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スオムス文庫 西沢-1-1『魔王襲来』

 1月26日夜8時。
 管野はベッドに寝そべり、扶桑から持ち込んだ小説を読んでいた。
「来たぞ管野!」
 突如轟音とともに扉が開け放たれ、小柄な少女が豪快に飛び込んできた。
「あ、姉御!?」
 元気の二文字を体現したような彼女の名は西沢義子。年齢は19だが、どうみても3歳は若い。
 ちんちくりんだが、空に上がっては扶桑最強と言われ、一度立ち会って軽くあしらわれた管野は、彼女を姉御と呼んで慕っていた。
「その、何故ここに……?」
「あたしの誕生日だ!」
「え!?姉御、今日が誕生日だったんですか!?」
「違うぞ!明日だ!」
 沈黙。
「……姉御、とりあえず部屋ン中入ってください……。寒いんで……」
「そうだな!邪魔するぞ!」
 開け放った扉の前で仁王立ちしていた西沢は、勢い良く扉を閉めると部屋の中へ入ってきた。
 何が珍しいのか、部屋の中をへー、とか、ほー、とか声をあげつつうろうろしている。
 いくら待っても続きを言わないので、管野はおずおずと話を切り出した。
「えっと……、それで、今日はどうしてここに?」
「ん?うまいもんが食いたくなった。ここに料理上手いやついただろ!」
「あ、ああ……。定子ッスか」
「?定子?誰だ?」
 複雑そうな定子の顔が、管野の脳裏をかすめた。なんというか、哀れだ。
「その、誕生日が明日なら、明日来ればよかったんじゃ……?」
 西沢はおお、と顔を驚かせ、
「たしかにそうだ!管野は頭がいいな!」
「はぁ……、ありがとうございます」
 管野は段々、この姉貴分の将来が心配になってきた。
 悪い男に騙されたりしないだろうか……。
「と、いうわけでだ、管野」
「はい」
「泊めてくれ」
「はい……、って、ええ!?」
「この辺は野宿きついからなー」
「そりゃそうでしょうけど……。空き部屋とか……」
「無いって言われた!」
 管野はがっくし肩を落とし、
「そ、そうですか……。でも、オレの部屋、布団一組しかないッスよ?」
「お前と一緒に寝るから大丈夫だ!」
「えー!?」
 全然大丈夫じゃなかった。
「女同士だ、別に全然変じゃないぞ!醇子もそう言ってた!」
「じゅんこ……?」
「醇子はいいやつだぞ。坂本もな!」
「はぁ……、そうですか……」
 登場から喋る内容まで、何もかにもが唐突で、話についていくのも一苦労だ。
 そして唐突ついでに西沢は、いきなり服を脱ぎだした。
「ちょ、ちょ、ちょっと姉御!?何で服を脱ぐんですか!!」
「?何を言ってるんだ?脱がなきゃしわになるんだぞ?」
「き、着替えはあるんですよね!?」
「ない!余計な物は邪魔だからな!」
 西沢はわははははは!と豪快に笑い出し、管野は段々、こめかみのあたりに鈍い痛みが走りだすのを感じた。
「せめて、オレの服を……」
「気にするな!女同士なら裸で一緒の布団に寝るのも普通だぞ!それにお前の服は小さくて着れん!」
「それも、そのじゅんこさんが……?」
「おう!よくわかったな!流石は管野だ!」
 全然普通じゃないと思う。
 しかし、この人に妙な知識を吹き込んだじゅんこというのは一体誰なんだろうか。
 西沢自身は凄く信用しているようだし、名前を覚えられているくらいだからそうとう近しい人なのだろうが……。
 しかし、ろくな人間とも思えない。
 段々顔がげっそりしてきた管野の脇で、ズボン一丁になった西沢はもそもそと布団に潜り込み、
「よし、寝るぞー」
「えっ。もうですか!?」
 まだ本が読みかけなのに。
「だって、眠くなってき……ぐぅ」
 寝た。
「姉御……、なんか動物か子どもみたいッス……」
 どうせ、この人が来た時点で本の続きを読めるはずもないか。
 管野はなんとかそうやって自分を納得させ、眠りこける西沢にちゃんと布団をかけてやり、部屋の電気を消した。

「うぅ……」
 まどろんでいた管野は、隣から聞こえてくる苦しげな呻き声で目を覚まされた。
「……姉御?」
 声の主は隣で寝ていた西沢らしい。
 心配になった管野は身を起こし、枕元のスタンドに灯りをいれた。
「姉御、どうしたんですか?」
 西沢は青ざめた顔で、腹を抱えるように丸まっていた。
「お、おなかいたい……」
「なんか悪いもんでも食ったんですか?」
「おなか、ひやした……」
 言わんこっちゃない。こんな寒い日に裸で寝るからだ。そうは思ったが、流石に口には出さなかった。
「ちょっとまっててください。今、タオルかなんか、腹に巻く物持ってきます」
「ま、まって……」
 ベッドから出ようとする管野の腕を、西沢が捕まえた。
「でも、姉御……」
「だっこ」
「はい?」
「おなかのとこ、だっこしてくれ……」
 西沢は管野に背を向ける。
「え?え?」
 管野は困惑しているが、
「はやく……」
 西沢の声はとても苦しげだ。
 仕方がない……。
 管野は腹をくくり、細い脇腹に腕を通して抱きしめた。
「こうですか?」
「うん……」
 時折手のひらで腹をさすってやる。
 段々楽になってきたのか、西沢の体から力が抜けていった。
「姉御、大丈夫ですか?」
「…………」
「……姉御?」
「ぐー……」
「寝てるし……」

 翌日、元気を取り戻した西沢は、定子の料理を食べずに高笑いを残してどこかへ去っていった。
 料理は?と聞いたら、なんだそれ?という答えが返ってきたので、完全に忘れていたらしい。
 結局502の面々は、何しに来たんだろうと囁き合いながら、豪華な夕食に志た鼓を打つこととなった。



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