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渇いた私


 ビューリングは笑みを浮かべた。
「今日はあいつが私を庇って死んだ日だ」
 自嘲。後悔。懺悔。悲哀。寂寥。そんな感情がないまぜになった、歪な笑み。
「毎年、この日になると思い出す」
 窓の向こうは暗闇。ランプに照らされたビューリングの顔に、智子の胸は締め付けられた。
「夢に見るんだ。あいつが私を眠らせてくれない」
 頑なに目を合わせようとしないビューリング。泣いているのだと、智子は感じた。からからに乾き切った心は、涙を流さない。
「あいつは早く来いと言っているのかもしれないな」
 智子は無言で、ビューリングの手を握った。
「行った方が楽になれる。そんなことはわかっている。その反面、まだ行きたくないと足掻く私もいるんだ」
 浅ましいだろう?ビューリングは自嘲した。たまらず、その頭を抱き寄せた。
「あたたかいな」
 ビューリングは気持ち良さそうに目を細めた。そして。
「明日からはいつも通りの私に戻る。だから、頼む。今夜だけ……」
 そっと、智子を押し倒した。

 唇を重ねた。
 最初は紳士的……、いや、淑女的に。
 三度、重ねるだけのキスをした。
 智子の口が開く。
 上品な仮面を被っていたのは、そこまでだ。
 ビューリングは舌をねじ込んだ。
 智子が身体をこわばらせ、苦しそうに息を吸おうとする。
 しかし、それは許さない。ビューリングが口をぴったりと押し付け、塞いでしまった。
「んんっん……っ」
 くぐもった智子の声が、ビューリングの口の中で虚しく響く。
 本当に苦しそうだ。必死に鼻で呼吸をしているが、ぜんぜん足りていないのだろう。
 ビューリングは口を離し、少しだけ息を吸わせてやることにした。
「っは、ぁ……はぁ……」
「我慢しろ」
「ま、待っ……んッ……!」
 何かを言おうと口を開けた智子の口へ、再び舌を突っ込む。
 ビューリングは両手でがっしりと智子の頭を掴み、口内を隅から隅まで舐めまわした。上顎、下、歯列、頬。全てだ。
 快楽に弱い智子に抵抗できるはずもない。ベッドに身体をぐったり横たえながら、時々弱々しくビューリングの身体を押すのが精一杯だった。
 それを良いことに、ビューリングは肉を貪るケダモノのように智子を蹂躙する。
 お互い口の周りは唾液だらけ。それも、すっかり混ざり合って、どちらのものともしれない。
 どれくらいそうしていただろう。
 いくら貪っても足りないくらいだったが、夜は短い。他のところも、味わいたい。
 ビューリングは再び、唇を離した。
 胸を上下させながら、ぐったりと仰向けになっている智子。ビューリングは膝立ちで、満足そうに見下ろした。
「脱がすぞ」
「や、やだ……」
 構わず、ビューリングは智子の服に手をかけた。智子は口でいやだ、いやだと言いながらも、抵抗らしい抵抗はしない。ビューリングら手際良く脱がしていき、あっという間に一矢まとわぬ姿にしてしまった。
 目の前に広がる光景に、ビューリングは唾を飲み込んだ。
 白い肌には昂奮で紅が差され、うっすらと引かれた汗が光を反射している。それに白く形の良い乳房と、桃色の先端。なだらかで、幼なさを残した恥丘。未熟と成熟の丁度真ん中、絶妙なバランスを保持した智子の肉体は、震えが来るほどに美しく、扇情的だった。
 ビューリングは自分も服をぬごうか迷った。自分の身体は、智子ほど美しくはない。それどころか痛々しい傷痕があちこちに見られ、醜くすらある。
 逡巡の末、ビューリングも服を全て脱ぎ去った。醜いモノが、美しいモノを犯す。なんとなくそれも良かろうと思えた。
 智子に覆いかぶさり、目を覗き込んだ。その瞳は潤み、熱を持っている。智子も興奮しているのだ。
 ビューリングは白い首筋に口を付けた。強く吸って、離す。同じ場所に同じコトを三度繰り返した。そこには赤い痕が残っている。
 花びらみたいだ。
 そう思いながら、別の箇所にも口をつけていった。智子は僅かに呻きを漏らすだけ。
「あっ……」
 熱っぽい声が出たのは、ビューリングの掌が乳房に触れたときだ。
 首筋や鎖骨へ痕を残しながら、包み込むように乳房を撫でる。硬くなった乳首がこすられるたびに、智子の口からは喘ぎが漏れた。
「や、やっぱりだめ……」
「何故?」
「はずかしい……」
「始めてじゃないんだろう?」
 ナイフで切りつける様な、冷たく鋭い声音。普段通り言ったつもりだったのに。一番動揺したのは、声を発したビューリング自身だった。
