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スオムス文庫 サニャイラ-16-1『バレンタイン-エイラ編』

 2月14日早朝、エイラは基地から逃亡を図り拘束された。
「エイラ、何故脱走した」
 坂本が厳しい顔で詰問する。後ろには渋い顔のバルクホルンと、疲れた顔のミーナが控えていた。
「……別に脱走したんじゃない」
 エイラは坂本の言に、拗ねたように答えた。
「外出時間前に、無許可で、塀を乗り越えて外に出ようとした。どこからどう見ても立派な脱走だ」
「エイラさん、せめて動機を教えてもらえないかしら。だんまりを通されると、こちらとしても厳しい処罰を下さないといけなくなるわ」
「うー」
 しかめっ面のバルクホルンはここで初めて口を開き、
「うー、ではない!貴様、自分のしでかしたことを分かっているのか?」
「でも……」
「でも、じゃないわ。どんな理由であれ、私たちは貴方を守る。仲間ですもの。だから、話してほしいの。これはサーニャさんのためでもあるのよ」
「サーニャ!?サーニャが何かしたのか!?」
「いいえ。でも、貴方がいないとサーニャさんが困るわ」
「本当か?」
「それは一緒に暮らしている貴方が一番良く分かっているはず。仮にこのまま、貴方が厳罰を受けることになったとします。サーニャさんは平静でいられると思う?」
「う……」
「だから、話して。誰のためでもなく、サーニャさんのために」
 相手を思いやるようで、その実淡々と自白を促す尋問術。
 全く恐ろしいもので、それは側で見ていた坂本とバルクホルンをしてその心胆を寒からしめ、エイラはあっさりと口を割らされてしまった。
「怖かったんだ……」
「「「怖かった?」」」
「今日何月何日かわかるか?」
「ええと、2月14日……、バレンタインデーね」
「そうだよ!も、もし!もしだぞ!サーニャにチョコもらえなかったら、私どうすれば……!!」
 ミーナとバルクホルンは呆れ顔で、しばらく口をきくことができなかった。坂本はどんな関係があるのか、全く想像できないでいる。
 なんとか立ち直ったバルクホルンは頭痛を感じつつ、
「あー……、なんだ、その、エイラ?まさかとは思うが、チョコをもらえないのが怖くて脱走を……?」
「そうだよ!」
「その、エイラさん?冗談、よね……?」
「そんなわけないだろ!私に取っては死活問題だ!」
「私には話の流れが良く見えんのだが……」
「朴念仁……」
「何だ?ミーナ、なんか言ったか?」
「いいえ、何も……。それより、エイラさんの処分を決めましょう。トゥルーデ、提案は?」
「自室禁錮一週間とトイレの掃除でもやらせておけ……。私は頭が痛くなってきた」
「まぁ、よく解らんが、軍律に厳しい大尉がそういうのならそれでよかろう」
「決まりね。では、エイラさんはしばらく謹慎してなさい。もう退室してよろしい」
「はーい……」
 しょぼくれたエイラの背が消えるのを見送り、2人は同時に大きなため息を吐いた。坂本は相変わらず、何があったか全くわからなかった。

「サーニャのいるところに帰るのか……」
 本来ならば、今日一日戻って来ないつもりだった。
 もしチョコをもらえなくても、14日を逃してしまったからという言い訳ができるからだ。
 エイラはゆっくりと扉を開け、自室を覗き込む。
 サーニャは寝ているだろう。起きるまでになんとか身を隠す場所を探し、顔を合わせなくて済むようにしなければ。
 だが、その思惑はあっさりと裏切られる。
 眉を怒らせたサーニャが部屋の真ん中で仁王立ちし、エイラが帰ってくるのを待ち受けていた。
「エイラ……っ」
「サ、ササササササーニャ!?」
 今日はいい天気だなー。起きていて大丈夫かー?さぁ、そろそろ寝ないとまずいぞ!おやすみ!よし、これでいこう。
 エイラは瞬く間に言い訳のシミュレートを終えた。
「どうして脱走なんて……!」
 しかしエイラが口を開くよりも早くサーニャは詰め寄り、涙を零した。
「どうして……」
「あ、あああああの、サーニャ……」
「せめて相談して欲しかった……」
 出来るわけがない。
「ち、ちょっと用事があって出かけるだけのつもりだったんだよ!中佐もおおげさ――」
 ぱしん。
 頬に弾けるような痛みが走り、顔を揺らされた。
「ばかっ」
「さ、サー、ニャ……?」
 サーニャがぶったのか?私を?
 エイラは予想外の事態に頭を混乱させ、上手く言葉をつなげることが出来ない。
「心配したんだよ……?もう帰って来ないかもって、みんなも、私も、すごく心配したんだよ……?」
「う、うん……」
「もうこんなことしないで……」
 エイラはひりひりと痛む頬を抑え、サーニャの瞳から溢れる雫を眺めていた。
 怒る気にはならない。
 泣かせたという事実以上にサーニャの涙がきれいで、見惚れてしまった。
「やくそく、して……」
 サーニャはふらふらと頭を揺らしながら呟いた。
「やくそく、してくれたら、いいものあげる……」
「わ、わかった!約束する」
 エイラは反射的に答えていた。
「サーニャ、起きたらゆっくり話そう。な、それでいいだろ?」
 夜間哨戒から帰ってきて、ずっと起きていたのだろう。今にも倒れてしまいそうだ。
「でも、そのまえに……、これ……」
 今にも倒れそうなサーニャは、ポケットから小さな箱を取り出し、エイラの手に乗せた。
「ばれ……ん、たい……」
 そして力尽きたのか、エイラの胸に倒れこみ、すうすうと寝息を立て始めた。
 エイラはサーニャをベッドに寝かせるのも忘れ、喜びと驚きのあまり、その体勢で1時間を過ごしたのだった。



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