した。
「う……ん」
 智子が艶のある呻きを漏らし、ビューリングの背に腕を回した。
「お、おい……」
 そのままぐいと引っ張られ、智子の顔が、ビューリングの胸に埋まった。
 智子の頭が、すぐ眼の前にある。呼吸の度に、智子のにおいが鼻孔から侵入してくる。
 これは、まずい。ビューリングは智子の細い肩に手をかけ、引き離そうと試みた。
「んー……」
 智子は抵抗するように力を入れ、ますますビューリングに密着してくる。
 ああ、くそ。くらくらする。そんな趣味、自分にはなかったはずなのに。
 寝心地がいいのか、智子はビューリングの胸から顔をあげようとしない。それどころか、時折すりつけるように顔を動かし、ビューリングの胸を刺激してくる。
「ん……」
 ビューリングの口から呻きが漏れる。
 そうこうしているうちに、智子は両脚をビューリングの脚に絡め、ますます密着した。同時に、柔らかな智子の太股がビューリングの股間に埋まり、もどかしく刺激を与えてくる。
「うっ、あ、く……」
 呻き、いや、喘ぎを必死に噛み殺しながら、ビューリングは後悔した。扶桑の魔女と、床を一緒にしたことを。

スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

萩原間九郎

Author:萩原間九郎
スオムス文庫やってます。

ご意見感想その他何かありましたら、以下のアドレスか、メールフォームをご利用ください。

hanzou.oohara鼎gmail.com
(鼎を@に変えてください)

管理画面

来客数
Twitter
スオムス文庫目次

クリックするとSSのリストが開きます。

※印のついているものはR-18です。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。

リンクに間違っている箇所がありましたら、お手数ですがお知らせお願いします。

【スオムス文庫@501】

【スオムス文庫@502】

【スオムス文庫@504】

【スオムス文庫@いらんこ中隊】

【スオムス文庫@スオムス】

【スオムス文庫@その他】

【スオムスいらん子中隊涙する】

【Strike Witches 1947 - Cold Winter -】

【学パロ】

【各種サンプル(ストライクウィッチーズ)】

【死にたがりの赤ずきんと気の長い狼の迂遠な関係】

【オリジナル】

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
カテゴリ
最新記事
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
月別アーカイブ
最新コメント
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。