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スオムス文庫 スオムス3人組-1-1『1942年のバレンタイン』

 バレンタインのヴェシヴェヘマー基地は、一種のお祭り騒ぎとも言うべき、浮ついた空気に包まれていた。
 極寒、積雪、吹雪。悪天候にもめげず、スオムスの空を守る乙女たちへのプレゼントは続々と基地に届く。
 内容は様々で、チョコは勿論のこと、手編みのマフラーやセーター、本、ぬいぐるみ、中には恋文なんてモノもある。
 それが山のように届くのだから、飛行第24戦隊のウィッチたちの人気たるや凄まじい。
 中でもエイラの人気は群を抜いていた。
「やぁ、毎年毎年すごいね」
 エイラの部屋に入ったハッセが、感心したように呟いた。
「んー……、知らないやつからもらってもなー……」
 そう言うと、エイラは読んでいた手紙を放り出し、ベッドに横になってしまった。
 まだまだ部屋の隅には未開封の箱が山積みである。早く片付けないと次の山が到着してしまうが、朝から掛かりっぱなしでもうへとへとなのだった。
「イッルは有名人だからね」
「ハッセもおんなじだろ?知ってるぞ、私と同じくらい届いてるの」
「うーん、まぁ、私もイッルと同じかな。ありがたいんだけど、知らない子からもらっても現実感薄くって」
「じゃ、知ってる奴からもらうのはどうなんだ?」
 エイラはにひっと笑い、枕の下から丁寧に包装された箱を取り出す。
「嬉しいよ。飛び上がりそうなくらい。イッルはどう?」
 受け取りながら、ハッセもまた、リボンの巻かれた包をエイラに手渡す。
「今日一番ってとこかな」
「どういたしまして」
 早速包を開きつつ、エイラはこの日、ニパの姿を見ていないなぁ、とぼんやり考えていたのだった。

 そのころニパは寒さに凍えつつ、宿舎の前をうろうろしていた。
 その手には休暇を利用して買ってきた、キャンディの缶がすっぽり収まっている。
(ハッセはどうしてあんなに簡単そうに渡しちゃうんだ……!)
 ニパは朝からずっとエイラの周りをうろついていたというのに、今だになんと言って渡せばいいか、見当すらつかないでいる。
 改まった態度で渡せば気持ち悪がられそうだし、かといって普段どおりの態度で渡しても、あっさりした言葉しかもらえないだろう。
 今日くらいは、茶化さないでちゃんとした言葉をかけてもらいたい。
(ああ、やっぱり朝一番に渡しておけば良かった……)
 ニパは早起きして、というより前の晩は一睡もできなかったのだが、とにかくエイラが起きるのを部屋の前で待っていた。
 だが、エイラが起きるよりも早くプレゼントの山が部屋に運ばれだしたせいで、そのせっかくの機会を逃してしまったのだった。
 ニパに少しでも狡さや図々しさがあれば、エイラを起こすなり、部屋の中でエイラが起きるのを待っているなりしただろうが、残念なことに、それらはニパとは無縁である。
「あれ?ニパ?」
「うわあああああああ!?」
「どうしたの?こんなところで」
「なんだ、ハッセか……」
 ハッセは苦笑し「なんだとは酷いな」と呟いた。
「あ、ごめん……」
「いいよ、気にしてない。イッルなら今部屋にいるけど?」
「ちちちちちち違う!別にイッルに渡すためにこれを買ってきたわけじゃ……!!」
 何故かハッセは楽しそうに微笑み、
「あ、そのキャンディーの缶なんだ、あげるやつ」
「ち、違うって!」
「ニパからもらえば喜ぶと思うけどなぁ」
「ハッセ!だから」
「ニーパ」ぺちん。ハッセが人差し指で、ニパの眉間を弾く。
「痛っ」
「素直になんなよ。ニパがちゃんと言えば、イッルだってわかってくれるさ」
「う、うん……」
「あー、でも」
 ハッセのひんやりとした手が、額に押し当てられ、ニパは目を細めた。
「先に体あっためた方がいいかも」
「え……」
 ぐらり。
 聞き終わる前に、ニパは地面に倒れていた。

「で、ハッセ。なんでこのバカは熱が出るまで外でうろついてたりしたんだ?」
「さあ?詳しくはニパに聞いてよ」
 エイラと、ハッセの声がする。
「あ、起きた」
「大丈夫?起きれる?」
「うん、なんとか……」
 ニパはゆっくりと体を起こした。
 だるい。まるで油の切れたブリキ人形みたいだ。
「寒い……」
「そりゃそうだ。熱があるんだぞ、お前」
 呆れたような、エイラの視線が痛い。
「ほら、ココア飲めよ。少しあったまるだろ……」
「あ、うん……。ありがと……」
「はぁ……。からかいがいがねーなぁ、まったく」
「ごめん、イッル……」
「冗談だって。ったく、早く元気になれよ」
「うん、ありがと……」
「ほら、ニパ。飲み終わったらもうすこし横になろ?」
 二人の会話をにこにこと聞いていたハッセが口を挟み、ニパは大人しく従った。もう少し話していたかったが、また意識が朦朧としてきたのだから、仕方がない。
「邪魔しちゃ悪いから、私は部屋に帰るぞ」
「あ、ま、待って……。イッル、これ」
 立ち上がり、部屋を出ていこうとするエイラに、ニパは震える手で、キャンディーの缶を差し出した。
「……ん。あんがとな。お前の分は元気になったらやるよ。早く欲しけりゃさっさとよくなれよ」
 にっこり笑ったエイラは、そう言い残して部屋を出て行った。
「ハッセ……」
「ん?」
「ありがと……。ハッセの分、部屋にあるから……」
「うん、ニパが元気になったら取りに行く。だから今は気にしないで寝て?」
「うん、ありがと……」
 ニパはゆっくりと目を閉じた。
 熱が出たのはついてなかったけど、さっきのココアと、まだもらってない1個。合わせて2つ、もらえたことになるのかな。
 そんなことを考えながら。



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