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Strike Witches 1947 - Cold Winter - 前編

Strike Witches 1947 - Cold Winter -

 解放されて三年。ガリアは失った栄華を取り戻しつつあった。人々は皆平和を歌い、復興に励んだ。かつて隆盛を誇ったこの国は、再び活力を取り戻しつつある。
 扶桑皇国欧州駐在武官、坂本美緒中佐はその首都パリに立っている。
 髪を降ろし、眼帯を外した今の彼女は、以前より遥かに洗練された雰囲気をたたえていた。
 冷たい風が黒髪を持ち上げる度、通りかかった人間は好奇の目を向ける。見慣れぬ東洋人だからというだけでなく、今の坂本には、人を振り向かせる妖しい魅力のようなものがあるのだった。
 そんな外見の変化に本人はまったく頓着せず、今彼女の脳内を占めているのは、与えられた任務のことだ。
 腕を組み、壁に寄りかかって思案する坂本の前で、誰かが立ち止まった。
「お久しぶりです、坂本中佐」
「来たか」
 目の前で敬礼した男を、坂本は待っていた。土方圭助。かつて坂本の従兵を務めていた男。戦友のウィッチ以外では、坂本が唯一信用できる人間と言っていい。
「急に呼び出してすまんな」
「いえ、中佐のお声掛りであれば、例えどこへであろうとも」
「助かるよ」
 土方が微笑み、坂本はつられて小さく笑った。
「休暇ということにして来い、とのことでしたが……」
「歩きながら話そう」
 坂本はついて来いと促し、歩き始めた。
「まずはこれを見てくれ」
 土方は差し出された写真を受け取り、驚きに目を見張った。
「これは……!」
 写真には、人型の何かが写っている。……ネウロイだ。忘れもしない、三年前。この地、ガリアを解放する戦いにおいて坂本たちが戦った、人型のネウロイ。微妙に形状は異なっているが、見紛いようもない。
「その手前も見ろ」
 坂本に言われ、土方は視線を移した。どこか見覚えのある、白人の男。背後のウィッチ型のネウロイより幾周りか小さく、断然影が薄いために見落としていた。
「この男、たしか、マロニー元空軍大将の……」
「ああ、副官だった男だ」
「なぜ、ネウロイと一緒に?」
「わからん……。それも調べなくてはなるまい」
 坂本の表情は厳しい。土方は状況が容易ならざるものだということを悟った。
「発端は一ヶ月前、ガリアのウィッチ養成学校が襲撃を受けた事件だ。たった一体のネウロイによって、養成学校は壊滅。それから続けざまに、ウィッチの在籍する空軍基地や各地の養成学校、果ては軍病院まで、ウィッチと関わりのある施設が立て続けに襲撃を受けた。どのケースでも唐突に現れ、圧倒的な火力で攻撃し、ほとんど証拠を残さずに去っていったらしい。結局、目的も逃げた先もわからず仕舞いだ」
「証拠どころか足跡すらつかませないというのは、あまりにも不自然では?」
「ああ。どうやら協力者がいるらしい。それも軍の上の方に」
「敵は、この写真の男だけではない……」
「むしろ、その背後こそが本当の敵なのかもしれん。調査は慎重に進めなければ危険だ」
「……なるほど。それで、私が呼ばれたのですね」
 土方の胸が熱くなった。自国の軍上層部ですら信用出来ないこの状況で、坂本は自分をここまで信用してみせたのだ。それに応えずして、なんの扶桑男児か。
「やってくれるか、土方」
「はっ!お任せ下さい!」
 坂本は顔をほころばせ、満足気に頷いた。
「助かるよ。お前は、独自に調査を進めてくれ。私は監視されているだろう。邪魔が入ってばかりで真相へは遠回りせざるを得ん。頼りにさせてもらうぞ」
「力を尽くします!」
 別れ際、坂本は付け加えた。
「それとな。襲撃された施設の一つに、扶桑皇国のウィッチが数人滞在していた。陸軍から、合同訓練のために出張っていたらしい。幸い、ここは被害が軽くて済んだが、後でこちらのウィッチから話を聞いてみるといいだろう」

