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スオムス文庫 ルッキーニ-1-1『取るから』

 シャーリーは、バルクホルンに呼び止められた。
 昼食で中断した、たストライカーの整備を再開しようと急いでいたのだが。
「シャーリー、話がある」
「何だ?説教なら聞かないぞ」
「そうじゃない。その、なんだ。相談がある」
「相談!お前があたしに!?熱でもあるのか!?」
「ば、馬鹿な事を言うな!私はそんなに貧弱ではない!」
「あ、否定するのはそこなんだ……」
「ええい、とにかく来い!」
「あっ、おい!!」
 腕を掴まれ、半ば引きずられるようにして、ハンガーとは逆方向の宿舎へと連れて行かれる。
 その光景をこっそり覗き見る小さな影がいたことに、二人は気付かなかった。

「相変わらず居心地悪い部屋だなぁ。ハルトマンのスペースの方がよっぽどマシだ」
 生活感のないバルクホルンの居住スペースを見て、シャーリーは呆れたように呟いた。
 自分もあまり整頓をする方ではないし、そういう意味ではハルトマンと通じるところはある。
 まぁ、この場合は挑発であって、シャーリー自身ハルトマンの側で暮らしたいとは、流石に思っていなかったが。
 一方バルクホルンは珍しく乗ってこない。
「とにかくかけろ。今茶を淹れる」
 なんとなく、疲れたような顔でテーブルを指すだけだ。
「あー、お気遣いなく。あと、私はコーヒーの方が良い。覚えといて」
「紅茶しか無い。我慢しろ」
 バルクホルンは口調とは真逆の、丁寧な手つきでお茶の用意整えた。
 温かいお茶で満たされたカップを無造作に掴み、シャーリーはそれを啜る。バルクホルンも同様にしたところで、本題を切り出した。
「あー……。その、な。サトゥルナリアの最中に、ルッキーニの誕生日があるだろう」
「ああ、あるな」
「それで、ついでに……、あくまでサトゥルナリアのついでにだが、ケーキを作ってやろうと思ってな」
「へぇー?ついでに、ねぇ」
「な、なんだその顔は!」
「べっつにー?いいから続けろよ」
「くっ……。と、とにかくだ。どんなケーキを食べたいかくらいは聞いてやろうと思ったんだが……」
「ルッキーニが捕まらない、と」
「そうだ。それに、その……、どうも最近、私はルッキーニに避けられている、らしい」
 バルクホルンは言葉を切り、寂しげに自嘲した。
 自分の役割がうるさ方で、それを煙たがられるのは承知の上だし、必要な事でもある。そうは思っていても、やはり寂しいものは寂しいのだろう。
「ルッキーニが、お前を、ねぇ……。全然気付かなかったな。思い過ごしじゃないのか?」
「だといいが……」
 返答はどうも煮え切らない。口に出さないだけで、結構な心あたりがあるのかもしれない。
「お前、ルッキーニになんかしたのか?」
「するわけないだろう!」
「ふーん……」
 とりあえず、シャーリーはバルクホルンの意図を汲んでやることにする。
「わかった。じゃあ、私がルッキーニから聞いといてやるよ。それでいいんだろ?」
「すまん……。恩に着る」
「恩に着る、とは殊勝じゃないか。てことは返してくれるのか?」
 バルクホルンはすこしばかり考えこんだが、観念した表情で、
「……お手柔らかに頼む」
「りょーかい!」

「さて、ルッキーニは、と……」
 とりあえずハンガーまでやってきたシャーリーは、辺りを見回した。
 シャーリーも常にルッキーニの居場所を把握しているわけではない。
 空いている時間は遊んでいる場合もあるし、こんなところでと思う場所でで寝ている場合もある。
 ただ、傾向らしきものはある。例えば、食後。眠くなるらしく、高い場所で昼寝していることが多いのだ。
 シャーリーは上を見上げた。
 案の定、天井に渡された梁から褐色の脚がぶらぶらと揺れている。
「おーい、ルッキーニー!ちょっと話があるんだ、降りてこいよー!」
「…………」
「ルッキーニー!?」
 ルッキーニは起きているようだが、何故か反応がない。こんなことは初めてだ。
「おーい!?」
「……」
「起きてるのはわかってるんだぞー!降りてこーい!」
「…………」
 ここまで静かだと、流石に心配になってきた。
「おい!ルッキーニ!どうした!?まさか降りれなくなったのか!?」
「そんなわけないじゃん!シャーリーのバカ!!」
「んなっ!?バカとはなんだバカとは!ちょっと降りてこい!」
「やだ!」
「やだってお前な……、どうしたんだよ!」
「……」
 折角反応があったのに、これではいけない。
 ふざけた調子の低い声を作り、
「あ、あー、ルッキーニ君。そのままでいいからちょっと話しあわんかね」
「……シャーリーのバカ」
「なにィー!?」
「シャーリーのバカ!あたしのトコじゃなくてバルクホルンのトコに行けばいいじゃん!!」
 ルッキーニはそう叫び、身軽に梁から飛び降りると、猫のような速さでどこかへ駆け去っていった。
「バ、バルクホルンが何だってー……?」

