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スオムス文庫 ドミジェン-3-1『犬将』

 ある日の昼下がり。
 ふたり分の洗濯物をたたむジェーンの横で、ジェンタイルはジェーンのシャツに顔を埋め、心地良さそうに眼を閉じていた。
「もう、大将やめてください。さっきから私の服のにおいばっかり嗅いで……」
「いい匂いがする」
「犬じゃないんですから。ほら、それも畳んじゃいますよ。貸してください」
「犬……。犬ならそういう事をしてもいいのか?」
「へ?あー……、まぁ、習性ならしょうがないんじゃないでしょうか。飼いたいとは思いませんけど」
 既に一匹、大型犬のようなジェンタイルがいるわけだし。
「ほら、もういいでしょう」
 ジェーンはあきれ顔で、ジェンタイルの手からシャツをもぎ取った。もう慣れたものだ。
「ジェーンは犬は嫌いか?」
「そういう問題じゃないです」
「嫌い、なのか?」
「ああ、もう。そういう話をしてるんじゃないのに……。好きです、犬は好きですよ。ほら、これでいいでしょう?」
「そうか、ジェーンは犬好きか……。そうだな、使い魔も犬だしな……」
「あの、大将……?」
 ジェンタイルは何故か楽しそうに、何度も頷き、
「ちょっと出かけてくる」
 唐突にそう言って、部屋を出て行った。
 ジェーンはうきうきした調子のジェンタイルの背中を見送りつつ、
「また変なこと考えたのでなければいいんですけど……」
 不安気な呟きを漏らした。

「今帰ったぞ、ジェーン」
 ジェンタイルが揚々と帰ってきたのは、門限ぎりぎりだった。
「遅いですよ、大将。皆さんご飯食べ終わっちゃいました」
「ジェーンは待っててくれたんだろう」
「お腹減っちゃいましたよ、もう。どこに行ってたんですか」
 拗ねたように抗議するジェーンに、ジェンタイルは黙って紙袋を差し出した。
「なんですか、これ」
「開けてくれ」
 まさかプレゼント?でも、今日は誕生日でもなんでもないし、おみやげかしら?
 ときめく胸を抑えつつ、ジェーンは袋を開け、中に手を突っ込んだ。
 最初に固い、革のような感触が手に触れ、ひんやりとした鉄の感触が後に続く。
「なんだ、ろ、う……?」
 取り出したものを見て、ジェーンは絶句した。
 真っ赤な首輪と、鎖。
 思い浮かぶのはこれを情事に用いる自分とジェンタイルの姿。
(大将は私にどんなプレイを求めて……、いやいやいやいや!ちょっと待って!
もしかしたら他に動物も連れているのかもしれないし!そうだ、何でもかんでもそういうことに結びつける卑猥な発想は慎まないと!)
 前向きな結論に達するまでの1秒間、ジェーンは固まっていた。
「どうだ、ジェーン」
 ジェンタイルは何かを期待するようにジェーンを見つめている。
(どうだって、何が!?)
「え、ああ、す、素敵な首輪、ですね……?」
 それ以上答えようがない。
「そうだろう。これを選ぶのに苦労したんだ。夕方いっぱいまでかかってしまった」
 ジェンタイルは誇らしげだが、続けて動物を差し出すようなサプライズをする様子は全くない。
(ど、どうしよう……。これは、確実に、その、アレ用だ……。どうするのジェーン!?あなたは大将に求められたら断れるの……!?)
「なあ、ジェーン」
 ジェンタイルがずいっと大きく一歩、前に出る。
「は、はひっ!?」
 ジェーンがずりっと小さく一歩、後ろに下がる。
 ずいっ。ずりっ。ずいっ。ずりっ。ずいっ。ずりっ。どすん。
 壁に背をつけたジェーンに、ジェンタイルがキスをねだるように顔を近づけた。
(だ、ダメです大将、こんなところで……!)
 ジェーンはきつく目をつぶり、羞恥に耐えた。
(ああ、こんなところで……。こんなとこ……、こんな……?)
 だがいつまで待っても、いや、経っても柔らかい感触が唇に触れることはなかった。
「つけてくれ」
「へっ?」
 顔を近づけたまま、ジェンタイルが謎の言葉を発する。
「首輪、つけてくれ」
「は、はい……?」
 わけもわからぬまま、ジェーンは言われたとおり、ジェンタイルの細い首に真っ赤な革のベルトを巻きつける。
「苦しくないですか?」
「……ん。大丈夫だ」
 ジェンタイルの顔が離れていく。唇が少し、すーすーした。
 首輪を巻いたジェンタイルを見ると、いけない遊びをしているというか、なんだか変な気分にさせられる。
「あの、大将……」
「これで私はジェーンの犬だな」
「えぇっ!?」
「犬ならいいんだろう」
「な、何がですか!?」
(私そんなプレイしたいなんて言った記憶は……!)
「部屋に戻ったらジェーンのシャツを一枚もらうぞ」
「なぜ!?」
「犬ならジェーンのシャツを嗅いでいても怒られないんだろう?ジェーンはそう言ったじゃないか。犬を好きだとも」
 ようやく、ジェーンにも事態が飲み込めてきた。
「まさか、それだけのために……?」
「私に取っては大事だ。ジェーンのにおいを嗅いでいないと落ち着かない」
「も、もおおおお!!大将!!!!」
「ジェーン……!?何を怒っている……!?」
「もう知りません!そんなお馬鹿な大将は晩ご飯抜きです!」
「ま、待て、ジェーン……!腹が……!」
 恥ずかしい妄想をしてしまったことだとか、ジェンタイルの駄犬ぶりにときめいてしまったことだとか、恥ずかしさのあまり爆発してしまいそうだ。
 ジェーンは捨て台詞を残してその場を駆け去り、部屋に入るやしっかり鍵を閉めてしまった。
 その晩扉の外からは、切なげにジェーンの名を呼ぶジェンタイルの声が響き続けていたという。



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