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スオムス文庫 芳イラニャ-1-1『子猫と子犬と狐のワルツ』

 この頃、よく見る夢がある。
 右手に子猫、左手に子犬を抱えて、大きな犬から逃げまわる夢だ。
 犬はまるでワニみたいな大きな口を開けて、すごい速さで追いかけてくる。
 捨てれば良いのに、私はどうしても両手の二匹を捨てられなくて、必死に必死に必死に走るんだけど、犬はどんどん近づいてくる。
 そしていつも決まって、一呑みにされる寸前に目を覚ます。
 今日見たのもその夢だ。
 目を開けると、空はまだ全然明けていない。こんな時間に起こされて、一日寝不足決定だ。
 流石に怖い夢を見て泣く年でもないが、毎晩続かれると体力的にも精神的にも、中々厳しい物がある。
「原因はわかってんだけどな……」
 ゆっくりと身を起こし、両側で抱きしめられた腕をそっと引き抜いた。
 まず、右側のサーニャを見る。まるで天使のような寝顔。本当ならならサーニャが私の腕を抱き枕にするなんて状況、鼻血を出してもおかしくない。いや、出す。
 続いて、左側の宮藤を見る。まるで駄犬のような寝顔。本当ならいないはずのこいつのせいで、サーニャとの二人っきりの時間がお釈迦になっている。
 私は涎を垂らしながら惰眠を貪る駄犬に軽くいらだちを覚えつつ、汗で濡れた下着を変えようと立ち上がった。
「……って、ちょっと待て」
 抜けだした後のベッドを振り返る。
 私のいたスペースは空になり、安らかに眠る天使とアホ面さらした駄犬が向い合って仲良く寝ていた。
「…………せいっ」
 ばちん。駄犬の頬に平手を食らわせてやる。
 許さん。許せん。許すものか。サーニャとそうやって寝ていいのは私だけだ。
 一発で起きる様子がないので、二発、三発とお見舞いする。弾力のある頬が揺れ、赤くなっていく。
「………………ふぇっ」
 駄犬はようやく身を起こした。
「なんかほっぺがひりひりしまふ……」
「……気にするな。それよりもミヤフジ。ちょっとこっち来い」
「きょうはおやすみなのでもうすこしねまふ……」
「ダメだ!いいから来いってば!」
「ん……」
 つい大声を出してしまった。サーニャがむずがるように反応し、私は慌てて自分の口を塞いだ。
 しばしの沈黙。サーニャが起きる様子はなし。念入りに様子をうかがってそれを確認した後、私は宮藤に顔を近づけ、ひそめた声で命令した。
(いいから、ちょっとこい!)
(ふぁい……)
 眠たげな目をこすりながら、のそのそとはい出てくる宮藤。
 私は床に敷かれた布団に座り、宮藤にもそこに座るよう促した。
「で、ミヤフジ。お前はなんで私の隣で寝てたんだよ」
「ふぇー……。なんでですかねぇ……」
「お前床に布団敷いて寝るって言ってただろ!」
「じゃあきょうからしかなくていいですね……」
「ちがうだろ!」
 細っこい肩をつかみ、がたがたと揺する。
「あうあうあうあう」
「お前の寝床は下!私はベッドの下段!サーニャはベッドの上段!」
「でもさーにゃちゃんもえいらさんとこにねてまふ」
「サーニャはいいんだよ!」
「ずるいと、おもいま、すぅ……」
「寝るなー!!」

 結局宮藤はいくら叩いても目を覚まさず、ようやく起き上がったのは昼近くになってからだった。
「エイラさん、私のほっぺ叩きましたね!」
「あー?シラネー」
「酷いです!あんまりです!痛いです!」
「だから知らねって」
 ひらひらと手を振って、宮藤の抗議を軽く受け流す。
「もういいです。あとでサーニャちゃんに聞いてもらいますから」
「なっ!サ、サーニャは関係ないだろー!?」
「友だちですもん。愚痴くらい聞いてくれます。散々ほっぺ叩いておいて、知らぬ存ぜぬで通そうとする誰かさんと違って!」
「ぐっ」
 サーニャに知られるのだけはまずい!
 なんとかこの場を切り抜けられないか必死に考えていると、
「……どうしたの、芳佳ちゃん」
「あ、サーニャちゃん!」
「サ、サーニャ!?ま、まだ寝てていいんだぞ!な!」
「昨日お休みで早く寝たからもう大丈夫……。それで、どうしたの……?」
「あ、聞いてよサーニャちゃん!エイラさんったら酷いんだよ!」
「ミヤフジィィィィィィィ!!」

 正座。

「エイラ……。どうして芳佳ちゃんに酷いこと言うの……」
「え、えっと、ソレハデスネ……」
「嫌なら私も同じことしてたんだから、私にも言うべきよ……」
「べ、べべべべべ別にいやじゃないぞ!」
「じゃあどうして……?」
「ちょっと寝苦しかったっていうか……」
「そう……、じゃあ、私も……」
「サ、サーニャは悪くないぞ!」
「じゃあ私が悪いって言うんですか!」
「うん」
「ひどい!」
「エイラ……」
 サーニャの視線がザクザク体に突き刺さった。
「ス、スミマセン……、ミヤフジも悪くないです……」
 くそぅ。宮藤め、覚えてろ……。
「でも、狭いとエイラさん可哀想だよね」
「うん……。私もなるべく上に寝るようにする……、けど、いつのまにかエイラのところにいってるし……」
「私も……。あ、そうだ。じゃあ最初っから三人で寝ればいいんだよ」
 えっ。
「でも、ベッドは狭いよ……?」
「床に布団三枚しけばいいんじゃない?」
「ち、ちょっと待てよミヤフジ!お前は慣れてるからいいかも知んないけど、私やサーニャは固いとこで寝るのは嫌だぞ!」
「うん……、ちょっと辛い、かも……」
「じゃあ他の部屋からお布団借りてきて下にしこうよ!」
「えー……」
 私は顔をしかめた。私はともかく、サーニャを硬い床に寝かせるなんて。
 サーニャも嫌だよな。そう言おうとして、私は口をつぐんでしまった。
「そうする……」
 サーニャが今までにないくらいきらきらした瞳で賛成したからだ。
「ち、ちょっと待てよサーニャ!」
「私三人で寝たい……。お泊り会みたいで楽しそう……」
「あ、あうっ」
「じゃあ決まりだね!」
 もう反論の余地なんて、残ってやしなかった。

 その夜。
「……なんの解決にもなってないだろこれ」
 両側から腕を抱かれ、身動き取れない状態の私は静かに呟いた。



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