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一緒だね

 海の見える丘の上に、エーリカがぽつんと座っている。あぐらをかき、何を見ているのかわからない茫洋とした視線で水平線を眺め続け、飽きる様子もない。
 そこにシャーリーが通りかかったのは、全くの偶然だった。
「ハルトマンじゃないか」
「ん」
 シャーリーは意外なものを見た、という表情を隠さなかった。
「何してんだ、お前?」
「さぼってた」
「サボりってお前、今日非番だろ。……って、ああ。なるほど」
 途中まで言いかけて、シャーリーは得心がいったとばかりに手を叩いた。
「あの堅物に追い回されたわけだ」
「そんなとこ」
「次の休みは必ず掃除させる、とか意気込んでたもんなぁ、あいつ」
 だはは、と豪快な笑い声。
「シャーリーは?」
「ん?」
「シャーリーはなんでここに?」
「私も一緒さ」
「シャーリーも非番じゃん」
「だから一緒。休みの日まで堅物軍人の説教なんて、聞きたくないからなぁ」
 目を合わせ、2人は苦笑した。
 口には出さずとも、思っていることは一緒。抱いているやりきれなさだって、きっと一緒に違いない。
 そんなことを考えてしまうと、何だか去り難くなる。
 エーリカの隣にそっと腰を下ろした。草の感触が少しくすぐったい。
 しばし沈黙した後、シャーリーが口を開いた。
「なあ、ハルトマン。お前、あいつと遊びに行ったことってあるか?」
「……。クリスのお見舞いもカウントされる?」
 エーリカは相変わらず視線を水平線に向けたままだ。
「それはノーカン」
「じゃあ、ない、かな」
「ふーん」
「シャーリーは?」
「ん?」
「シャーリーはあるの?」
 ここで見栄を張って、あると言おうか。一瞬本気でそんなことを考えた。
 エーリカは恐らく、表情を変えないだろう。この場を立ち去ることもしない。ただ、衝撃は受けるだろう。
「お前がないのに、私があるわけないだろ」
 意地悪な一言の代わりに口から出たのは、苦笑を伴った、悲しい本音であった。
「よかった」
 エーリカが顔をこちらへ向けた。シャーリーと同じように苦笑していた。
「いっそ襲っちまおうか」
「蹴り出されるのがオチじゃない?」
「だよなぁ」
 とてもじゃないが、本気で抵抗されたら敵う気がしない。というか、それ以前に落ち込む。しばらく立ち上がれない。
「外堀埋めても気付かないからな、あのニブチンは……」
 2人は同時にため息を吐いた。
 息が合ってる。案外相性がいいのかもな。そんな冗談を言いかけて、もし惚れた相手がこいつだったらという考えが、唐突に脳裏をよぎった。
「……って、いやいや。待て待て私。おかしいだろ。つーか節操無さすぎ」
「なに?」
「え?あ、ああ、なんでもない。独り言」
「ふうん?」
「いや、ほんと気にするなって。なんでもないから」
 慌てて否定する様子が返って興味を引いたのか、エーリカは身を乗り出して、シャーリーに詰め寄った。シャーリーはと言えば、あんな事を考えてしまった直後だ。顔を赤くして、ちがう、ちがうと繰り返す。
「ねぇシャーリー?何が違うの?」
「いや、それはお前……。ああ、もう!いいから離れろって!」
 近付こうとするエーリカの肩に手を当てた。押し返そうと思ったのだ。
 だが、その肩は驚くほどに細く、力を入れたら壊れてしまいそうだ。あまりにも華奢すぎる身体に、シャーリーは力を入れるのを戸惑った。
(このほっそい肩震わして泣いてたりとか、すんのかな……)
 手に力が入らない。押し倒されるような形で、シャーリーは仰向けに寝転がった。
「よっこいせーっと」
 その上にエーリカが胸を枕にして、同じく仰向けで重なった。
「……なるほど」
 感心したようにエーリカが呟く。
「な、なんだよ」
「いいね、これ。ルッキーニがこうしてるわけだよ」
「お前なぁ……」
「で、なんだったの」
「何が」
「さっきの話」
 はぁ。シャーリーはため息を吐いた。
「下らないこと考えただけさ。あいつじゃなくて、お前に惚れてたらどうなってたかって」
「はは、なにそれ」
 笑われた。だから言いたくなかったんだ。エーリカはひとしきり笑った後、しみじみとした声で、
「でもさ、その方が上手く行ってたかもね」
 そう呟いた。シャーリーへのフォローだったのか、それとも同じことを考えていたのか。案外、後者だったのかもしれない。
「はぁ。帰るか」
「えー。折角いいベッドだと思ったのに」
「また今度付き合ってやるよ」
 シャーリーが立ち上がり、エーリカの頭がごろり芝生に落ちる。新緑の上に乗っかった金色が、なんだか元気をくれるようで。
「タンポポみたいだな」
「え?」
「なんでもないよ」
 そう言い残して、立ち去るシャーリーの背中を見ながら、
「ひまわりみたい」
 エーリカはなんだか羨ましげに、呟いた。


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