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スオムス文庫 芳イラ-11-1『たまには褒められたくて』

 朝食を食べ終え、テーブルで寛ぐエイラの横に宮藤が腰かけた。
 宮藤は背を丸めていて、ただでさえ小さい身体が、もう一回りは小さくなったように見える。
 そしてしょんぼりと、エイラに話しかけた。
「はぁ……。エイラさん、私やっぱり駄目なんでしょうか」
「んー?」
 エイラは宮藤の落ち込んだ姿など気にもとめず、テーブルに並べたカードをめくっていた。
「昨日の訓練ぼろぼろで……。また坂本さんに怒られちゃいました」
「ふーん」
「ふーんって……。ちょっとは真面目に話聞いてくれてもいいじゃないですか」
「んー……、ミヤフジがへっぽこなのはその通りだしなぁ」
「へ、へっぽこ……!」
「へっぽこでひょろひょろでぺったんこだな」
 カードから顔を上げ、にやりと笑いながらからかうエイラ。
 しかし今回ばかりはタイミングが悪かった。
「……もういいです。エイラさんに相談しようと思った私が馬鹿でした」
「え?あ、おい……ミヤフジ!?」
 臍を曲げた宮藤は勢い良く立ち上がると、ぷんすか肩を怒らせて、食堂を出ていってしまった。
 後に残ったエイラは呆然としつつ、
「うーん……、何で怒ってるんだあいつ……?」
「……本当にわからないんですの?」
 紅茶を飲みつつ黙って聞いていたペリーヌが、呆れたように呟いた。
「なんだよツンツンメガネ」
「その呼び方は……!はぁ、いいですわ。とにかく、宮藤さんを追いかけあそばせ」
「えー……」
「な、何ですのその嫌そうな顔……!?」
 ツンツンメガネの言うことだしなぁ……。
 エイラがそう言い出すより早く、リーネが割って入り会話を繋いだ。
「その、エイラさん……。芳佳ちゃん、エイラさんとお話ししたかったんだと思います……」
「話してたじゃないか」
 何故か怒りだしたが。
「そういう事じゃなく……。とにかく、早く芳佳ちゃんを追いかけて、話をちゃんと聞いてあげてください」
「うーん……。リーネがそういうんなら、仕方がないな。ちょっと行ってくるかー……」
「わたくしは無視ですの!?」
「ペ、ペリーヌさん落ち着いてー!」
 ペリーヌの叫びを華麗にかわし、エイラは食堂を出た。
 さて、宮藤はどこだろう?

 宮藤は滑走路の端に、うずくまるようにして座っていた。
 ここはアドリア海がよく見える。潮風は気持ちいいし、潮騒のBGMは心を落ち着かせてくれる。
 なるほど、いじけるにはいい場所だ。
「ミヤフジ……?」
 返事ない。聞こえなかったのだろうか。
 何度か繰り返してみたが、その小さな背中はぴくりとも反応しなかった。
 近寄ってみると、顔を伏せたまま寝息を立てていた。
 無視されていたのかと思っていたので、少し安心した。
「寝てたのか……。風邪ひくぞー」
「……」
「しょうがねーなーもー……。今日だけだからな」
 よい、しょ。
 エイラは掛け声とともに、宮藤を背負った。
 サーニャだったら抱き上げてただろうが、宮藤ではそんな気にならない。まぁ、こうしておんぶするだけでも十分なサービスだろう。
 背に負った宮藤は、少しびっくりするくらいに軽い。身体は小さいし、細っこいしで仕方が無いのかもしれないが、あの食べる量でこの軽さというのは、ちょっと不安になる。
 後で何か、お菓子でも買ってやろう。
 そんなことを考えていると、首に回った腕と、挟みこむように抱えた太ももに力が入った。
 そして首筋には顔が押し付けられ、すりすりと、猫が擦り寄るような動作をしている。
「……おい、ミヤフジ。起きてんだろ」
「ばれちゃいました?」
 ひょっこり、肩の上に宮藤の顔が乗った。
 横目でちろっと盗み見ると、悪戯っぽい笑を浮かべていたが、すぐにふくれっ面になってしまった。
「ったく……。なんなんだよお前は」
「今日はエイラさんが悪いです」
「いや、あれは別に……」
「エイラさんが悪いです」
「……わかったわかった。このまま連れてってやるから、そう怒んなって」
「許しません」
「お前なー……」
「エイラさんの洗濯物とか放ったらかしにします。それから、ご飯だって好きなもの作ってあげません」
「あーもー……。どうすればいいんだ」
「私のこと、ちゃんと褒めてくれたら許してあげます」
「ちゃんと褒めるぅ……?」
 エイラは顔を嫌そうにしかめた。
「嫌なら別にいいんですよ。このまま離してあげませんから」
「嫌なんて言ってないだろ!えーと、えーとー……」
 宮藤の良いところなんて、考えてみたこともなかった。サーニャのならいくらでも言えるのだが。
 とりあえず、思った端から上げていくことにしよう。そうすれば、そのうち当たりに辿りつくに違いない。
「料理が美味い?」
「まだまだ」
「あとは、洗濯とかしっかりやってくれるよな」
「家事しかないんですか?」
 宮藤も中々手厳しい。本気で怒っているからなのか。
「ぐっ。えーと、色々頑張ってる、と思う」
「もっと具体的にいってください」
 首に回された宮藤の腕にさらに力が入り、続きを催促してくる。
 こんなんで考えがまとまるか!
 そう言いかけて、言葉を飲み込んだ。状況が悪化するだけなのは、占わなくても明らかだ。
「く、苦しい……!少し手を緩めろって……」
「続き、言ってください」
「く、訓練とか、家事とか……、基地のみんなのために頑張ってる……!」
「それだけですか?」
 早くもネタ切れである。もうどうにでもなれ。エイラは半ば投げやりに、
「か、可愛い……?」
「なんで疑問形なんですか。ちゃんと言ってください」
「可愛い……」
「もっと大きな声で」
「宮藤は可愛い!これでいいんだろ!」
 ヤケクソだったが、宮藤はお気に召したみたいだ。
 腕がゆるみ、気管が解放され、涼しげな空気を肺いっぱいに吸い込むことが出来るようになった。
「……はぁ。そうですね、今日はこれくらいで許してあげます」
「へ?」
 宮藤はスタッと降り立ち、
「次は、ちゃんとお話聞いてくださいね。また同じようなことしたら、このくらいじゃ許してあげないんですから」
「わ、わかった」
「じゃあ、私はお昼の準備するので戻りますね」
 そう言い残して駆け去った。
 顔はまるで、悪戯が成功した子どものように笑っていた。
「……なんだったんだ一体」
 釈然としないまま、エイラもとぼとぼと、基地に向かって歩き出した。



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