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欲しい物が手に入らない二人の話


 その時、困惑したのはバルクホルンの方だった。
「シャーリーが一緒に街に行きたいときかなくてな……」
 だから、行ってきてもいいだろうか。
 たったそれだけのことを、バルクホルンは言いづらそうに、申しわけなさそうに、エーリカに聞いた。
「え、なんで? 行ってくればいいじゃん」
 返事は、そっけなかった。
 エーリカはベッドに寝そべり、本を読んだまま顔すら上げない。
「それは、そうだが」
 バルクホルンは歯切れ悪く言い、目をそらした。
 エーリカとバルクホルン、二人の関係は、今は親しい友人以外の何物でもない。だからエーリカがそう返すのは、本当は、普通のことなのだ。なのにバルクホルンはショックを受け、期待を裏切られたような切なさを感じている。
 本当に行ってもいいのか、という確認こそしなかったけれども、無理に明るく振る舞うでも、拗ねたような態度を取るでもなく、自然に出てきた「行ってくればいい」という言葉に身が竦み、なかなかその場を離れることができなかった。
 一体、何を期待していたというのか。
 バルクホルンは唇を噛んだ。
 止めて欲しかったわけではない、と思う。
 ただ、せめて。少しでいいから、寂しそうな顔をして欲しかった。切なそうに見上げて欲しかった。だが。
(私のために傷つけと、言ってるようなものじゃないか……)
 そんな権利は、ない。
 バルクホルンの顔が、苦しげに歪んだ。
 願いの浅ましさを憎みながら、欲求だけが募る。理屈ではない。何故ということもない。ただ、こういう時。エーリカが自分を引き止めないのは、裏切りに等しい行為だと、感情がそう断じていた。
 なぜそう感じてしまうのか、バルクホルンにはわからない。理解が及ばない。自分のことであるのに……、いや、それだけに?
「? いかないの?」
 エーリカが、ベッドに寝そべったまま、少しだけ、視線を向けてきた。
 どきりとする。
 きっと顔には、鳩が豆鉄砲でも食らったかのような、変な表情を浮かんでいるに違いない。
 慌てて背をむける。すると何故だか、エーリカから逃げてしまったような気がした。
「……行ってくる」
 普通に言ったつもりが、声は呟くような、低いものだった。
「いってらっしゃい」
 背にかけられた声は、いつも通りの、いってらっしゃい。
 人の気も知らないで。
 バルクホルンは憮然として、部屋を出た。

 エーリカは、一人になった部屋で、嫉妬に軋む胸を抑えていた。
 自分が誘えば良かった。口実はいくらでもあったのに。タイミングを見計らっているうちに、シャーリーにさらわれてしまった。
 行ってくればいい。
 それは、今回はシャーリーに負けたことを認める、エーリカの白旗だった。バルクホルンへの強がりも、無かったとは言わないが。
 シャーリーは流石だと、エーリカは思う。
 きっと強引な誘い方だったに違いない。僻みでもなんでもなく、エーリカは冷静に分析していた。シャーリーの強引さは、自信の裏返しなのだ。嫌々でも来させれば、楽しませてやれる自信がある。
 羨ましいと思う。
 エーリカには、無いものだ。誰かを楽しませるようなことは出来ず、あの手この手でちょっかいをかけて気を引くのが関の山。シャーリーよりずっと、子どもじみていた。
 それでも。
 エーリカは負ける気なんてまったく無い。
 勝つのだ。
 どんな手を使うかは後で考えるとしても、絶対に、勝つのだ。
 自分の未来は、バルクホルンの隣になくてはならない。
 勝てば、今日の敗北だって楽しい思い出だ。こんな寂しい気持ちも、ちくちくとする嫉妬も、冗談に交えて笑える日がくる。
 だから勝て。
 勝つんだ。
 自分に言い聞かせながら、エーリカは、毛布にくるまって丸くなる。
「いかないでよぅ」
 強がりは、続いてくれなかった。


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