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スオムス文庫 ハル・クル・ゲル-1-1『同級会』

「ふむ……、ハルトマン。これはどうだ?」
 そういってバルクホルンが差し出したのは、空色のワンピース。
「それはちょっと子どもっぽすぎるよ。フラウにはこっちの方が似合うと思うなぁ」
 バルクホルンを押しのけるようにして、クルピンスキーは手に持った服をハルトマンに重ねた。
 薄いピンクのシャツに黒のベスト、そして細めのネクタイ。鏡にうつった自分を見ると、確かにクルピンスキーの選んだものの方がいい。
 だが、折角バルクホルンが自分に合わせて選んでくれたのに、という迷いもある。
 ハルトマンが黙っていると、
「何を言う。そんな格好ハルトマンにはまだ早い」
「フラウも17だよ?丁度いいくらいだって」
 二人は何故か言い争いを始めてしまった。
「そもそも貴様が選ぶ服には品がない」
「トゥルーデの選ぶ服は少女趣味すぎるよね」
「なんだと」
「何かな」
 次第に取り返しの付かない感じになっていく二人。
 周囲を見回すと、皆一様に困った顔を浮かべながら、誰も声をかけられずにいる。
 それはそうだ。軍服を着た10代の少女といえば、ウィッチ以外にいない。
 常人に比べて規格外、さらにその中でもトップクラスの力を持つ二人の喧嘩だ。首を突っ込んで大怪我で済むかどうか。
 ハルトマンは溜息を吐き、
「私、もう服はいい」
 それだけ言って、店を出た。

「フラウ!ちょっと待ってったら、フラウ!」
 クルピンスキーとバルクホルンが、慌てて後を追ってきた。
「すまん、私たちが悪かった」
「今度は喧嘩しないからお店戻ろう?ね、フラウ」
 なだめるようにクルピンスキーが言う。
「もういい、っていうか、服がほしいなんて一言も言ってないんだけど……」
 今日は非番だから一日寝ていよう。そう思っていたのに、突然現れたクルピンスキーは、
「服買ってあげるから一緒に行こうよ!」
 そしてバルクホルン共々連れ去られ、何故か服を勝ってもらうことになっていた。
「だって久々に会ったんだし……」
「っていうかなんでここにいるのさ?」
「オ・シ・ゴ・ト。まぁ、正確にはラル隊長にくっついて来ただけだけど」
「どうせ無理矢理だろう。ラルも断ればいいものを……」
 バルクホルンの言葉に、クルピンスキーが笑を浮かべたまま振り返った。
 ああ、ダメ。また喧嘩が始まる。
「あー、その、久々に会えたのはうれしいけどさ。喧嘩は嫌だよ」
 ニヤけた口から挑発の言葉が出るより早く、ハルトマンは釘を差した。
「フ……フラウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!」
「うわっ!?」
 がばっと抱きついてくるクルピンスキー。そのまま頬ずりしつつ、
「こいつめ!こいつめ!かっわいいこと言っちゃってもう!!!」
「ちょっやめてったら!」
 ハルトマンがもがいても、ビクともしない。
「フラウウウウッ」
「ちょっこらーっ!!!」
「な、な、何をやっているんだ貴様ら!こんな往来で……!!」
「怒る暇があるなら助けてよトゥルーデ!?」
「フラウー!どうしてそんなに連れないんだいフラウー!!!」
「ええい、貴様ら!!そこに直れー!!!」
 ゴンッ。ガスッ。
「「痛ァ……」」
 ハルトマンとクルピンスキーが声をハモらせ、頭にできたたんこぶを抱えた。
「っていうかなんで私まで殴ったのさトゥルーデ……」
 納得行かない、という口調でハルトマンが抗議するも、
「両成敗だ!」
 と、まぁ、バルクホルンはにべもない。クルピンスキーはクルピンスキーで、全く懲りた様子もなく、
「ちょっとしたスキンシップじゃないか。これぐらい普通だよ。ねー、フラウー」
「えっ。いや、私はちょっと……」
「そ、そんな……!フラウが反抗期だ……」
 などと大げさに崩れ落ちている。
「まったく……、変わらんな、お前は」
 そんなクルピンスキーに、怒っていることも忘れ、バルクホルンは呆れた顔を浮かべていた。
「私が変わってたら寂しいでしょ?トゥルーデも、フラウも」
「すぐ調子にのるところくらい、変わってくれても良かったんだが」
 と、その時。バルクホルンの溜息をかき消す勢いで、誰かの腹の虫が鳴り響いた。
「……あ」
 顔を赤くするハルトマン。
「あれ、二人ともお昼まだなの?」
「……誰のせいで私とハルトマンが食いっぱぐれたと思っている?」
「じゃ、どっかで適当に食べよっか。トゥルーデのおごりで」
「何だと!?」
「洋服屋じゃフラウに迷惑かけちゃったし、当然じゃない?」
「くっ。……いや、待て。お前の分を払う言われはないぞ」
「たまには部下におごってくれてもバチは当たりませんよ、大尉殿」
「中尉。貴様も本国へ帰れば大尉のはずだが」
「それを言ったら君は少佐でしょ。さ、私もお腹減っちゃった。フラウは何がいい?え、パスタ?いいね、私も久々にロマーニャのパスタ食べたくって」
「こ、こら!待たんか!」
「デザートにはジェラート?良いね、そっちもトゥルーデがおごってくれるって」
「おい!!」
「……私、何も言ってないんだけど」
 ハルトマンは苦笑しながらも、クルピンスキーに背を押されるまま、細い足を動かした。

