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スオムス文庫 クルマル-1-10『雛鳥のバレンタイン』

「おい、起きろ伯爵」
「なぁに、ティナ……。何時……、ってまだ4時じゃないか……。トイレくらい一人で行ってよ……」
「私は子どもか!」
 そうでなければ子犬か子猫か。いずれにせよ似たようなものだとクルピンスキーは思う。
「どうしたの、もう……」
 外はまだ真っ暗だ。眠い目をこすりつつ、枕元のスタンドを点けた。
 マルセイユはクルピンスキーの手首を掴み、ベッドから降りろと言うように引っ張っている。
 寒いからこたつで話そう、というわけだ。
「お布団の中で良いじゃない……」
「駄目だ。布団に入ってたら、お前は絶対二度寝する」
「しないよ……」
 眠気でふらつきつつも、枕元のカーディガンを羽織り、ベッドから立ち上がった。
「うう……、まだこたつあったまってない……」
 一足先に潜り込んでいたマルセイユが、悲しげに呟いた。
「スイッチ……、スイッチはどこだ……」
 普段はクルピンスキーが先に起きて、電源を入れているのだ。マルセイユは温まったこたつに潜り込むだけで良い。スイッチの所在など知る由もなかった。
「ほら、ここ。おいで、あったまるまでくっついてよう」
 クルピンスキーは隣に腰をおろし、震える肩を抱き寄せた。
「まだ寒い……」
「だからお布団の中にいればよかったのに」
 体をずらしてマルセイユを正面に移動させ、背中から抱きしめる。それでようやく温まったらしく、マルセイユの震えが止まった。
「バレンタインだから」
「うん?」
「今日はバレンタインだから、あるんだろ?私に渡す物が」
「ああ、うん。勿論」
「くれ」
「今?」
「当たり前だ」
 やれやれと苦笑して、クルピンスキーは立ち上がった。
 楽しみで早起きしすぎたというわけか。本当に子どもみたいだ。
「あ、や、やっぱ待て」
「?どうして?」
「寒い……。もう少しあったまってからでいい……」
 マルセイユは再び震えていた。

「もういいぞ。早くもってこい。あと、温かいコーヒーも忘れるな」
「はいはい」
「はいは一回でいい」
「はいはいはい」
「おい!」
 こたつから顔だけ出してがなりたてられてもまったく怖くない。
 クルピンスキーはまだ何かわめいているマルセイユをさらっと受け流し、ポットを火にかけ、戸棚に隠しておいたチョコレートの箱を取り出した。
(ウイスキーも持っていったほうがいいかな)
 コーヒーを一杯飲み終わった後は、チョコレートとウイスキー。マルセイユならそうするだろう。
 箱とカップ、それからウイスキーを手元においたまま、お湯が沸くのを待つ。
 なんだか手持ち無沙汰だ。
 ちらりと居間を盗み見ると、一瞬マルセイユと目が合い、慌てた様子で目を逸らされた。
 ポットの口から白い湯気が吐かれ始めた。
 まだ沸騰はしていないが、火を止める。あまり熱くし過ぎると、慌てて口をつけたマルセイユが舌を火傷するかもしれない。
 治療と称してキスするのも良いな、と一瞬考えないでもなかったが、折角渡したチョコレートの味が分からなくなっては本末転倒だ。
「はい、コーヒー。ゆっくり飲んでね」
「あ、ああ……」
 湯気の立ち上るカップを受け取りながら、マルセイユは何か、納得のいかないような顔でこちらを見る。
 早く寄越せと言うのだろう。そういう態度を見せられると、つい焦らしたくなるのが人というものだ。
 クルピンスキーは再びマルセイユの背後に座ると、細い腰に腕を回し、顔をストロベリーブロンドの髪に埋めた。
「はぁ、眠くなってきちゃった」
「おい、私はまだ……」
「いいにおいがするね。なんだか安心するよ。ティナあったかいし」
「そ、そうか?それなら……、じゃなくて」
「少しこのまま眠ってもいいかな」
「伯爵、もしかして私で遊んでいるのか……?」
 マルセイユは拗ねたようにクルピンスキーを見上げた。
 その顔があまりにもツボで、不覚にもときめいてしまう。このまま押し倒してしまいたい気分だ。確実に殴られるパターンではあるが。
「まぁ、こんな時間に起こされちゃったし、ちょっとくらいの意地悪は」
「バカ。いい加減にしないと怒るぞ」
 普通は逆なのだが、クルピンスキーは笑顔を崩さないまま、
「ごめんね。はい、これどうぞ」
 丁寧に梱包された箱を差し出した。
 マルセイユは受け取るや、びりびりと勢い良く包装を破く。白い箱を開けると、大きなハート型のチョコレートが入っていた。
 目を輝かせたマルセイユは振り返り、
「た、食べてもいいのか?」
「勿論。ウイスキーもあるよ。一緒にどう?」
「気が利くな」
 ぽりぽりとハートの端から削るように食べだした。普段と違って小動物的だ。そのギャップがグッと来る。
「……」
 夢中でハートをかじっていたマルセイユはかじる手を止めた。
「美味しくなかった?」
 マルセイユは首を振り、何か決心したような面持ちで、口に食べかけのチョコをくわえてクルピンスキーに顔を近づけた。
「ん」
「ちょ、ちょっと、ティナ……?」
「ん!!」
「食べろってこと?」
「ん」
 どうしてこう、可愛いことをするんだろう、この子は。
 クルピンスキーは差し出された側をかじる。
 至近距離で目と目を合わせながら、一つのチョコをかじる。
 なんだかキスしているようだ。
 最後までかじったらどうなるのかな?



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