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エイラのナイトウィッチ訓練録その1

『エイラのナイトウィッチ訓練禄』

 1945年秋。エイラは単身、パリを訪れていた。
 大きな鞄を引きずずって向かったのは、第506統合戦闘航空団、通称ノーブルウィッチーズが基地とする古城。
 当然、物見遊山の旅行などではなかった。
 古城の石畳に降り立ったエイラは、先程まで自分が乗っていた輸送機を振り返る。
 夕日に照らされた大きなシルエットは、ハンシン・ユッカ号という。かのマンネルヘイム元帥の移動にも使われる、スオムスにたった1機の特別な輸送機。
 VIP待遇だな。
 エイラはそんな冗談を思い浮かべ、くすりと笑みを漏らした。
 エイラが特別な人間であることは、まぁ、その通りなのだが、だからといって元帥クラスのVIP待遇がなされるはずがない。
 今まさにハンシン・ユッカ号から下ろされている補給物資のひとつとして、エイラはここに来たのだ。

「エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉到着しました」
 これを言うのは本日二度目だ。
 最初に言ったのは、”名誉”隊長に挨拶をした時。今は”戦闘”隊長に挨拶をしている。
 どうもこの部隊の指揮系統は特殊なようで、エイラの挨拶を受けた名誉隊長のグリュンネ少佐は、
「私は事務仕事一辺倒でね、実質的な隊の運営は戦闘隊長のウィトゲンシュタイン大尉に一任してあるの。彼女にも挨拶しておいてくれるかしら」
 そう促した後、
「ナイトウィッチだけど、まだ自室にいるはずよ」
 手元の書類を忙しそうに手繰りつつ、少佐は付け加えた。
 そういうわけで、エイラは早々に戦闘隊長の部屋を訪ねたのだった。
「ハインリーケ・プリンツェシン・ツー・ザイン・ウィトゲンシュタイン大尉だ」
 小柄な戦闘隊長は鷹揚に頷くと、品定めをするような視線でエイラを見た。
「ふむ。貴様がユーティライネンか」
「……なんだよ」
 気の強そうな目が楽しげに細められる。
「いや?リトヴャクから話を聞いていたからな。どんな奴かと思っていたが」
 口元に閉じた扇を当て、にやにやと笑う。
 エイラはむっとした。
 最初から態度がデカい上、不躾にじろじろと眺め回した挙句にこのにやにや笑いだ。
「まぁ、よい。貴様には早速、わらわと一緒に飛んでもらう」
「……今から?」
「今から。本望であろう?わざわざスオムスから、ナイトウィッチの訓練を受けに来たのだから」
「べ、別に私から来たいと言ったわけじゃないぞ」
「ふふん。聞いているぞ。ロマーニャにいた頃は、ナイトウィッチになりたいと訓練してたそうじゃないか」
「な、何故それを……」
「リトヴャクは貴様の事を喋りだすと止まらんからな」
「ほ、本当か!?」
「嘘だ。貴様の母国から届いた資料にそう書いてあった」
 がっくしと肩を落とすエイラ。
 このウィトゲンシュタイン大尉、かつては刺々しい事この上なかったが、この頃は冗談も言うようになったらしい。
「さぁ、飛ぶぞ。さっさと準備をしろ。貴様の腕を見てやろう」

 サーニャのいない夜間哨戒に、まったくと言っていいほど魅力を感じないエイラではあったが、ウィトゲンシュタインの要求にはしっかりと答えてみせた。
 最初はどこか小馬鹿にしていたウィトゲンシュタインも、
「……ほう、やるではないか」
 そう言ったっきり、からかうのをやめてしまった。
 そこからはウィトンゲンシュタインが短く指示を出し、それをエイラが実行するという、なんとも眠くなるような飛行になってしまった。
 そのまま会敵せず、無事に哨戒を終えた2人は、朝日を背負って基地へと帰投した。
「ふぁ……」
 自室に着くなり、ウィトゲンシュタインはばさばさと服を脱ぎ捨て、ベッドに飛び込んだ。
「お、おい!」
 突然目の前で下着一丁になられ、エイラは狼狽した声を上げる。だが、ウィトゲンシュタインはどこ吹く風、
「わらわはねる……。かたづけておけ……」
 そう言ったっきり、静かな寝息を立て始めてしまった。
 なんとなくデジャヴュを感じる光景である。
「ナイトウィッチって、みんなこうなのか……?」
 脱ぎ散らかされた衣服をたたみながら、エイラはボソっと呟いた。

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テーマ : 自作小説(二次創作)
ジャンル : 小説・文学

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