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スオムス文庫 アレニパ-3-1『どこまでズレる?』

 ハンガーを通りかかった私は、中々面白そうな光景に遭遇した。
 ニパくんがおずおずと熊さんに近づき、何か話題を切りだそうとしていた。
 熊さんは机の上に何か部品を広げ、それをいじるのに集中している。ニパくんには気付いていないみたいだ。
「あの、大尉……」
 何度か話しかけようとして思いとどまりを繰り返した後、ようやくニパくんは声を発した。
 しかし、微妙に距離が遠い。これは怯えてるね。可哀想な熊さん。
 私はそっと身を隠し、二人の会話を聞くことにした。
「その、ええと……」
「はい、ニパさ、ん……」
 熊さんは嬉しそうに振り返った後、距離に気づいて声のトーンを下げた。怖がられてることを改めて察したのだろう。傷ついたに違いない。
 二人の間には早くも、気まずい雰囲気が漂いだした。
「えと、その、もうすぐ、誕生日ですよね」
「……そう、ですね」
「何か、欲しい物とか……」
 おお。ニパくんが押した。引っ込み思案なのによく頑張った!そう褒めてあげたいところだけど……。
「べ、別にお祝いなんて、結構です」
 熊さんはつんっとそっぽを向いちゃう。素直じゃないからなぁ。
「で、でも、お世話になってるし……」
 ああ、ニパくん、その言い方はだめ。逆効果……。
「……っ。いりません!そんなこと考える余裕があるなら、少しはストライカー壊さないように頑張ってください!」
 ガタンッ。熊さんは音を立てて椅子から立ち上がり、荒々しく靴を鳴らしてハンガーから出ていってしまった。
 隠れてた私とすれ違ったけど、気づく余裕はなかったみたい。
 ニパくんは呆然と机の脇に立ち尽くしていた。泣いてはいないけど、アレは本気で嫌われたと思っている顔だ。
 うーん。仕方がないね。
 隠れていた私は、さも今ここを通りかかりましたよ、という顔でニパくんに近づいた。
「あれ、ニパくん?さっき泣きそうな顔の熊さんとすれ違ったんだけど、何かあったの?」
 泣きそうな顔っていうのは私の想像。そこまで見る余裕はなかったし。多分あってると思うけど。
「あ、中尉……。その、大尉に怒られちゃって」
「何か言ったの?」
「誕生日、何が欲しいですかって……。そしたら、そんなものよりストライカー壊さないようにしろって」
 ニパくんは寂しそうな笑顔を浮かべた。
 んー。そこじゃないんだよなぁ。ニパくんは鈍すぎてもう。可愛いけど、熊さんやジョゼちゃんからしたらたまんないね。
 私は銀色の部品が散らばった机に腰掛け、話を続けた。
「大尉も別に怒ったわけじゃないと思うけどね」
「いや、怒ってたよ……。やっぱり私なんかが大尉にプレゼント贈ろうって思ったのが」
「いやいやいやいや。さんも嬉しかったと思うよ?……二人とも、不器用だよねぇ」
「……?」
「こっちの話。それで、ニパくんは熊さんにプレゼント渡したいのかな」
「それは、渡したいよ……。でも、大尉は多分、受け取ってくれないよ」
 そう言って、ニパくんはまた自嘲気味に笑った。
「そんな風に諦めちゃダメダメ。熊さんのこと好きでしょ?」
「うん。すごくお世話になってるし、こういう時でもないと感謝を伝えられないし」
「……渡すときはそれ、言わないほうがいいと思うよ」
「?」
 ニパくんは首をかしげた。
 熊さんは関係が進展しない理由を上司と部下だからだと思ってるからだよ……。他にもニパくんの鈍さとか、熊さんが素直になれないとか、他にも色々あるけどね。
「そうだな、じゃあ渡すときこう言ってみなよ」
 私はそっと耳打ちした。
「う、うん。わかったけど……、本当に大尉は受け取ってくれるのかな」
「任せておいて。後は私がやってあげるから」

 そうこうしているうちに、熊さんの誕生日を迎えた。
 ニパくんと熊さんは相変わらずぎくしゃくしている。……要するに、まだ私の説得が上手くいってない。
 ニパくんからは本当に大丈夫なんだろうな、という疑いの視線がしきりに送られてきていた。
 いや、違うんだよ。これは作戦なんだ。
 ……ちょっと時間がなくて熊さんとお話できてないっていうのも、ちょっとだけあるけどね。ちょっとだけ。
「……大尉、ちょっと」
 訓練の合間をぬって、私は強引に熊さんを捕まえた。
「なんですか……」
 熊さんは熊さんで、なんだか元気がなかった。ずっとニパくんとの事を気にしていたんだろう。
「ニパくんとケンカしたでしょ」
「……っ!?し、してませんっ!!!!」
 一気に顔が真っ赤になる。わかりやすいんだから、もう。
「まぁ、アレだけ分かりやすいとね。誰でも気づくよ、普通」
「そ、そんなことは……」
「あ、そうなの?じゃあちょっと今からお茶しに行こうよ。ニパくん誘ってさ」
「ニ、ニニニニニニパさんを誘わなくてもいいでしょう!!!」
「えっ。どうして?」
「どうしてって、それは……」
 沈黙。
「……ケンカ、したでしょ」
「はい……」
 熊さんはがっくり肩を落とした。
「私が悪いんです……。折角、ニパさんがお誕生日を祝ってくれるというのに、あんなこと……」
「まぁ、気持ちは分かるけどね」
「……知ってたんですね」
「うん。見てたからね、隠れて」
「うう……」
「まぁ、それなら話は早いよ。ニパくんは大尉のプレゼント、ちゃんと用意してる。もらってあげたら?」
「ですけど、私はひどいことを言ってしまいましたし……」
「ニパくんも自分が悪いんだって思ってるよ。お互い歩み寄るなら、今日がラストチャンスだと思うけど?」
「そう、かもしれません……」
「それにさ、欲しいでしょ?ニパくんからのプレゼント」
「……………………………はい」
 顔を赤らめ、うつむく熊さん。可愛いなぁ、もう。

「大尉、大好きです!」
 ニパくんはそう言うと、手に持った包を差し出した。
 熊さんは顔を真赤にして停止している。刺激が強すぎたらしい。
「あの、大尉……?」
「ニ、ニニッニパさん!?今なんて!?」
「え、えと、私大尉のこと大好きですって……」
「ほ、ほ、本当ですか!?」
 ガシッとニパくんの肩をつかんで迫る熊さん。怖い。
「は、はい……。ウィッチとしてもすごく尊敬してますし」
「え」
「大尉は厳しいけど、でも、私のためだってわかってますし……」
「え、ええ……」
「いつも私たちの事を一番に考えてくれる。そんな大尉が大好きです」
 にこっ。
 熊さんは地面にへたりこんでしまった。
 まぁ、色々言いたいことがあるのは分かるけど、ニパくんのあんな笑顔見せられたら、何も言えないよね……。
「それに、頑張ってる大尉、凄く可愛いと思います」
「えっ」
 えっ。
「それで、その、プレゼント、受け取ってもらえませんか?フライトジャケットなんですけど、大尉に似合うと思って……」
「は、はい……」
 熊さんは、呆然とプレゼントを受け取った。

 ニパくんの去った後。
「……中尉」
「うん」
「びっくりして、腰が抜けてしまいました……」
 包をぎゅっと抱きしめた熊さんは、今までみたことないくらい、女の子らしい顔だった。



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