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スオムス文庫 サニャイラ-15-1『サニャの唄』

「サーニャ……」
 引き金を引いた。
 銃声。頭が弾ける。
 身体が、糸の切れた人形のように、床へ崩れ落ちた。
 放たれた銃弾がこめかみを穿ち、脳を抉る。
 私は死んだ。
 何故かそう思う。死んだら考えることなんて、出来無いはずなのに。
「エイラさん!エイラさん!!」
 お節介なあいつの声が聞こえる。
 頭が熱い。
 きっと、私を治そうとしているんだろう。
 目は見えないけど、泣いているに違いない。
 悪いな。私はサーニャのいない世界なんか、いたくないんだ。
 目を閉じ、眠る。きっとこれが死ぬってことなんだ。

 ここは何処?
 目を開けると、白い部屋にいた。白い壁、白いシーツ。白い包帯。
 死んだにしては、リアルすぎる光景だ。
 頭が痛い。
 やはり生きてるんだ。
 起き上がろうとして、ベッドに縛り付けられていることに気がついた。口にも猿轡を噛まされている。
「……起きたか」
 声の方向に少しだけ顔を動かすと、いつも以上に表情を厳しく引き締めた坂本少佐が立っていた。
「宮藤に感謝しろ。お前の部屋の前でずっと心配していた」
 足のほうに目をやると、ベッドに突っ伏して気を失っている宮藤がいた。
 余計なことをしてくれた。
 申し訳なさに先立って、浮かんだのはそんな言葉だった。
「また自殺されては敵わん。しばらくそのままでいろ」
 しばらくだって?冗談じゃない。私はこんな苦しいところにいたくないんだ。
 いるはずの彼女がいない。それだけで、胸を虚ろな痛みが叩く。
「そんな目で見るな。お前を必要としている人間はまだいる。まずは少し落ち着け。あとでゆっくりと話しをしよう」
 坂本少佐は宮藤を抱き上げると、部屋を出て行った。
 宮藤がぎゅっと掴んでいたせいで、私にかかっていたシーツがずれてしまった。
 少し寝づらくなるな。
 人事のような感想しか浮かばなかった。

 やることがない。
 昼夜を問わず常に誰かが監視についている上、ベッドから起き上がれるのはトイレと食事の時だけだ。もっとも、食事は一切口にしなかったが。
 宮藤やリーネは泣きながら食べてくださいと頼んでくるが、私は口を利くのも億劫で、首を振るだけだった。
 やがて、私に食事は運ばれてこなくなった。
 身体を縛り付けられたまま、点滴で栄養を補給させられる。
 拷問だ。心がどんなに拒否しても、体は送られてきた栄養を素直に処理し、命を長らえさせる。
 一度ペリーヌに身勝手だと言われたことがあった。
 そうだよ。私は身勝手なんだ。だから、早く自由にさせてくれ。
 そう答えたら、部屋から走り出ていってしまった。泣いていたのかもしれない。
 全部どうでもよかった。
 早く私を自由にしてくれ。
 毎晩私を愛する皆を恨みながら、私は眠りに落ち、一日を終えた。
 一生を終える日を、待ち望みながら。

 懐かしい声がして、目を覚ました。
 頬を涙が伝ったが、縛られているせいで拭うことができない。
 夢だろうか。
 もう何年も聞いていない気がする、彼女の声がする。
 自殺防止に噛まされた猿轡の奥から、くぐもった嗚咽が漏れでた。
 いや、夢じゃない。
 歌だ。サーニャの歌が聞こえる。
 歌声のする方向に走って行きたい。
 誰でもいい、早く縄をほどいてくれ。サーニャが行ってしまう。
「エイラさん!?どうしたんですか、エイラさん!!」
 暴れる私に気が付き、宮藤が駆け寄ってきた。
 どうやら我を失っていると思われているらしく、必死で私に呼びかけてきた。
 鈍い奴!
 早く縄をほどいてくれと、私は目で訴えた。
 歌声は遠ざかっていく。
 嫌だ!早く!早く!!
 宮藤は恐る恐る私の猿轡を外した。
「……っ!さ、サーニャ……!ミヤフジ、縄を解け……!」
「え、エイラさん……?」
「早く!!」
「は、はい!」
 縄が解かれると、私は勢い良くベッドから飛び出した。
 ……が、とても立っていられず、すぐに転んでしまった。
「サーニャ……、サーニャ……」
 諦めるものか。
 私は石畳を掴み、体を引っ張る。這ってでもサーニャのところへ行ってやる。
 宮藤が追ってきて何かを言っているが、耳に入らなかった。
 助け起こそうと添えられる手を振り払い、必死に体を前へ進める。
 歌はまるで、私を誘導するように近づいたり遠ざかったりを繰り返した。
「サーニャ……、サーニャの歌……」
「エイラさん!歌なんて、歌なんて……!」
 宮藤は何度振り払われても、私を助け起こそうとしてきた。
 だが、夢中で前に進もうとする私には、ただの邪魔でしかない。
 ようやくたどり着いたのは、滑走路の先端だった。
 下を覗き込むと、コンクリートの足が波を叩きつけられていた。
「サーニャ……!」
 誰もいない。
 歌声も聞こえない。
 幻聴。
 再び私の心は虚ろになってしまった。
 眼下には、打ち付ける波。
 最後の力を振り絞って、私は身を投げた。
 身体を覆っていた重さが消え、羽のように軽くなる。
 ミヤフジの悲鳴が聞こえ、すぐに波の音にかき消された。もう、波の音しか聞こえない。
 眼を閉じる。眠くなってきた。
 波の音に混じって、エンジンの音が聞こえた気がする。
「おかえり、サーニャ」
 私の意識は水に飲まれ、消えた。



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