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スオムス文庫 芳イラ-10-1『なぐさめ』

 宮藤は沈み込んでいた。
 戦闘で油断し、すこしばかり怖い目にあったのだ。
 エイラが気付いて助けに向かったこと、また、宮藤の強力なシールドのおかげもあって、外傷は一つもない。
 とはいえ、死にかけた経験というのは、大人でも相当なショックを受けるものである。
 若干15歳で、しかも修羅場の経験も浅い宮藤が覚えた恐怖は、どれほどのものだっただろう。
 そんなことは思いもよらず、エイラは後味の悪い思いで落ち込む宮藤を眺めていた。
(私のせいか……?)
 戦闘中の興奮もあり、弾き飛ばされた宮藤を抱きとめたエイラは、つい強い調子で叱り飛ばしてしまった。
 それもひとえに宮藤を心配すればこそだが、もう少し言い方があったのではないかと後悔しているのである。
 無論、的外れだが。
 被弾の経験も無く、歴戦のエースでもあるエイラの常識は、宮藤のものと少しばかりズレていた。
 リーネがいれば、こっそり耳打ちしてフォローさせるところだが、生憎この日は基地を留守にしている。
 あたりを見回しても、みんなハンガーから引き上げてしまっていた。エイラがやるしかないらしい。
「な、なあ宮藤」
 間の悪さを嘆きつつ、恐る恐る肩に手を置いた。
「……っ」
 宮藤は肩を跳ねさせると、弾かれたようにエイラに飛びつき、背に手を回して抱きついた。
「お、おい!?」
 流石に転びはしなかったが、二歩、三歩とよろめく。いきなり何をするんだ、と言いかけて、口をつぐんだ。
 宮藤は震えていた。
 肩に顔を押し付け、カタカタと震える小さな頭を、エイラは優しく撫でた。
 ようやく、宮藤の沈んでいる理由を察した。
「お前の部屋、行くか」
 そっと宮藤を引き離し、優しく声をかけた。

「コーヒーでいいか?」
 ベッドに腰掛けた宮藤は、弱々しく頷いた。
 割と重症らしい。
 以前にも撃墜されかけたり、危ない目には遭っているはずだが、ここまでショックを受けているところは初めて見た。
 それはたしかに、今日のネウロイの攻撃は、宮藤のシールドでなければ、不意を突かれなくても危なかったかも知れないが……。
「ほら、飲め。お前顔真っ青だぞ」
 湯気のたつカップを手渡す。宮藤は包み込むように持っただけで、口は付けなかった。
「なぁ、そんなに怖かったのか?」
 隣に腰をおろし、率直に聞く。
 小さな肩がびくっと反応しただけで、答えはなかった。
(思い出させちゃったか……)
 迂闊さと不器用さを呪った。
 しかし、どうしたものか。
 原隊にいた頃は、こういう状態の戦友を慰めるのは上官たちがやってくれていたし、そもそもエイラは経験がないので気持ちがさっぱりわからない。
 とりあえず温かい飲み物でも飲ませれば少しは落ち着くだろうと思い、部屋まで連れてきたのだが、口をつけてくれないではどうしようもなかった。
 他愛のない話を振るのが精一杯といったところで、宮藤はそのたびに弱々しい反応を見せるだけだった。
「あ、コーヒー冷めてるな……。ちょっと新しいの淹れてくるから、今度はちゃんと飲めよ」
 手詰まりになったエイラは、カップを受け取り、逃げるように立ち上がった。
 コーヒーを淹れる間に戦略を立てなおそう。そう考えてしまうあたり、不器用なヘタレであった。
 宮藤からすれば、コーヒーも会話もいらない。ただ側にいてくれるだけで良かった。
 そそくさと歩み去るエイラの細い背中に、宮藤は抱きついた。
 いい匂いのする髪に顔を埋め、エイラが苦しそうに呻くまで腕に力をいれる。コーヒーよりずっとずっとあったかい。
「お、おい!」
「こ、怖かった……。怖くて、その、私……」
「み、ミヤフジ……?」
 明るく元気でお馬鹿な宮藤にこんな弱々しい声を出されると、なんとも調子が狂ってしまう。
「と、とりあえず一旦離せ。苦しい。な?」
「嫌……。嫌です……」
「どこにもいかないから」
 駄々をこねる宮藤をなんとかなだめすかして引き離し、再びベッドに腰かけさせた。
「そんなに怖かったのか?」
 隣に座ると、宮藤は背中に手を回して抱きついてきた。胸に、小さな頭が埋まる。
 普段なら殴る所だが、今日くらいは見逃してやろうと思った。
「はい……」
「今までもっと危ないことだっただろ?」
「誰かを守らなくっちゃって思うと、怖くないんです。でも、今日は、その……」
(ああ、そういうことか……)
 これまで宮藤だけが危ない状況というのは、たしかになかった。
 誰かしら仲間にも危険が迫っていて、その度に自分を鼓舞して、誰かを守ろうと奮戦してきたのだった。
 そうした状況では恐怖に打ち勝てても、やはり本当の宮藤は、普通の少女にすぎなかった。
 宮藤は嗚咽を噛み殺し、泣いているのを悟られまいとしていたが、それは無駄だった。
 エイラは相変わらずどうしていいかわからなかったが、背中に回された腕に力が入るのを感じ、強く抱き返してやった。
 啜り泣く声はやがて抑えきれなくなり、支離滅裂な言葉と共に、大きな鳴き声が室内に響いた。
 エイラは何も言わず、ただ抱きしめていた。
 泣き疲れた宮藤が眠ってもエイラは離さずに、翌朝目を覚ました宮藤が泣きはらした赤い目をこするところを、優しくなでてやるのだった。



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