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スオムス文庫 ともビュー-1-2『ワン・キス・ワン・スマッシュ』 閲覧数: 597  評価回数: 11  総合点: 109

 寒空の下、銜え煙草のビューリングは、深く悩んでいた。
 変われるかもしれない。
 そう期待する一方で、どうせ自分はどこまで言っても変人(スクリューボール)なのだ、
 という諦めに付きまとわれながら、彼女はカウハバへとやってきた。
 そこではまた、自分に負けず劣らずの変人、もとい問題児が集まっていたわけだが、
 このカウハバでの出会いは、間違いなくビューリングを変えた。
 特に、中隊長となった穴拭智子。彼女はかつての自分と同じ危うさを持っていた。
 放っておけなかった。
 それが、自分と同じ経験をさせたくなかったからなのか、それとも見過ごす事で変わる機会を逃すのが嫌だったのか。
 それはわからない。
 だが、結果だけ見ればビューリングは智子を助けたし、
 それがキッカケとなって一つの危機を乗り越え、また、中隊全員が持っていた壁をブチ壊した。
 そこまではいい。喜ぶべきことだ。
 ビューリングも居場所を見つけ、友人を得、そして変わることが出来た。
 問題は、望んでいなかった、というよりも、想像していなかった方向にまで変化してしまったことにある。
「ビューリング、明日の編成だけど」
「ちょっと、ビューリング。ここは禁煙。すぐに消して」
「ビューリング」「ビューリング」「ビューリング」「ビューリング」「ビューリング」
 知らず知らずのうちに智子の声を思い出し、満たされた気になった自分がいる。
 なんとも滑稽な話だ。
 毎晩毎晩、獣のような喘ぎ声を上げるこの上官に影響され、自分まで邪な感情を抱くようになってしまったらしい。
 同僚の、しかも同性相手にだ。
 そんな趣味はなかったし、そういう方向に走る同僚を冷ややかな目で見てきただけに、この事実はビューリングをひどく困惑させた。
 その上、どうやらビューリングは嫉妬深い性質であったらしい。
 ハルカやチュインニだけではなく、智子の補佐に奔走するエルマや他の隊員が側にいるだけで、
 眉間には皺が寄り、煙草を吸ってもイラつきが収まることはなかった。
「はぁ……」
 気が滅入る。
 ビューリングはため息を吐いた。
 初めての経験だし、そもそも自分がこんなことになるなんて、夢にも思わなかった。
 そしてつい先日、どうすればいいのか分からないままに、執務中のトモコの所へ押しかけ、唇を奪った。
 もうこうなってしまえばぐしゃぐしゃだ。
 表向きはいつも通りに接してくる智子だが、意識するところはあるのだろう。時折、こちらを盗み見ることが少なくない。
 嫌われてはいないだろうか。
 そこまで考えて、ビューリングは悪い冗談だと打ち消した。こんな恋にも似た感情をいだいていることが、だ。
 これは気の迷いだ。自分は長く人と距離を取ってきたせいで、接し方がわからなくなっている。それだけだ。そうに違いない。
 ビューリングは煙草を取り出し、口にくわえた。吸殻が5つ、ぐしゃぐしゃに踏み潰されて、地面に張り付いている。
 使い古した鉄製のライターを取り出し、火をつけようとし、
「ビューリング」
 背中から声をかけられ、ビューリングは火をつけないままに振り向いた。
 智子だ。振り向く前にびくり、と肩をはねさせたのに、気付かれていないことを祈った。
「どうした、トモコ」
「どうしたって、ねぇ……。もう30分以上ここにいるわよ」
「そうか」
「そうか、じゃないわ。折角の休日をフルに使って、風邪でも引くつもり?」
 それもいいな。トモコが看病してくれるなら。
 とっさにそう思い、病気だな、とビューリングは自嘲した。
 智子はその表情を見咎め、目を怒らせる。
 本当によく表情が変わるやつだ。
「ちょっと、何笑ってるのよ!」
「いや、すまん」
 笑がこぼれた。嘲笑でも、苦笑でもない。素直な微笑みだ。
「また……!こっちは心配してるのに!」
 よくわかってる。
「もう、それならいいわよ!好きにしてなさい。私はもう知らないから」
「まぁ、待て。そう怒るな」
 ビューリングは、背を向けて立ち去ろうとする智子の腕を捕まえ、引き寄せた。
 智子は怒りで赤くした顔をキッとビューリングへと向け、
「知らないったら」
「いつにもまして怒りっぽいな」
「誰のせいだと……!」
「私のせいか?」
「じゃなきゃ誰なのよ!」
 内心、智子とこうして喋っていられることを喜びつつ、ビューリングは困惑した。
「そんなに心配……、ああ、そうか。この間キスしたことか」
「~~~~~~っ!!!!」
「待て待て、トモコ、待てって」
 答えずに、腕を振りほどこうと暴れる智子。
 ビューリングは離さないよう手に力を入れた。顔がにやけるのを、こらられなかった。
「こっちが恥ずかしいのを我慢して心配してあげてるのに、アンタって……、アンタって……!」
「悪かった。謝るよ」
「謝るんじゃないわよ!」
 無茶苦茶言われているのに、何故か楽しかった。
「じゃあ、どうすればいい?」
「一発」
「ん?」
「一発殴らせなさい」
「え?」
 きょとん、とビューリングの動きが止まるや、智子は返事も待たずにその左頬を張り飛ばした。
 そしてするり、と腕を抜き、基地へと駆け去っていく。
 後には、火の付いていない煙草を、かろうじて唇からぶら下げたビューリングが残された。
「手加減無し、か。百年の恋も醒める、良い一発だ」
 煙草をくわえ直し、火をつけた。
 つぶやきとは裏腹に、このくらいでキスできるならまたやろうなどと、内心企んでいるビューリングであった。
 
 

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