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ひとりの時間

 そわそわ。
 珍しく午前中から起きているエーリカは、先程から何度も部屋と離着陸場を行ったり来たりしながら、ぶつくさとしきりに何かを言っている。
 落ち着かない理由はまさにその呟きの通りで、
「遅い……。遅い……。お昼には来るって言ってたのに……」
 正午はとうに過ぎ去って、もうすぐ3時。このままでは夕方になってしまう。
 最初は遅刻を怒っていたエーリカだが、今はただ心配である。事故なんて、どこでも起こりえてしまうものなのだから。
 滑走路の先に目を凝らしつつ、ミーナに言って捜索隊の手配をしてもらおうか?そんなところにまで、考えが行き着いた。ちょうど、その時。
「遅くなってごめんなさい、姉さま」
 待ち人が現れ、後ろからエーリカを抱きしめた。
「ウルスラ!?」
 エーリカは振り返ろうとしたが、ぎゅっと抱きつかれて身動きがとれない。
「はい」
「遅いじゃんか!」
 抱きついたウルスラをどうにか引き剥がし、エーリカは向き合った。
 顔から足まで何度も目をやって、怪我がないことを確かめる。そして、
「よかった」
 そう呟いて、今度は自分から、ウルスラを抱きしめた。
「ごめんなさい、姉さま」
 ウルスラも優しく抱き返す。二人はお互いの肩に鼻を埋めるようにして、再会を喜んだ。
「遅れるなら遅れるって、連絡してよ」
「まさか、こんなに遅くなるとは思わなかったから……」
「何してたの」
「ちょっと寄り道を」
「私に会うより大事な用事?」
「そんなわけ、ない。姉さまは意地悪です」
 これが意地悪だというのなら、遅刻した罰だ。エーリカはそう思った。
「それにしても、姉さまがあんなに慌てた声を出すなんて。とてもひさしぶりに聞いた気がします」
「ウルスラが心配させるから」
 エーリカの拗ねた声に、ウルスラは小さく笑い、抱く腕に少し、力をこめた。
「本当は、お昼より前にロマーニャに着いていたんです」
「嘘つき。私は朝からここにいたんだぞ」
「わがままを言って、別の基地に降りてもらったんです。その、ロマーニャの街に行きたくて」
「ここに着いてからだって、行けるじゃんか。どうしてそんな、心配かけるようなことしたの」
 ウルスラは黙った。そしてそっと、腕を離す。エーリカは不安気に、ぎゅうっと力を込めて、ウルスラを抱いた。
「姉さまと合う前に、買っておきたかったから。その、プレゼント」
「いらない。いらないよ、ばか」
 プレゼントより、早くウルスラに会いたかった。
「私は欲しい。姉さまからのプレゼント、欲しいです」
「あるに決まってるじゃん、ばか……」
 くすり。再びウルスラが笑った。エーリカも、つられて笑う。
「姉さまったら」
「ウルスラのよくばり」
 二人はぐりぐりと額を寄せ合いながら、笑いあった。いつの間にか、ウルスラの腕がまた、エーリカの腰を抱いている。
「ウルスラ」
「はい」
「おめでと」
「姉さまも、おめでとうございます」
「うん」
 どちらからともなく、唇を合わせた。
 誰かが見ていたって、気にしない。今日くらい、周りだって見て見ぬふりをしてくれるだろうから。
 今はエーリカとウルスラの、『ひとり』の時間だった。

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テーマ : 自作小説(二次創作)
ジャンル : 小説・文学

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