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スオムス文庫 クルマル-1-8『冷えた手で氷を溶かす』

「うう……、寒い」
 マルセイユは、もこもこと着膨れした身体を抱くように身を震わせた。
 タイツ状のズボンを重ね履きし、セーターの上にコートを羽織り、マフラーをぐるぐるに巻いているが、寒いものは寒いらしい。
 後ろを歩くクルピンスキーはロングコートをスマートに着こなし、並んで歩く姿はまるで大人と子どもだった。
「昔はそんなじゃなかったのに」
 呆れたような呟きに、マルセイユはキッと向き直り、
「うるさい。別にもう気を張る必要はないんだ。別にいいだろ」
「……いいけどね。すっかり鈍っちゃっても」
「な、鈍ってなんかない」
「そうかな。最近お腹とか、二の腕とか、太ももとか結構……」
「お、おい!何でお前がそんなこと知って……!?」
「あ、本当だったんだ」
「……!」
「ウソウソ。毎日のようにスキンシップやってれば気づくよ、それくらい」
 マルセイユはイジケたように顔を前に向け、どしどしと早足で歩いて行く。
 クルピンスキーは苦笑しながら歩調を早め、その後を追った。

 春は眠い、夏は暑い、秋はダルい、そして冬は眠いと春夏秋冬通して家を出たがらないマルセイユを連れ出すため、
 クルピンスキーは涙ぐましい努力に明け暮れていた。
 もっとも、出たら出たで余計なものを買いたがるマルセイユである。
 連れ出す餌としては丁度いいが、それなりの出費を覚悟しなければならない。
 この日はたまたま、雑誌の特集を眺めていたマルセイユがケーキを食べたいと言い出したことによる。
 美味そうだなー、食いたいなーとつぶやくマルセイユから、クルピンスキーは雑誌を受け取り記事を読んた。
 ガリア人が開いた本格的な店らしく、確かに写真のケーキは美味しそうだ。
 コタツから顔だけ出したマルセイユはちろりとクルピンスキーを見やり、
「伯爵、買ってきてくれ」
「えー?一緒に食べに行こうよ」
「嫌だ。寒い」
 じゃあ買ってこない、とは言わないのがクルピンスキーだ。
 言えばマルセイユの性格からして絶対意固地になる。だから、その気にさせるにはこう言えば良い。
「じゃあ、ちょっとクリスちゃん誘って一緒に行ってくるよ」
「……バルクホルンの妹?」
「うん」
「なんでそいつが出てくる。お前一人で行けば良いじゃないか」
「寒い中行くんだし、紅茶くらい飲みたいじゃない。
 でも、一人で飲むのはちょっとね。知らない女の子に絡まれて、中々離してもらえなくなっちゃうから」
「……」
「ティナはどれが食べたい?好きなの選んでいいよ。あ、でもホールは駄目。太るから」
「……っ」
 マルセイユの扱いは、まさにお手の物だった。
 
 ケーキを買った二人は、店内で紅茶を飲むことなくさっさと店を出てしまった。
 マルセイユの素性があっさり割れてしまい、大騒ぎになったのだ。
 帰る、と不機嫌に繰り返すマルセイユをなんとか宥め、ケーキを買うのには苦労した。
「あがってから何年も経ってるのに」
「仕方が無いでしょ。アフリカの星は大スターだからね」
 引退してからのマルセイユは、人の目を集めるのを極端に嫌っていた。
 使命感と熱狂から冷めてしまえば、アフリカの星なんて名声は邪魔なもんだ。
 酔った勢いで、そう呟いたことすらある。
「ちょっとそこの公園で休もうか」
「嫌だ。帰りたい」
「疲れちゃった。いいでしょ?」
「……。5分だけだからな」
 二人は連れ立ってベンチに腰かけた。
「寒いね」
「だったらさっさと帰るべきだ」
 クルピンスキーの左に腰掛けるマルセイユは、まだ眉間に皺を寄せている。
 まだ相当怒っているらしい。冷ややかなオーラを辺りに振りまいていた。
「寒ーい」
「お、おい」
 マルセイユにのしかかるように身体を預け、素早く首に腕を回した。
「やめろ、こんなところで」
「んー……?ふふ」
「ぎゃあっ!!」
 唐突にマルセイユは、色気の欠片もない悲鳴をあげた。
 冷え切ったクルピンスキーの手が、首筋からセーターの中に滑りこんできたのだ。
「色気無いね」
「う、うううううるさい!さ、さっさと抜け!」
「どうしようかな?」
「ひっ!?や、やめろ……っ」
「はー……。あったかーい」
 冷たい手が背中を這い回る。さらに外履きのズボンの中にもう片方の手が滑りこみ、内ももを撫で回す。
「は、離せ!」
 じたばたと暴れるマルセイユだが、ひんやりとした手が背筋を、太ももを撫でる度に身体を跳ねさせては、
「やっやめっ」
 喘ぎにも似た声を上げた。
 クルピンスキーは手が温まってきた頃になって、ようやくイタズラを止めて呟いた。
「なんだか興奮してきちゃったよ」
「……これ以上やったら本気で怒るからな」
 公園に入ってから丁度5分。涙目で睨みつけてくるマルセイユに免じ、クルピンスキーは手を抜いた。

「おお、美味い……!」
 帰宅したマルセイユは、クルピンスキーの淹れた紅茶を片手に早速ケーキを堪能していた。
「今度はお店で一緒に食べようね」
「それは嫌だ」
「……」
 クルピンスキーの苦労は終わらない。



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