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スオムス文庫 エーゲル-1-1『バレンタインは噛み合わない』

「ん?珍しいな、ハルトマン。まだ9時だぞ」
 庭でぶらぶらしていた私に、トゥルーデが声をかける。
 トゥルーデにどうチョコを渡そうか考えてたって、正直に言ったらどうなるのかな。
「基地中で甘いにおいがしてるから。つい目が覚めちゃってさ」
 まぁ、正直に言えるなら、私はとうの昔に渡し終えている。
「ああ……」
 トゥルーデは苦い顔。
「今日はバレンタインデーだからな……。宮藤やリーネが張り切っていた。戦時だというのにまったく……」
 嬉しいくせに。
 私はトゥルーデが好き。でも、素直になれないのを戦争を言い訳にするところは嫌い。
「今日のお茶の時間が楽しみだなー」
「その前に訓練と書類仕事があるだろう!」
「えー。トゥルーデやっといてよー」
「自分でやれ!」
 訓練も書類も大事なのは、私だってわかってる。トゥルーデがいなければちゃんと自分からやるよ。愚痴は言うだろうけど。
 こうして嫌がって見せるのは、そうすればトゥルーデが一緒にいてくれるから。
 ずるい?私はそうは思わない。
 だって、本当にずるいのは、戦争ばかりを言い訳にするトゥルーデの方。
「来い!仕事のついでに軍人の心得というものを叩き込んでやる!」
 えー。やだぁ。
 襟首を掴まれながら、私はつい、にやけてしまう。
「良いか、ハルトマン。士官というものは――」
 判で押したような軍人の論理。
 トゥルーデのような優しいヒトの口から、そんな言葉は聞きたくない。
「お前はもっとエースとしての自覚を――」
 私は自分から進んで軍に入隊したのに、すっかり軍が嫌いになってしまった。
 トゥルーデのせいだ。
 トゥルーデに褒められると嬉しい。一緒にいられるのは嬉しい。でも、トゥルーデが危ないのは嫌。
 だから戦う。トゥルーデを危ない目に合わるネウロイも軍も大っきらい。だから私は戦える。
「おい、聞いているのか?お前は本当に手がかかる――」
 ねぇ、トゥルーデ。私はいつまで手がかかる後輩なの。
 トゥルーデと並んで戦えるようになったよ。トゥルーデを守ることだって出来るんだよ。
 トゥルーデがもっと別の見方をしてくれたら、私だって変われるんだよ。
「聞いてるってもー。耳にタコができそうだよ」
 私はトゥルーデに尊敬されるような軍人になんて、なりたくないんだよ。頼れる戦友とか、どうでもいいんだよ。
 わかってほしい。わかってほしくて、ずっと待ってる。でも、分かってくれないんだろうね、トゥルーデは。
「まったく、どうしてお前は……」
 どうしてトゥルーデは、だよ。
「はぁ。しょうがない。とにかくこの書類だけ片付けろ」
 わかったよ。だからそんな諦めたように言わないで。
 間違える。当然わざと。
「ハルトマン、その日の機材は違っただろう」
 また、間違えた。
「日付が間違っている。戦闘はその前日だ」
 よく気がつくね。
「バルクホルンさん、ハルトマンさん、お茶の時間用にお菓子作ったんですけど、試食してみませんか?」
 宮藤が入ってきた途端、トゥルーデの表情が柔らかくなる。
 宮藤にだって軍人らしさなんかないのに。まぁ理由はわかってるんだけど。
 でもそれは認められない。私が持ってるものじゃないから。
「ああ、すまんな。ハルトマンの書類が終わったら取りに行こう。食堂に置いておいてくれ」
「えー、トゥルーデー。ちょっと休憩しようよー」
「駄目だ。あと3枚終わらせるまでは逃がさんからな」
「ははは……。じゃあ、お待ちしてますから。がんばってくださいね、ハルトマンさん」
「うーい」
 あと3枚。たったそれだけ。折角のバレンタインなのに、トゥルーデと二人きりでいられるのは書類3枚分だけ。
 自然とペンの動きが遅くなる。
「どうした。さっきから全然進んでいないようだが」
「お腹減ったからだよ。宮藤のお菓子食べてからなら頑張れたのに」
「まったく、朝食からそう時間もたっていないだろうに……」
「ぶーぶー」
 こんなやりとりでも十分と思えちゃうくらいには、私も末期的。
「あ、そうだ」
「ん?」
「こないだ買ったお菓子があったんだよ。それたーべよ」
「書類が終わってから……」
「いいじゃん。食べたらちゃんとやるって」
 ポケットから取り出したのは、トゥルーデのために用意したチョコレート。
 無造作に包を破って箱を取り出すと、たくさんのハートが顔を出す。
「ん、美味しー」
 口に入れると柔らかな甘味が広がった。
「はい、トゥルーデも」
「いや、私は」
「あーん」
「お、おい。だから私は……んぐっ!」
「どう?美味しい?」
「ま、まぁまぁだな」
「そっか。じゃあ残り全部上げるっ」
「な、なに?あ、ハルトマン!待て!!」
 私は部屋から飛び出した。
 成り行きだけど、渡せて良かった。来年はもっと、ちゃんと渡せたらいいな。



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