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思い出の悲劇


「うわ、懐かしいなー、これ……」
 エイラは先日ようやく故国からとどいた衣類のなかに、懐かしい服が紛れ込んでいるのを見つけた。それは水色のワンピース。小さい頃に着ていたものでお気に入りだった。ここ数年はその存在をすっかり忘れていたが。
 昔は、それこそ小さい頃の話だが、まるで天使のような愛らしさと言われたものだ。母だけでなく、活動的な姉まで一緒になって、エイラに可愛い服を着せようと躍起になった。エイラ本人は、動きづらい服はあまり好きではなかったが、褒められるのは悪い気がせず、なんだかんだでされるがままになっていた。
「今でも着れたりすんのかな、これ」
 かつて特にお気に入りだった一着を、目の前に広げながらつぶやく。キツそうだが、入らなくはない、気もする。エイラは周囲を確かめた。サーニャは夜間哨戒に出かけた。つまり、この部屋には自分一人……。
「……よし!」
 エイラは勢いよく軍服を脱いだ。続いてシャツを脱ぎ、タイツ状の白いズボンも脱ぎ去って下着姿になった。きつい服を着るのだから、出来る限り薄着のほうがいい。下着も取り払うか迷ったが、流石にそれは不味いだろう、色々と。
「……っと、入る、かな。流石にきつい……。もうちょっと、もうちょい、ちょい……、入った!」
 急ぎ、鏡の前へ行く。
「うわ、なんかぴっちりしててやらしいな……」
 身体を締め付けるワンピースは、エイラの身体のラインをくっきりと出していた。胸は押し上げられて袋のように膨らんでいるし、腹から腰にかけてのくびれは思わず撫で回したくなる。裾はやや肉づきの薄い尻の上に乗っかっていた。
「流石に、色々無理があんな……」
 見た目的にも、キャラ的にも。
 脱ごうと、裾に手をかけた。まさにその時。
「エイラ、いるか。ちょっと頼みたいこと、が……」
「え……」
 ノックもなしに乗り込んできたバルクホルンが、部屋に半歩踏み込んだところでエイラの格好を見て、動きを止めた。そして目を見開いて叫んだ。
「……クリスッ!!!」
「違えッ!!」
「アリスッッッッ!!!!!」
「意味わかんねーよ!?」
 エイラのツッコミで、バルクホルンはハッとした表情を浮かべ、
「すまない、私としたことが興奮してしまったようだ……」
「じゃあまず、三歩下がってドア閉めてくんないか……。着替えたいんだ」
 いいだろう。そう呟いたバルクホルンは三歩”進んで”扉を閉めた。
「……いや、出てけよ!」
「それにしても、その破廉恥な格好は感心しないな、お姉ちゃん」
「誰がお姉ちゃんだ!?」
「とにかくほら、脱がせてやるからこっちにこい」
 そう言って、手をさしのべるように近づいてくる。エイラは後じさった。
「自分で脱ぐからでてけ、よ……っ!?」
 唐突に、バルクホルンの手が、風を切ってエイラに襲いかかる。身を伏せてそれを回避したが、サイズのきつい服が邪魔をして危うく捕まるところだった。
「あっっっっぶねーな!?」
「まったくだ、部屋の中で暴れるなといつも言っているだろう」
「それ言ってる相手私じゃねーから!」
 エイラは扉を開け放ち、部屋から走り出た。非常に恥ずかしい格好だが、やむを得ない。体力勝負になったら勝ちようがないのだ。なんとかして、なんとかしなければ。
 後ろを振り返ると、バルクホルンがすごい勢いで追いかけてくる。エイラは恐怖で混乱する頭を必死に動かして、対抗策を考えた。
「……そうだ!」
 カドを曲がったところで、バルクホルンをやり過ごす。そうしておいて、エイラはある部屋に乗り込んだ。
「ええ、エイラさん!?なんなんですか、その格好!?」
「しっ!静かにしろ!……今いるのは宮藤だけか。丁度いい」
 部屋の主は宮藤だった。幸い、ペリーヌとリーネは席を外してるらしい。エイラは服を脱ぎだした。
「ええー!?な、なななななにやってるんですか!」
「いいから静かにしろって!……くそ、脱ぎにくいな」
 苦労しながら、エイラはなんとか下着姿になる。そして脱ぎ終わったワンピースを宮藤につきつけると、
「これを着ろ!」
「は、はい!?」
「いいから、今すぐにだ!」
 渋々、宮藤は袖を通し始めた。
「そこにいるのか、エイラ!」
「ひぃっ!き、来た……!?」
「この声、バルクホルンさん……?」
 何かしたんですか、と言いたげな目でこちらを見る宮藤。
「何もしてねーよ。……よし、着たな」
「ええ……って、エイラさんなにやってるんですか……」
 もぞもぞと、エイラはふとんに潜り込んでいるところだった。
「シッ!いいから、私はここにこなかった……!あと、大尉が来たらお前が応対するんだ。いいな!」
「はぁ」
「わかったな……!」
「わ、わかりました」
 釈然としないながらも宮藤は頷いておいた。時折突拍子も無いことをやってのける上官に囲まれたおかげで、それなりの処世術というものをみにつけたのだった。
 扉がノックされた。エイラ入りの布団の饅頭が、びくりと震える。
「入るぞ」
「あ、はーい!」
 宮藤は指示通り、扉を開けた……。
「えっ!?ちょっ!?バルクホルンさん!?なにするんですか!離してください!何処に連れていくんですかぁ!?バルクホルンさーん!!!?」

 ……やがて静かになった。
 エイラは恐る恐る布団の中から顔を出し、誰もいなくなったドアに向かって、
「ごめんな、ミヤフジ」
 祈りを捧げるような声音で、呟いた。

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