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スオムス文庫 サニャイラ-14-1『Night/Knight』

 昔、大好きだった絵本がある。
 ひとりぼっちの、お姫様のお話。

 ある日突然、お姫様の目の前から、すべてが消えました。
 お父さんも、お母さんも、召使も、飼っていた犬さえも、みんなみんないなくなってしまいました。
 住んでいたお城も、たくさんあった夜会用のドレスも、毎日のように弾いていたピアノも、ぜんぶぜんぶなくなってしまいました。
 どうして?どうしてひとりにするの?
 お姫様は泣きながら歩きます。
 かえして。わたしのみんなをかえして。
 歩くのは、暗い暗い夜の道。
 手を引いてくれる人も、地図も、みちしるべも、あかりもありません。

「サーニャは、一人で怖くないのか?」

 こわいよう、いたいよう。
 誰一人、何一つ、お姫様を守ってくれるものはありませんでした。
 それでも歩き続けなくてはいけません。探し続けてなくてはいけません。
 おとうさまはどこ?おかあさまはどこ?
 喉が枯れるまで呼んでみても、靴がぼろぼろになるまで探してみても、やっぱり何も無ありません。
 一人で探すには、世界は広すぎました。

「サーニャのお父さん、私が一緒に探してやるよ」

 お姫様が出会ったのは、騎士見習いの少年。
 どうして泣いているの?少年は聞きます。
 なにもないの。さがしても、さがしても、なにもないの。お姫様は答えました。
 一緒に探してあげるよ。
 少年はその夜、剣を捨てました。騎士になる夢を、放り出してしまいました。

「私もナイトウィッチになる。サーニャを守るんだ」

 少年は、絶対に守るから泣かないで、と言います。
 お姫様の目から溢れる雫は、止まりませんでした。
 だって、少年は細くて、きれいでとても強そうじゃないのです。
 大人と戦ったら、すぐに殴り飛ばされてしまうに違いありません。

「ダメって……、どうしてだよ?」

 お姫様は、何度も何度も、少年に元いた場所に戻るように言いました。
 自分のせいで傷ついてほしくなかったのです。
 少年から夢を奪ってしまったことに、気付いてしまったのです。

「馬鹿だなぁ、サーニャは」

 泣きながら、お姫様が理由を話すと、少年はばかだなぁ、と言いながら大笑い。
 お姫様は少し拗ねながら、そんなことはないと言いますが、少年は馬鹿だなぁ、馬鹿だなぁと笑い続けます。

「私の夢は、サーニャの夢だよ。それに私は強いんだ!」

 一緒にいるうちに、少年が強いことをお姫様は知りました。
 どんな相手でも、一歩も引かないのです。
 そしてどんな時でも、お姫様の側で笑っていました。
 彼の強さは心の強さ。
 少年はいつしか、お姫様にとってどんなお城よりも頼もしい存在になっていました。

「サーニャは私に頼っていいんだ。だからダメなんて言わないでくれ」

 少年は澄んだ瞳で、一緒に行かせてくれと言いました。
 お姫様は微笑みます。
 じゃあ、あなたをわたしのきしにしてあげる。

「サ、サーニャ……!?なっ、なななな何を!!?」

 お姫様も少年も、剣を持っていませんでした。
 これでは叙任の儀式を行うことができません。
 剣で両肩を叩く代わりにお、姫様は少年の肩を掴み、両頬にキスをしました。
 その感触はいつまでも少年の頬に残るでしょう。
 挫けそうになっても、頬の熱さが少年を立ち上がらせるでしょう。
 その晩、騎士の誓を立てた少年は、一生、お姫様を守り続けたそうです。



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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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