「おい!ルッキーニ、待て!待てったら!!」
 シャーリーは慌てて追いかけるが、ルッキーニは窓やら木の上やら、信じられない場所をひょいひょいと逃げていくので、中々捕まえられない。
 息を切らしながら必死で追いかけた結果、ようやく一本の大木の上で、ルッキーニは足を止めた。
「あー……、疲れた……」
 幹に背を押し付け、シャーリーはずり落ちるように腰をおろした。
「ほら、ルッキーニ。降りてこいよ」
 ルッキーニは無言で、シャーリーの胸元へ、向かい合うように滑り込んできた。覗き込むと、いじけたような顔をしている。
 苦笑して頭を撫でてやる。ルッキーニは顔を胸に押し付け、しがみついてきた。
「どうしたんだよ」
「……」
「バルクホルンのこと、嫌いか?」
「……きらい」
「なんかされたのか?」
 ルッキーニは答えず、しがみつく腕に力を入れた。
「言ってくれなきゃわかんないぞ。あいつがお前に何かしたなら、私がやっつけてやる」
「とった」
「取った?何を?」
「シャーリー、取った」
「……私?」
 予想外の答えに、つい声を上ずらせてしまう。
 てっきり、こっぴどく説教されたとか、その辺だろうと思っていたのだ。
「最近シャーリー、バルクホルンとばっか一緒にいるもん……」
「いや、そんなことは……」
「そんなことあるよ!」
「こないだだってシャーリーの胸揉むし……」
「アレはあいつ意識失ってたからノーカンだろ……?」
「前よりも一緒にいる時間長いし」
「最近仕事が増えただけだって」
「今日だってバルクホルンの部屋でお茶してた!」
「見てたのか」
「見てたよ!!」
 困ったな。シャーリーは心中呟いた。
 可愛い嫉妬心だが、将来のことを考えると、ちょっと歓迎できない。
「なぁ、ルッキーニ」
「……ん」
「私はお前のこと大事だけど、お前を大事にしてるのは私だけじゃないんだぞ」
「あたしはシャーリーがいい」
「嬉しいけどさ。でも、それじゃあ他にお前を大事にしてるやつはどうなんだ?」
「……」
「可哀想だと思わないか?」
「でも……、シャーリーは特別だもん……」
 しがみつく、ルッキーニの腕から力が抜けていく。
「嬉しいよ。でも、私は私のことばっかり見るのはやめてほしい」
「どうして?シャーリーはあたしのこと、邪魔なの?」
「そんなわけないだろ、怒るぞ?私にだってさ、悪いとこは沢山あるんだよ。それは私だけ見てたらわかんないだろ」
「シャーリーに、悪いとこなんてない」
「あーるーの」
 このあたりで、ようやくルッキーニの機嫌が治ってきた手応えを感じた。
 性格もあるが、甘えたい盛りの年頃なのだ。こうしてゆっくり、二人で話すのが大事だったりする。
 話の内容は、まだ理解するには早いだろう。後々考えてくれれば、それで良い。
「ま、そこはそのうち分かるさ。ところで」
「うん」
「バルクホルンがさ」
 名前を出した途端、ルッキーニは露骨に嫌そうな顔をする。
 まだ根に持っていることに、シャーリーは苦笑しつつ、
「バルクホルンがさ、お前の誕生日にケーキを作ってくれるって。どんなのがいい?」
「ケーキ?」
「そ。聞こうとしてもお前が逃げるから、私にお鉢が回ってきたんだぞ」
「そうなんだ……」
「そうなの。ほら、バルクホルンとこに行ってどんなのがいいか、言ってこい。あと、ごめんなさいもな」

 バルクホルンは自室で、料理本を流し読みしていた。
 シャーリーが聞き出せるかどうかは五分五分。もし聞き出せなかったときに備えて、自分で候補を決めておこうと思っていた。
「果物をたっぷり使ったものにするか……。ロールケーキもいいな。いや、ロマーニャのケーキを作るというのも……。どんなものがあるんだ?」
 独り言をぶつぶつと呟きながら、次の一冊を手に取る。背後には既に、目を通し、メモを取った本が山と積まれていた。
 コンコン。
 遠慮がちに、扉がノックされた。
 シャーリーや、ハルトマンということはないだろう。あの2人は何度言ってもノックしない。
 まだティータイムには早いし……。
「どうぞ」
 扉を開けたのは、ルッキーニだった。
 遠慮がちに、半分開けた扉から、顔を覗かせている。
「どうした?」
 バルクホルンは努めて優しげに、声をかけた。
「チョコレート」
「うん?」
「チョコレートのケーキがいい!」
 そう言って、ルッキーニは勢い良く逃げていった。
 ぽかん、とした表情で、バルクホルンが取り残される。
「……あ、ああ!とびっきりのを作ってやるからな!」
 嬉しげな声が廊下に響いた。
 
 これで一件落着。
 廊下で聞いていたシャーリーは微笑んだ。
「ルッキーニのやつ、ごめんなさいは言わなかったな……。ま、いっか」
 ようやく整備を再開できる。揚々とした調子で、シャーリーも立ち去った。




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