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スオムス文庫 姫マリ-2-1『バレンタイン&マリー誕生日』

「シュナウファー!祝いに来たぞ!」
 布団に潜り込んだばかりのシュナウファーは、派手に搭乗したウィトゲンシュタインによってその眠りを覚まされた。
「クソ貴族……」
「なに?シュナウファー、なんか言ったか?」
「いいえ、なにも……」
 彼女が来た以上、安眠は期待できない。
 無視して寝たところで、迷惑な子犬のようにキャンキャン騒ぐのは眼に見えている。
 シュナウファーは渋々身を起こし、眠い目をこすりながら眼鏡をかけた。
「はい、シュナウファー!」
 満面の笑みで白い箱が差し出される。
 ケーキの箱?
 何かを期待するような視線がこちらに向けられていた。
 開けろ、ということだろうか。
 ありがとうございます、それではさようなら――とは、行かないらしい。
 シュナウファーはテーブルにそっと箱をおろし、十字に結ばれたリボンを解いた。
 箱を開けると、見事にデコレーションを施されたまん丸のチョコレートケーキが入っていた。
 甘い匂いが鼻をくすぐり、シュナウファーは自分が空腹だったことを思い出した。
 哨戒から帰ってきてから何も食べていない。空腹よりも眠気を優先したからだ。
「シュナウファー、食べるか?食べるか?」
 小柄なウィトゲンシュタインが、まとわりつくようにシュナウファーの周りを動きまわる。
「駄犬……」
「だけん?」
「何でもありません、待っててください……」
 皿とフォーク、それからお茶の用意を、二人分。
「わ、わらわの分もか……?」
 いくら空腹でも一人でホールケーキを食べきれるわけがない。
 切り分けて、ウィトゲンシュタインの前にケーキを置いた。
「ところで……」
「んむ?」
「今日は何故こんなケーキを……?」
 寝ぼけて聞き流してしまったが、最初に祝いだとか何とか言っていた気もする。
「何って、誕生日の祝いだが……」
 もっふもっふとケーキを頬張りながら、怪訝そうに眉をひそめるウィトゲンシュタイン。
 貴族なのにはしたないことこの上ない。
「誕生日……?」
「今日はシュナウファーの誕生日ではなかったのか……?」
「さぁ、どうでしょう……」
 両親と離れて暮らすようになって以来、誕生日を祝う人間はいなかった。だから正直言って自分の誕生日を気にしたことは無かったのだが。
「ま、まさか間違っていたのか……?」
 目の前の駄犬は顔を青くする。
 シュナウファーは懐から自分の登録証を取り出し、
「2月、16日……。ああ、合ってますね……。今日が誕生日でした……」
「そ、そうだろう!わらわらがシュナウファーの誕生日を間違えるはずがないからな!」
 わははは、と笑うウィトゲンシュタインだが、ほっとした表情は隠しきれていなかった。
 しかし自分でも忘れていた誕生日を、よく覚えていたものだ。この基地でさえ、覚えている人間などいやしないだろうに。
「それに、その……、一昨日はバレンタインだったろう。えと、折角だからチョコケーキを、と思ってだな……」
 ため息が出た。
「シュナウファー……?」
 ウィトゲンシュタインが不安気に反応する。
「そんな事のために、わざわざ……?」
「そ、そんなことって……」
「忙しい中、都合をつけてまでする事ではないでしょう……」
「でも、でも……!」
「言った覚えは無いのに、わざわざ調べてきたのですか……」
「だって、祝いたかったから……」
 猫のような目の端に、小さな雫が浮かび上がった。
 ぞくぞくする。泣くまいとこらえる姿は、実に可愛らしい。だが……。
「ありがとうございます」
 本当に泣かれても、困る。
「へっ」
「自分でも忘れていましたが、嬉しかったですよ……」
 間の抜けた顔でこちらを見るウィトゲンシュタインの鼻先を、そっとつついた。
 ぽろりと零れた涙が、紅くなった頬を伝う。
 可哀想だが、可愛い。いつもこうやってしおらしくしていればいいものを。
 自分のせいということも忘れ、しばし見入った。
「ほ、本当に嬉しかったかシュナウファー」
「はい。お友達に祝ってもらうのは、初めてでしたから……」
「と、ともだち……!そうか、そうだな!」
 ウィトゲンシュタインの立ち直りは早かった。もう少し堪能していたかったのだが。
「もっと食べて良いのだぞ!遠慮するな!な!!」
 そして調子に乗るのも、だ。
 たしか、一ヶ月後にホワイトデーがあったはずだ。
 返すついでにまた少し、意地悪をしてやろう。
 眠い頭にガンガン響く駄犬の声を流しつつ、シュナウファーはそう決めたのだった。



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