 土方はまず、マロニーの副官だった男の事跡を辿った。
 しかし、結果は芳しくない。ブリタニア軍を去った後の足跡がぷっつりと途切れているのだ。この事件で表に出なければ、その生死すらわからなかっただろう。とにかく不自然な途切れ方をしていて、誰かが意図的にこの男の経歴を隠し、匿っているとしか思えない。
 この男に関係すると思われる記録の不自然な点を洗い出し、それを他の記録と照らし合わせて補完する。気の遠くなるような作業だが、土方は粘り強く取り組んだ。この細い糸一本しかないとなれば、それにすがらざるをえないのだった。
 そうしていくうちに、一人の扶桑人が浮上した。数年前突然失踪したとされる陸軍のエース、諏訪真寿々だった。何故かはわからないが、失踪した後も度々ここガリアで目撃されていたらしい。
 この二人の関係を示す証拠はほとんどなかった。幾つかの線が、偶然ニアミスを起こしているだけかもしれない。しかし、何かが引っかかるのだ。
 土方は坂本から預かった写真を取り出した。ブリタニア人の背後に、幽鬼のように立つ人型のネウロイ。諏訪真寿々の写真と並べると、どことなく似ているように感じられる……。
「……いかんな」
 土方はペンを置き、くしゃりと髪を握った。
 決めてかかるのは危険だ。まだ事件の全貌どころか、端緒すら掴みきっていない。
 それに、もう一つ気にかかることがある。ウィッチに関連する施設ばかりが襲われていることだ。他にも軍施設は多々あるというのに、ウィッチのいる場所ばかりをこれ見よがしに襲撃する。まるでウィッチに対して挑戦しているようではないか。ウィッチなどよりも、自身の従えたネウロイの方が余程戦力となるとでも、言いたいのか……。
 唐突に、土方の背を悪寒が走った。
 ガリア。マロニーの副官。人間によってコントロールされた人型のネウロイ。そして、坂本美緒。一連の襲撃事件は三年前を想起させではないか……!
「中佐!」
 土方は部屋を飛び出した。
 無事ならそれで良い。しかし、胃の底にわだかまる嫌な感じが、土方を走らせる。
 直接大使館へ向かうわけには行かなかった。表向き、土方は休暇を楽しむただの旅行者で、坂本に急の用事があるはずがないからだ。
 土方は坂本が用意した連絡手段を用いた。数名の人間を経由して手紙をやりとりするのである。中身は坂本と土方で相談して作った暗号だから、誰かに見られても内容が漏れる心配はない。問題は届くか否か、そして届くまでの速さである。
 集合場所に定めたバーの中を、土方はうろうろと歩き回っていた。二〇分、三〇分と時間が経過していく。探しに飛び出そうと思った土方の前に、ようやく坂本は現れた。
「土方?なにかわかったのか?」
「中佐!ご無事で……!」
「はぁ?何を言っとるんだ、お前は」
 店の隅のテーブルに腰掛け、適当な注文をすると、土方は怪訝な顔を浮かべる坂本へ経緯を説明した。
「復讐か。考えられることだが、今のところ標的はガリアの魔女だ。私を襲うというのは考え過ぎではないか?」
「ですが、万が一ということも有り得ます。中佐、私に護衛をさせてください」
「馬鹿を言え。東洋人が二人並んで歩くなど、目立ちすぎる。妨害を招くぞ」
「中佐の身の安全には変えられません!」
「自分の身くらい自分で守れる」
 土方は珍しく熱くなっていたが、坂本は至って平静だった。
「なぁ、土方。気持ちは嬉しいが、私とて元はウィッチの端くれだ。襲われたところで、一人逃げきるくらいわけもないさ」
「ですが……!」
「報告はそれだけか?ならば、私は帰るぞ」
 坂本は立ち上がった。
「中佐!」
「精精用心するさ。お前も気をつけろ、土方。下手な肩書きがない分、お前のほうが危険だぞ」
 坂本の後を追って、土方もバーを出た。土方はなんと声を掛けたものかわからず、しばし無言で雪の降る街を歩く。坂本も、もう一人で帰るとは言わなかった。
 唐突に、坂本が立ち止まった。土方も立ち止まる。
「……やはり、護衛は必要ですね」
 土方は冷たい汗がこめかみを伝うのを感じた。そして自身は拳銃を抜き、坂本も軍刀を抜きはらった。
「いいや、こいつが相手なら、お前が一個中隊いても無駄だろう」
 なんとか冷静さを取り繕う二人の前に立ちふさがっているのは、写真にあった、あの人型のネウロイだった。街灯をクロムメタルのボディが鈍く反射し、物も言わず、ただこちらを見つめるように立っている。
「どうしますか、中佐」
 拳銃を構えつつ土方は聞いた。
「決まっている!逃げろ!」
 魔力のない元ウィッチと、護身用の拳銃しか持たない男。対抗できるはずがない。
 二人は一斉に後ろを向き、全速力で走りだした。
 ネウロイは追いかけなかった。その代わり、ゆっくりと右腕を上げ、坂本に向けた。
「中佐!危ない!」
 土方の叫び声が木霊する。
 ネウロイの腕に光が集まっていき、弾けるように光弾が放たれた。坂本は寸前で回避する。しかし、光弾はうっすらと積もった雪を溶かし、その下の石畳を吹き飛ばした。その破片が襲いかかり、坂本はもろにそれを食らってしまった。
「ぐ、う……」
「中佐!!」
 地面に倒れ伏した坂本に、土方が駆け寄る。坂本は額から血を流していた。
「くそ……!」
 無駄と知りつつも、土方は拳銃を放った。弾倉が空にになるまで引き金を引く。すべてが命中し、そして全てが装甲に弾かれた。
「やはり、通常弾では……!」
 宙に漂うネウロイがゆっくりと距離を詰め、五メートルほどのところで止まった。そして再び、右腕が坂本に向けられる。
「くっ!!」
 土方は坂本を抱くようにして庇った。
「駄目だ、土方……!逃げろ……!」
 弱々しい呟きに、土方はより強く坂本を抱き寄せた。
「私はあなたの従兵です。あなたより後には死にません」
「よ、よせ、土方!ひじ……!」
 ネウロイの放った光が、二人に向かって放たれた。
 
