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スオムス文庫 ブレイク三人組-1-1『3人』

 基地の北方十数キロの地点に、小型のネウロイが集結しているという情報が入り、クルピンスキーを先頭に、ブレイク3人組は出撃した。
 相手は小型だけ。10分もあれば片がつくだろう。戦闘が始まる前、管野はそうタカをくくっていた。
「どうなってやがる!」
 だが、いざ戦闘になってみると、落とせど落とせど、敵は減るどころか増え続ける。
 どういうカラクリか、1機落として振り向くと、背後から2機が接近してくるのだ。
 最初は単純に数が多いだけだと思っていたが、戦闘が進むに連れて空はどんどん黒い小さなネウロイに覆われていった。
 こうなると、もう増えているとしか思えないのだった。
「弾がきれた!」
 すぐ近くで戦っていたニパが、悲鳴に近い声をあげた。
「クソッタレ…!おい!ニパ!」
 背に負った扶桑刀を抜き、管野は機銃を投げ渡す。ニパは自分の機銃を背負うと、すぐに構えて撃ち始めた。
「助かる!」
「そいつもタマが少ねぇ!大事に使え!」
 頭に血が上るのが、自分でもわかった。状況が不利になればなるほど、闘志という奴は沸き上がってくる。怒りと一緒にだ。
「駄目だ!撃つな!」
 しかし、インカムからハスキーな声が響き、ニパの射撃を制止した。
 水をさされた管野がイラつきながら振り返ると、これまた腹が立つくらい余裕な表情のクルピンスキーが近付いてくる。
 着いてこいと合図され、管野とニパはその後ろについた。
「撃つなっつったって、よ!」
 管野は毒づきながら、近づいてきたネウロイを一体、扶桑刀の錆にする。
 そいつは砕け散るでも爆発するでもなく、ただ真っ二つになった野菜のように、真っ直ぐ下へと落下していった。
「これは子機だよ。撃っても弾の無駄にしかならない。本体を叩かないと」
 3人は緩やかに上昇しつつ、作戦を話し合う。管野だけは時々近寄ったネウロイを両断し、地面にたたき落としていた。やはり、手応えはない。
「子機って、どこにも本体見えねぇぞ」
「最初の通報でも”集結”というだけで、攻撃の予兆はなかった。囮かも知れない。一度撤退して調べ直すしかないね」
「中尉に賛成。私も弾が無い」
「冗談じゃねぇ!こんだけ振り回されて、大人しく帰れっかよ!」
「帰るんだ。これは命令。既に包囲されてるし、これ以上は不味い」
 管野は辺りを見まわし、舌打ちした。クルピンスキーはいつも浮かべている微笑みのまま、
「まだ弾に余裕があるから、私が殿をやるよ。先頭はナオちゃん。包囲を突き破って。2番目のニパ君は残弾に気をつけながらその援護を」
「了解」
「チッ。了解」
 カンノはその後も二言三言小さい声でボヤいたものの、不利な状況で包囲網を突き破るというシチュエーションは割と好みだったらしく、あまりゴネることなく従った。
 隊列を組み直しつつクルピンスキーはニパを呼び止め、予備のマガジンを手渡した。
「これが最後だ。大事に使うんだよ」
「けど、中尉は……」
「私なら大丈夫。色々とやりようはあるから。君はとにかくナオちゃんの援護に集中して。いいね?」
 ニパは不安を覚えたが、クルピンスキーがいつも通り柔らかく微笑んでいるのを見、緊張に顔を強ばらせつつも頷いた。
 管野も既に、戦闘態勢に入っている。
「いつでも行ける!中尉!どこから行く!」
「あっちだ!真っ直ぐ基地の方向に!突破したらそのまま突っ走れ!」
「了解!二人ともはぐれんなよ!」
「カンノこそ、途中で息切れして追い越されるな!」
「言ってろ!」
「よし、行け!」
 クルピンスキーの合図で、まず管野が下降に移った。
 管野のストライカーは他の二人のものに比べて速度が遅い。その分機動力では遥かに上を行くのだが、今はその利点を生かしようがなかった。
 ややあって、管野の背後につこうとするネウロイに向けて発砲、牽制しつつ、ニパが続いた。撃墜する必要はない。どうせ子機では戦果にはならないのだ。
 ニパは速度の調整に四苦八苦しながら、管野の周囲の空間がすっぽり視界に収まる距離を保った。
「よし」
 その二人の背後を、クルピンスキーはゆったりとした速度で追っていた。
 距離はどんどん離れ、ひとり取り残される形になる。
 ネウロイの子機は単純な思考しか持っていないようだが、群からはぐれた獲物を逃がすほど愚かでもないらしい。
 管野とニパに向けている戦力をクルピンスキーへと、集中させ始めた。
「二人とも、振り向かないでね」
 届かないとは分かっていたが、クルピンスキーは呟かずにはいられなかった。
 やがて二人が見えなくなると、残弾の殆ど無い銃を構え、上昇に移った。

