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スオムス文庫 エイゲル-2-1『心の奥では』

 夕食後の談話室、ソファーに横になって眠るエイラを、バルクホルンが見咎めた。
「おい、こんなところで寝るな。聞いているのか、エイラ」
 肩を掴んで揺すっても、まった目を覚ます様子がなかった。相当疲れているらしい。
 横でそれを見ていたミーナは、いつも通りの柔和な口調で、
「まぁ、トゥルーデ。そう言わないで。夕べは夜間哨戒で、今日は昼の待機組。寝る暇がなかったのよ」
「だがな、ミーナ。こんなところで寝て風邪をひかれても困る。部屋で寝かせるべきだ」
 ミーナは口元を押さえて微笑を隠しつつ、
「優しいのね」
「べ、別にそういう事じゃない。私が言いたいのは、体調管理も士官としての勤めだと……」
「はいはい。じゃあ、運んであげてくれるかしら。起こすのも可哀想だし、なにより起きないでしょう」
「はぁ……、わかった。仕方がない」
 バルクホルンが抱え上げると、何を寝ぼけたのか、エイラは背に腕を回し、胸に顔を埋めてきた。
「お、おいっ」
「んー……。ねーちゃん……」
「な、何を言っている!?私はお前の姉ではない!」
「あら、違うの?」
「ミーナ!」
「ふふ、ごめんなさい。私は仕事に戻るから、後はよろしくね」
「まて、やっぱり別の者に……!おい、ミーナ!!」
 ミーナはさっさと出ていってしまった。
 エイラを置いて部屋に戻るか?
 いや、それは駄目だ。風邪を引かれては困るといったのはバルクホルン自身だし、なによりしがみつく腕の力は強く、なかなか離れてくれそうにない。
 やむを得ない。運んでやろう。
 途中ハルトマンやシャーリーに見つからない事を祈りつつ、談話室を後にした。
 からかわれるのは御免だった。

「おい、エイラ。着いたぞ、お前の部屋だ……ダメか」
 既に軍服の胸元はヨダレでべとべとだった。
 何故私が……。
 バルクホルンは密かに愚痴る。
 これが宮藤だったりすれば、口元は緩んでいただろうが、エイラでは……。
「ねーちゃん……」
「だから私はお前の姉では無いというに……」
 エイラにも姉がいるという話は聞いたことがあるが、それ以上深いことは知らない。
 というか、日頃のエイラの素行から、あまり姉に甘える姿が想像できなかった。
「よい、しょ……」
 抱き上げたままでは体制が辛かろうと思い、とりあえずベッドに寝かせてやることにした。腕が離れていかないので、添い寝する形になる。
 誰かに見られたら誤解を招きかねない体勢だ。
「仕方のないやつめ……」
 普段の生意気さは失せ、今の顔は無邪気であどけない。毒気を抜かれてしまう。
 起きたら説教してやろう。そう呟いたが、起きるまでその意思を保てるかは怪しいものだ。
 もっとも、その心配は杞憂に終わる気もする。起きたエイラが失礼なことを言うのは想像に固くない。

 エイラは温かくて、柔らかいものに包まれていた。いいにおいもする。懐かしい。昔姉に抱かれて眠っていたことを思い出す。
 年の離れた姉はあまり家にいなかったが、時々帰ってきては幼いエイラと遊んでくれたものだ。
 今でこそ煙たがったり反抗したりもするが、姉のことは大好きだったのだ。
「あー……、よく寝た……」
 むくりと体を起こす。
 自分から希望したこととは言え、夜間哨戒の後眠らずに昼のシフトで待機というのは中々堪える。
「ようやく起きたか」
「うえ!?」
 隣には本来いるはずのないバルクホルンが、不機嫌な顔で横たわっていた。
 とっさに貞操の危機を感じる。
「な、何もしてないだろうな……!」
「馬鹿者!私が好き好んでお前の寝室に忍びこむわけなかろう!」
「じ、じゃあなんでいるんだよ……?」
「なんで?なんでだと?」
 バルクホルンはゆっくりと身を起こし、エイラの胸元に人差し指を突きつけた。
「談話室でいくら起こしても起きないから、私が運んできてやった。抱きついたお前が一向に離れないから、こうやって起きるのを待っていてやったんだ」
「本当かー……?」
「見ろ、この胸元の染みを!おまえのせいで洗ったばかりの軍服がこの様だ!」
「げっ」
 そう言って指さした先には、確かに染みが付いていた。ヨダレの染みらしい。
 ということは……。
「ま、まさか大尉の胸に……」
「ようやく飲み込めたか」
「う」
「う?」
「うわあああああああ!ショックだあああああああああ!!!」
「何だと!?」
 まさかバルクホルンの胸に顔を埋めて安心してしまうなんて。
「しかもなんかすっごい恥ずかしい夢を見ていた気がする……」
「夢……?ああ、なんかねーちゃんがどうとか……」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「うぉっ!?」
「ち、違うんだ大尉!ちょっと昔の夢を見ていただけで、ねーちゃんと別れて寂しいとかそういうのじゃないんだ!誤解しないでくれ!な!な!!」
「あ、ああ……」
 エイラの必死な剣幕に押され、ついバルクホルンも頷いてしまう。
「と、とにかく今日は一人にしてくれ……」
 ひとしきりわめき終わったエイラは、落ち込みつつ呟いた。
 まさかこの年になって、姉と同衾する夢をみるなんて……。まるでシスコンではないか。
「なぁ、エイラ」
「なんだよ……」
「姉に甘えるのは普通のこ」
「出てってくれー!!」
 バルクホルンを追い出したエイラは、立ち直るのにまる一晩を要したのだった。



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