「で、でも、こんな風にされたことなんて……」
 怯えたように身を硬くする智子。ビューリングの胸中は苦い思いで満たされた。
 このまま強引にやってしまおうか……。冥い欲望が、ビューリングを誘う。
「ハルカたちはいつも、もっとわけがわからなくしてくるから……」
 何故そんな言い訳じみたことを言うんだ。
「強引にされる方が気持ちがいいのか。意思を無視して、なにもわからなくなるように、ぐちゃぐちゃにされるのが」
 今、ナイフを持っていなくてよかった。愛用のグルカナイフは、脱ぎ捨てた服といっしょに床に転がっている。
 もし手元にあったら?
 考えたくもない。きっと自分は獣のように、智子を滅茶苦茶に食い荒らしてしまうだろうから。
「ちがう」
 日頃の凛とした声とは程遠い、蚊の鳴くような声。智子は涙に潤んだ瞳でビューリングを見つめながら、回らない口で懸命に何かを言おうとしている。
「ハルカたちは、優しくないから……。だから、優しくされたことなくて、その、わからないの。私、知らないの」
「また、ハルカか」
 ビューリングは泣き出しそうなほどの嫉妬を感じた。
 確かに一人でいたくはなかった。だが、一緒にいてくれさえすれば誰でもいいわけじゃない。
 智子だから、智子が一緒にいてくれると言ったから、だから自分は……。
「……嫌なのか」
 情けない。きっと、捨てられた犬のような顔をしているんだろう。本当に情けない。
「ちがう。だから、私は……」
「もう、沢山だ。お前をあいつらに掻っ攫われるのも、お前が惚れっぽいのも」
 智子は目を逸らした。
「好きじゃないくせに……」
「……何?」
「好きじゃないくせに、なんでそういうこと言うの」
 ビューリングは血が冷えるような感覚を覚えていた。怖い?違う。怒りだ。自分は怒っている。どうして。
「今夜だけなら、もっと好き勝手やってよ。ハルカたちみたいに。明日には忘れるわ」
「……好きじゃないなんて、いつ言った?」
「え?」
 ビューリングは智子の口へ、自分の口を押し当てた。舌も挿れず、触れるだけのキス。なのにそれは、不思議と智子の口を封じてくれた。
「好きでもないやつに、あんなこと言えるか」
 口を離し、激した心を抑えながら、ビューリングは一言一言を慎重に選んだ。
「お前だから一緒にいて欲しかったのに」
 智子が息を呑んだ。
「嫌がることはしない」
 押し倒したのは、智子は嫌がらない。そう確信できていたから。だからこそ、拒否されたのが悲しい。辛い。苦しい。
「私は自分勝手だ。でも、トモコが嫌がるなら」
 最後まで言えなかった。
 智子の口がビューリングの口を塞ぎ、それ以上続けさせなかった。首の後ろに回された腕が、身を起こそうとするビューリングを引き寄せる。
「……トモコ?」
 開放された口から出た声は、驚くほど間が抜けていた。
「……悪かったわよ」
「な、なに?」
「ちょっと気分出しちゃっただけよ」
「気分?」
「……それより。それより、あなたは私のことが好きなの」
「それは」
 言葉に詰まる。さっきは激昂した勢いだったから言えた。一度冷静になると、すごく、言いづらい。
「聞きたい。聞かせて」
「それは……、ええと、好き、だ……」
「そう」
 智子は微笑むと、再びキスしてきた。ビューリングは固まったまま、それを受ける。
「なら、私も覚悟決めるわ」
「覚悟……?」
「そうよ。今夜だけじゃない。ずっと隣にいる」
 ビューリングは唾を飲み込んだ。喉が渇く。そして、空腹感。何に渇いていたのか、何に飢えていたのか、ようやくわかった。
 今すぐ智子を抱きしめたい。唇を奪って、手を握りたい。欲しい。智子が。
「その代わり、勝手にどこかに行くのは許しません。いい?」
「……っ」
 頷いた。何度も何度も。言葉が出ない代わりに、必死に頭を振る。頬を伝う水滴が飛び散った。温かい。でも、なんだろう、これは。
「枯れてなかった」
 智子の微笑みが滲む。何故?見たいのに。智子の笑顔を、今は見ていたいのに。
「忘れてたんでしょ?涙流せるなんて」
 涙?私は泣いているのか。
 智子の指が目元を撫でた。
「トモコ」
 声は震えていた。情けない。でも、恥ずかしいとは思わなかった。
「泣いて、いいか」
 智子は黙って、震えるビューリングを抱きしめた。


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テーマ : 自作小説(二次創作)
ジャンル : 小説・文学

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