 食後、3人は橋の欄干にもたれかかり、流れる川を見ながらジェラートを食べていた。
「トゥルーデご馳走様」
 にやにやと言うクルピンスキー。結局デザートまでおごらされたバルクホルンは渋い顔だ。
 ハルトマンはずっとこの2人が喧嘩しださないよう見張り続け、正直へとへとである。
 ストロベリーの甘さが疲れた体に染みるようでなんとも言えない。
「いやぁ、でも、今日はここに来てよかった、よ……?」
 ボコンッ。
 少し間の抜けた音がした。
 横を見ると、石造りの欄干に寄りかかっていたはずのクルピンスキーが、ゆっくりと川へ落下していくところだった。
「お、おい!!?」
 魔法を発動し、犬耳を生やしたバルクホルンが慌ててクルピンスキーの足首をつかみ、そのバルクホルンの腰をハルトマンが抱きとめた。
 壊れた欄干が川に落ち、大きな水しぶきを上げる。船頭が驚いた様子でこちらを見あげた。
 流石のクルピンスキー慌てたらしく、
「ち、ちちちちちょっと、トゥルーデ!早く引っ張り上げて!?」
「そ、そうは言うが、足場が……!」
 欄干が壊れた際に散らばった石の破片で、足場が安定しない。ずるずると、少しずつ川へ引き寄せられていく。
 落ちる!
 そう思った瞬間、ハルトマンは叫んでいた。
「トゥルーデ!伯爵を上に投げて!」
「よ、よし!おりゃあああああああ!!!!!」
「ちょっ……!?なにー!!!!?」
 悲鳴に近い声をあげながら、クルピンスキーが空に舞い上がった。ストライカー無しでこの高度は、クルピンスキーをして初めての経験である。
「トゥルーデ!?受け止めてよ!?トゥルーデ!!?」
 上昇が止まり、すごい勢いで落下し始めるクルピンスキー。
 投げた拍子で仰向けに転んでいたバルクホルンとハルトマンは、なんとか体制を立て直し、クルピンスキーの落下地点へと走る。
「遠くに投げ過ぎじゃない!?」
「バカ言え!あんな体勢で力加減なんか出来るか!」
 走る、走る、走る、はし……。
 どかぁん。
 間に合わなかった。

「二人とも、ちょっとひどいよ……」
 ずぶ濡れのクルピンスキーは陸に上がるや、口を尖らせて抗議した。
 シールドを張れるのだから、クルピンスキー自身が激突の衝撃で怪我をすることはない。もっとも、橋が同じように耐えられるかどうかは別問題であり、敷石に大穴開けた挙句、川に落下することになってしまったのだが。
「このシャツ新しいやつだったんだよ、もう……」
「あー、そうだ」

「服買ってあげるから、一緒に行こうよ!」


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