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スオムス文庫 ニパッセ-1-1『雪の空。君は眩しく』

 例えばの話。
 自分と血が繋がっているんじゃないかってくらいそっくりな人間が近くにいるとして、君はどう感じるだろうか。
 気持ち悪いかな?
 それとも、他人とは思えなくなる?
 私は……、そうだね。後者かな。

 1939年のスオムス。
 カウハバの義勇独立飛行中隊が色んな意味で派手な活躍を繰り広げる裏で、私たち飛行第24戦隊も戦闘に明け暮れていた。
 当時の私たちの機材と言ったら、武器も飛行脚も二線級。メルスなんて履かせてもらえるわけもない。
 配備された数も少なくて、スクランブルがかかるたびに先を争ってG50フレッチアやブルーステルへ駆けていったものだった。
 スオミの私が言うのも何だが、この国のウィッチは優秀だ。
 十分な質と量の機材さえ与えられれば、決してカールスラントのエース達にも劣らないだろう。
 彼女、『ニパ』・カタヤイネンだってそうだ。
 私がニパと初めて会ったとき、彼女は鉄くずで一杯の箱をよたよたと運んでいた。
 カタヤイネン軍曹が私と顔が似ている、という話はよくされたんだけど、生憎顔を合わせたことはなくて、この時もロッタと勘違いして話しかけたんだ。
「手伝おうか?」
 ロッタはスオムスの女性たちで結成された互助組織。彼女たちの助けで、私たちは後顧の憂いなく戦えている。
「あ、はい、すみませ……」
 ショートカットの少女は嬉しそうな顔でこちらを振り向いたんだけど、私の顔を見るや笑顔を曇らせてしまった。
「君は、えっと……、カタヤイネン軍曹?」
 私と瓜二つな少女は、むすっとした顔で頷いた。
 どうやら、私の印象はあまり良くないらしい。
「手伝うよ」
「……結構です」
 ぷい、と踵を返し、再びよろめきながらどこかへ行こうとするニパ。
 細い背中が危なっかしかった。
「ああ、もう。ほら貸して」
「あっ」
 私はニパの手から箱を奪い取った。
「重い……」
 魔力があるとは言え、鉄くずのぎっしり詰まった木箱は、相当な重量だ。
 初対面ながらも他人という気がしない私は、ニパ一人にこんな箱を持たせようとした人間に対して、少しばかり、怒りを覚えた。
「何処に持っていくの?」
「……人気の無いところ。あと、火器も」
 この鉄くずはおそらく、手榴弾に詰めるものだろう。
 スオムスの陸戦ウィッチは、航空ウィッチよりさらに少ない。男性兵士が効果的に戦闘を行うため、彼らの弾薬には魔力が込められている。
 込めるのはロッタとして従軍する魔女の素養を持つ者たちで、そのほとんどは負傷したウィッチと、20歳を超えた者たちだ。
 ウィッチ隊の定員に漏れてロッタに配属される、運の悪い者もいるが。
「この鉄くず、カサパノスに詰めるの?」
「……はい」
 弁当箱を棒切れに結びつけたようなカサパノスは、中型のネウロイだって破壊できる頼もしい兵器だ。……スオムスの乏しい武器事情では、だが。
「私は……、運が悪いので。火薬の側で作業するなって、言われました」
「酷いな」
「別に。慣れました。ロッタに配属されたのだって、訓練でストライカーを壊してしまったせいですし」
 何故かこの一言は私の胸を深く抉った。
 その横顔は諦めが滲んでいるのに、どこか翳っていて、悲しげだ。
 私はますます放っておけなくなってきてしまった。
「飛びたくない?」
 私は期待を込めながら聞いた。
「……飛びたいっ」
 ニパは、腹の底から搾り出すように応えた。
 十分!
 私は鉄くずの箱を床に置き、代わりにニパの手を掴んで走りだした。
「ち、中尉!?」
「行こう、ニパ。飛ばせてあげる!」
 ハンガーの入り口で戸惑うニパの背を、私はそっと押した。
 ニパは私のストライカーを履き、一気に飛び上がる。
 そしてどんよりとした雲の下で、まるで太陽のように眩しい笑顔を浮かべながら、華麗に飛び回った。
 その技量にも私は驚いたが、なによりこんな顔を見せてくれるとは思ってもみなかった。
 ニパはやがて滑るように滑走路へ降り立ち、事故を起こす事無く着陸した。
「楽しかった?」
「……。ありがとう、ハッセ中尉」
 私は黙って笑みで応えた。

 その後、中隊長の『エイッカ』・ルーッカネンに見つかり、私たちは大目玉を食らってしまった。が、驚いたことに、この時はお咎めなしだった。
 訓練を受けているとは言え、航空ウィッチでないニパにストライカーを履かせ、空を飛ばせたのだ。本当ならもっと重い罰を受けている。
 今回はエイッカが融通を利かせてくれたのだ。
 曰く、
「ウィンド中尉は予備操縦者候補のカタヤイネン軍曹の技量を試験し、軍曹が航空ウィッチとして従事するに値するとの結論を下した」
 全く強引な言い草だが、エイッカはどう話をつけたものか、これをすっかりそのまま押し通してしまった。
 戦隊長のマグヌッソン少佐や、彼女の副官フハナンチ中尉はさぞ頭を抱えただろう。
 エイッカはこれと決めたら絶対に曲げたりしないんだから。
 こうしてエイッカは部下の私に大きな貸しを作った挙句、ニパという技量優秀なウィッチを自分の部下に加えたというわけだ。
 私にとってもありがたい話なのだが、今思うとちょっと納得のいかない。ハメられた気分だ。
 まぁ、このときはニパの嬉しそうな顔に騙されて、そんなこと思いもしなかったのだけど……。



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