 クルピンスキーがいないことに、最初に気づいたのは管野だった。
 既にネウロイの包囲から脱していた二人には、後ろを振り向く余裕ができていたのだ。
「おい、ニパ!中尉がいねぇ!!」
「なんだって!?」
「クソッ!囮になりやがったんだ!!」
「嘘だろ!?あの蜂の巣の中に残ったっての!?」
「あの中尉さんがやられるはずねぇだろ!自分から残ったに決まってる!」
 先ほど脱してきたネウロイの群は、数百近い子機によって、真っ黒な雲を作り出していた。
 中にいる人間は360度、すべての角度から攻撃を受けるだろう。
 そんな状況にひとり踏みとどまるなんて、とてもじゃないが正気の沙汰とは思えない。
「オレが行く!お前は先に帰ってろ!」
「私だって行くよ!」
「弾切れの奴に付いて来られても迷惑だ!」
「まだ中尉にもらったマガジンが丸々一個、残ってる!」
「……なんだって?」
「中尉がカンノの援護するようにって、最後の一個をくれたんだ!急がないとヤバい!」
「早く言えよ馬鹿野郎!!!」
 カンノは全速で黒い雲塊へ向かった。
「私のほうが早い!先に行く!」
 ニパはそれを追い越し、一足先に突っ込んでいった。

「中尉!どこですか!中尉!?」
 ニパの叫びはネウロイの発する金切り音に掻き消され、クルピンスキーへは届かない。
 それでも叫ぶのはやめず、そこらじゅう真っ黒で自分がどの辺にいるか把握できない中、なんとかクルピンスキーと別れた場所を探そうと遮二無二突き進んだ。
 しかしあちこちから攻撃を受けるせいで徐々に疲れが出始め、いつの間にか後続の管野と合流していた。
「見つかったか!?」
「全然!急がないと……っ!?カンノ、アレ!!!」
 ニパの指さした先では、二人のいる位置よりも遥かに多数のネウロイが密集し、団子を作り出していた。
「あそこか!」
 管野は扶桑刀を構え、上昇した。
「どけェェェェェッ」
 眼下のネウロイを斬りつけ、引き剥がす。
 だが、塊の層は思ったよりも厚く、欠けた部分の修復も早かった。
 管野は扶桑刀では埒があかないと見るや、刀を鞘に収め、シールドを展開した。
 何をしようとしているかを察したニパが管野の前に飛び出、シールドを張る。シールドが破れたら自分の身体を盾にする。表情がそう告げていた。
 管野の前で輝くシールドが、拳を握った右手を包むように固まっていき、それと比例して光は増していった。
 やがてそれは拳大まで収縮し、太陽のごとき強さで輝いた。
「行け!カンノ!!」
「オオオオオオオオオオラァァァァァァァァァァァッッッ!!!!」
 管野は降下しながら輝く拳を、黒い塊へと打ち込んだ。
 光に触れたネウロイはボロボロと消し炭のように崩れて消滅していく。
 管野は止まらず、ストライカーに魔力を送り続け、全力で突き進んだ。
 不意に、黒い塊から伸びる白い手が視界をよぎった。
「しまっっっ!?」
 掴もうとしたが、僅かにとどかない。
 止まれば飲み込まれる。だが、選択肢は一つしかなかった。
「クソッタレ!」
 今はクルピンスキーの手を掴む。そのために自分は来たのだ。
「カンノ!そのままいけ!中尉は私が捕まえた!!」
 出力を絞り、ターンしようとした瞬間、後ろからニパの声が届いた。
 振り向くと、クルピンスキーがニパに抱えられながら、力なく微笑んでいる。
 良かった、生きてる。
 安堵の息はまだ出なかった。
「行け!」
「っしゃァ!!」
 右手の光は徐々に暗くなっていた。魔力が尽きようとしている証拠だ。
 だが、それでも止まらない。腹の底から燃え上がるような熱を感じた。
 右手の光が完全に無くなり血が飛び散っても、熱に突き動かされ、速度は増す一方だった。
 再び扶桑刀を抜き払い、自慢の機動力でネウロイの藪を切りひらいて行く。
 ニパも最後のマガジンを装填した自分の銃で、惜しみなく銃弾をばらまいていた。
 そして3人は白い光に包まれ、
「出た!!」
「やった……!けど……」
「「魔力がー……!」」
 仲良く、白い雪のクッションへと落下していった。

「中尉のバーカ」
「ごめんね」
「どれだけ心配したと思ってるんですか」
「うん、ごめん」
 3人は大の字になって雪に埋もれていた。
 もう、指一本動かす気にならない。
 空にいた大量のネウロイはいつの間にか消え、銀色の粉のような破片をまき散らしている。まるで粉雪だ。
「きれーだなぁ……。あれ、カンノがやったのかな」
「さーなァ……。今はもう考える気にもならねぇ……」
 3人は熱くなった身体を雪で冷やしつつ、白い雲が流れていくのを眺めた。
 遠からず、回収部隊が来てくれる。
 それまで少し休もう。
 この3人で。


 後日、ネウロイの本体を破壊したのはスオムス空軍第24戦闘機隊であったことが分かり、3人組の働きはまったくの無駄だったことが知らされた。
 徒労どころか3人とも軽度の負傷に、ストライカーは半壊。どこで無くしたものか、銃も2挺が失われた。当然お説教である。
 502基地に、破壊音が響いた。



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