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スオムス文庫 クルマル-1-11『無題』

 マルセイユはいう。
「いつまでこのままなんだろう?」
 クルピンスキーはこたえる。
「ずっとだよ」
 マルセイユは寄りかかるように体重を預け、クルピンスキーは柔らかく、抱き抱えるように包み込んだ。
「嘘つき」
 拗ねたような呟き。
「どうしてそう思うの?」
 顔を寄せる。頬と頬が触れ合った。あたたかい。
「歳を取る」
「だから?」
「皺が出来て、体もあちこち緩む」
「そうだね」
「今のままじゃいられないんだよ」
「どうして?」
「今のままじゃ、いられないから」
「私のほうが早く、おばあちゃんになるんだよ。ティナは嫌?」
 優しく、そして縛り付けるように、マルセイユを抱く腕に力を入れる。
 マルセイユは身じろぎ一つしなかった。体から力を抜き、体重をすべて、クルピンスキーに預けている。
「お前しかいない」
「知ってる」
「お前だけいればいいよ」
「うん。私も」
「嘘つき」
 瞼を閉じ、まるで眠っているように、二人は言葉を交わす。
「どうして?」
「お前はよく出かける」
「浮気はしてないよ」
「私はお前がいればいい。だからずっと家にいる」
「でも、私が出かけないと食べる物も水も、なくなっちゃう」
「私がいなくても、ちゃんと生きてけるじゃないか」
 静かな口調。囁くように、か細い声。
「無理だよ」
 クルピンスキーの声。凛としていて、不思議と安心出来る、優しい声。
「ティナがいるから、私は生きてるんだよ」
 数瞬、二人は黙った。それからマルセイユが、自分を抱く腕にそっと手を重ね、
「何人に言ったんだ、それ」
 目をつぶったまま、くすくすと笑みを漏らす。
「数えたことないよ」
「本当に?」
「うん。だって、初めて言ったんだもの」
「……やっぱりお前は嘘つきだ」
「本当なのに。信じてくれないんだ?」
「証拠がないからな」
「その逆って証拠もないくせに」
 くすくす。くすくす。
「なぁ、伯爵」
「うん」
「私、ずっとこのままがいいな」
「そうだね」
「やっぱり、お前のほうが先に死ぬのかな?」
「んー……。私はティナより後がいいな」
「どうして?」
「ティナが死んじゃうまで、ずっとしわくちゃになった手を握っててあげる。眼を閉じる時、おやすみって言ってあげるんだ」
「そしたらお前は自由の身ってわけだ」
「んーん。そしたら、私もすぐに死んじゃうんだよ。糸が切れた人形みたいに、ぜんまいの切れた時計みたいに」
「できっこない」
「出来るさ。私はティナより年上だから」
「意味がわからない」
「そうかな。ティナより早く寿命が来るんだよ。それから待ってる。ティナが死んじゃうまでちゃんと」
 二人は手を合わせた。マルセイユの手の甲を包み込むように、クルピンスキーの手が握る。
「お前なら、本当にやりそうな気がする」
「やってみせるよ」
「じゃあ、約束だ」
「うん、約束」
 唇が触れ合う。
 そして、沈黙が訪れた。


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