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スオムス文庫 サニャイラ-13-1『しじまの散歩』

 サーニャは夜の散歩を楽しんでいた。
 もちろん独りではない。
 少し前をエイラが歩いている。銀色の長髪が月明かりに照らされて、柔らかく輝いていた。
 微かな波の音と、ふたり分の小さな足音。後は時々草むらから発せられる虫の声。音といえばそれだけで、会話はなかった。
 別に喧嘩しているわけではない。会話する必要がないほど心が通っているかといえば、残念ながらそうでもない。
 エイラは話しかけてくれるのだが、サーニャが上手く返せない。短い答えを返すのがやっとで、もっと話をしたいのに、そこで終わってしまう。
 エイラは気を遣ってくれている。ありがたいと思うのと同じだけ、申し訳ないと思った。
「サーニャ、座ろっか」
 ベンチを指差し、エイラが言った。
 サーニャが黙って頷くと、エイラはベンチの前まで駆けていき、
「ちょっと待ってて」
 そう言って、ポケットから取り出したハンカチでベンチを丁寧に拭った。
「いいぞ。暗いから足元気をつけてな」
「うん……」
 サーニャはゆっくりと腰をおろした。
 こういう時、手を取って欲しいと思うのは、流石にわがまま過ぎるだろうか。
 思えば、夜間哨戒のない日でも、サーニャが夜型の生活になってしまうのは仕方のないことだった。
 エイラは昼も働かなければならないのに、こうして自分に付き合って起きていてくれる。
 それだけじゃない。本来サーニャがやらなければならないことのほとんどを肩代わりしてくれている。
 それに対して何一つ、自分がエイラにしてあげられることはないのだ。
 無力感以前に、いつか見放されるのではないかという心配が、胸の奥にわだかまり続けている。
「サーニャ?疲れたのか?部屋に戻るか?」
 自分は狡い。エイラに甘え続けて、どうしたらお返しが出来るか考えるよりも先に、見捨てられたくないと考えている。
 どこまでも勝手な事を考える自分に、嫌気が差してしまう。
「ううん、大丈夫……。ちょっと考え事をしてただけ……」
「そっか……。なんか心配事があるなら相談に乗るぞ?」
 サーニャは黙って首を振った。
 流石にこんなこと、言えるはずがない。
「むー……。そっか。でも、本当に困ったら言うんだぞ」
 本気で心配したエイラの顔に、胸が締め付けられる。自分の情け無さが際立つ思いだ。
 そこからは、また沈黙だった。
 エイラもなんとなく沈み込んだ様子のサーニャに遠慮してか、ちらちらと盗み見るだけで、何も言おうとはしなかった。
 少し、気まずい。
 エイラと二人でいて気まずいと感じたのは、凄く久しぶりな気がする。
 出会って、世話を焼かれるようになって。その最初の1週間くらいは感じていたかも知れない。
 サーニャは空を見上げた。他にすることがない。
 柔らかく光る、月がきれい。
 その白い光は、エイラの肌のよう。
 線を引いて落ちる、流れ星がきれい。
 その颯爽としたラインは、エイラの髪のよう。
 結局、何を見ても思い浮かぶのはエイラのことばかりだ。
 こんなにも依存してしまっていて、迷惑じゃないだろうか。気持ち悪くはないだろうか。
 隣にあるはずの顔を、今は見ることができない。
 首が痛くなっても、顔は上を向いたまま。少し肌寒くなっても、身じろぎは出来なかった。
 そろそろ辛くなってきた、そんな時。
 ぼふっと音を立て、エイラの頭に肩を叩かれた。
 驚いて顔をおろすと、目をつぶったエイラが、静かに寝息を立てていた。
 どきり、と心臓が跳ねた。
「エイ、ラ……?」
 声をかけてみるが、答えはない。
 こうして眠ってしまうほど疲れていたのに、自分に付き合ってくれていたのだ。
 申し訳ない。そう思わなければいけないはずなのに、サーニャの口元は緩んだ。
「よい、しょ……」
 エイラの肩を掴み、一度自分から引き離した。そしてゆっくりと寝かせ、頭を自分の太ももに乗せる。
「ん……」
 エイラは声を漏らしたが、起きる様子はない。
「今日だけ、だかんな……」
 頭をなでながら、小さく小さく、呟いた。
 何故だろう。今までにないくらい、胸の奥が温かい。
 言葉にはならないが、どういうことかはわかる気がする。
 しばらくエイラには起きないで欲しい。
 わがままとは思いつつ、そんなことを考えていた。




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