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スオムス文庫 姫マリ-1-1『姫様の癇癪』

「な・ん・じゃ・こ・れ・はァァァァァ……!?」
 ヒステリックな叫び声が夕暮れのハンガーを揺らし、続いてガシャン、と陶器の砕ける音が響いた。
 騒ぎの元はハインリーケ・プリンツェシン・ツー・ザイン・ウィトゲンシュタイン。通称姫様。
 象牙細工のような指は、その美しさにそぐわない安っぽい紙片を握り潰し、細い肩はわなわなと震えていた。
「シュナウファーが載るというから態々取り寄せたというに、この記事は一体なんじゃ!!」
 彼女付きの整備兵たちがなんとか宥めようと周りに集まるが、ウィトゲンシュタインの剣幕を見るや皆一様に口をつぐんだ。
 ここまで憤慨した”姫様”は、まず話に耳を貸さない。それどころか火に油を注ぎ、とばっちりを受けることにもなりかねない。
 鞭でシバかれるのは望むところだが、クビを宣告されるのは困るのだ。
 ウィトゲンシュタインは心配そうに見守られる中、手に持った紙屑を床に叩きつけ、げしげしと踏みつけている。
 やがて少しは溜飲が下がったのか、肩で息をしつつ、
「……出かける。操縦士を呼べ」
 呟くように下命し、返事も待たずにハンガーを出ていってしまった。
 残された整備兵たちは慌てて操縦士に連絡をいれたり、後片付けに奔走している。
 そのうちの一人はぐしゃぐしゃになった紙屑を広げ、
「『シュナウファー大尉、サン・トロン上空で大型ネウロイ撃墜の大戦果。カールスラントが誇る、トップエースたちと共に』。……ああ、なるほど」

 ウィトゲンシュタインの向かうサン・トロンには、件のハイデマリー・シュナウファー大尉がいた。
 二人ともナイトウィッチであり、年齢から階級、戦果にいたるまで似通っている。性格は真逆だが。
 以前は何かとシュナウファーをライバル視していたウィトゲンシュタインだが、今は影に日向に助力を惜しまない。
 輸送機から降り立ったウィトゲンシュタインは、勝手知ったるなんとやら、つかつかと勝手に基地の中へ入っていってしまった。
 サン・トロン基地の歩哨たちも、この時折来駕される姫様には最早慣れている。
 叱責されないうちに黙って門を開けた。
「シュナウファー!」
 バンッと音を立て、乱暴に扉を開けた。
 着替え中だったシュナウファーは声が出ないくらいに驚き、手に持ったシャツで身体を隠すのがやっとであった。
 頭に血を登らせているウィトゲンシュタインは全く構わず、つかつかと歩を進め、人差し指を立てて詰め寄った。
「何故わらわを呼ばぬ!!」
「へ……?」
「一言無線でわらわに来いと言えばそれで済む話であったろう!だのに、なにゆえ日の光無くては戦えぬ連中なんぞと!!」
「す、すみません……」
 シュナウファーは自分が一体このお姫様に何をしたのか、まったくわからないままに謝罪の言葉を繰り返した。
「それほどわらわは頼りないか!」
「い、いえ、そんなことは……」
「ならばわらわを頼りたくない理由でもあるのか!?」
「そ、そんなまさか……。ウィトゲンシュタイン大尉には感謝して……」
「ふんっ。どうだかな。本当はわらわの手助けを迷惑に思っているのではないか?」
「そんなことはありません!!」
 シュナウファーの口から、思わず大きな声が出てしまった。
 彼女自身もびっくりしていたが、それ以上にウィトゲンシュタインの方が驚いている。
「す、すみません……」
「い、いや……、わらわも頭に血を上らせてすまぬことした……」
 二人は気まずげに顔をそらした。
「その、大尉にはとても感謝しています……。本当です。これだけは信じてください……」
「う、うむ。だ、だがな……、その、本当にどうして相談してくれなかったのだ?」
「あの、すみません、何のことでしょう……」
 シュナウファーが覗きみると、ウィトゲンシュタインはポカン、と口を開けていた。
 すっかり毒気を抜かれてしまったらしく、肩を落として、
「先日、ヴィルケ中佐らとネウロイを撃破したろう」
「え……、その、はい……」
「苦戦しておったのだな。一度逃し、二度目に雪辱を果たしたと新聞にはあった」
「面目有りません……」
「逃がしたことをどうこう、というのではない。だが、どうして逃がしたとき、わらわに相談しなかった」
 今度はシュナウファーが口を開ける番だった。
 全く思いも寄らないことだ。
 そもそも管轄が違うし、ヴィルケ中佐達と共闘したのも偶然だった。
 第一、日頃何かと便宜を計ってくれるウィトゲンシュタインに、余計な事を言って迷惑をかけるなど、とんでもないことである。
 少なくとも、シュナウファーはそう思っている。
「大方、一人で背負い込もうとしたのであろう」
「は、はい……」
「押し付けがましくなるから言いたくはないが、もうやめてくれ。次からそういう事があれば、すぐにわらわに知らせよ」
「ですが……」
「良いな、シュナウファー」
「……はい」
「よろしい。では、わらわは帰る。出撃を控えているのでな。邪魔をした」
「い、いえ……。その、ありがとうございました」
 ウィトゲンシュタインは手を振って部屋を出て行った。
 去り際、
「っと、失念していた。撃墜おめでとう」
 微笑みと共に一言を残して。



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