 ネウロイの光弾が届く寸前、坂本らの前に円形の魔法陣が現れた。光弾が虚しく四散し、消え失せる。ウィッチのシールドだった。その主は金髪をなびかせながら、
「お引きなさい」
 高慢な声に殺気をのせて、ネウロイに言葉を投げかけた。
「わたくしと一戦交える気であれば受けてたちますわ。でも、それじゃああなたのご主人様が困るのではなくて?」
 ネウロイは答えない。
「お引きなさい。この御方には、指一本触れさせはしません」
 ふわり。ネウロイは空に舞い上がり、そのまま姿を消した。
 坂本と土方はぽかんとしたまま、そのやりとりを見ていた。
「坂本中佐、お怪我は?」
 ウィッチが坂本に駆け寄り、さりげなく土方から引き離した。彼女の名は、ペリーヌ・クロステルマン。階級は少佐で、現在は第五〇六統合戦闘航空団の司令を務めている。坂本とは第五〇一統合戦闘航空団時代に共に戦った仲だった。
「大丈夫だ。お陰様でな。……何故ここに?」
「先ほどのネウロイを追っていたのです。中佐がいらしているのは情報部から聞いていましたけれど、まさかこんな形でお会いすることになるとは」
「なるほど、な。だが良いのか?航空団の司令がこんなところに来て」
「仕方がありませんわ。国の命令ですもの。指揮は代理の者に任せてありますし、陰口くらいは我慢できます。それに、こうして坂本中佐をお救いできたのですから。そう悪いことばかりでもありませんわ」
「すまんな、本当に」
 差し出されたペリーヌの手を取って立ち上がりながら、坂本は詫びた。土方はまったく蚊帳の外である。
「お気になさらず。中佐の助けになれたのなら、本望ですわ」
 懐かしむように、ペリーヌは微笑んだ。
「やれやれ。お前といい、ミーナといい、土方といい……。私は迷惑をかけっぱなしだな」
「……ミーナ大佐?」
 ペリーヌの表情から、唐突に余裕が失せた。
「大佐とお会いしてらしたんですの……?」
「ん?ああ、結構前はしょっちゅう顔を合わせていたよ。色々と仕事について聞いていた」
「は、はぁ……」
 安心するやら、ミーナに同情するやら。ペリーヌはため息を吐いた。

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テーマ : 二次創作:小説
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