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因果応報

「エイラ、このビンなに……?」
「あ、それか?さっき街でもらったんだ。記憶と身体はそのままで、飲んだやつの精神年齢だけが子どもの頃に戻っちゃうんだって。ついでに、飲むとその前一日分の記憶無くなっちゃうらしい。変な薬だよなー」
「それ、本当……?」
「たぶん。一緒にいた隊長が絶対に飲むなって言ってたから」
「……なんで持ってきたの?」
「え?あー……。その、珍しいから?」
「……いたずらに使うのは駄目」
「わ、わかってるって!私がそんなことに使うわけないじゃないか!そんなことよりサーニャも間違って飲んだりしないようにな!どんな効果があるかはっきりしないんだから」
「……ところで、お茶飲む?」
「あ、飲む飲む」

 飲ませてしまった。
 薬入りの紅茶を口に含んだ瞬間、エイラは机に突っ伏して眠りだした。それを見て私は、取り返しの付かない領域に足を踏み入れたことを悟る。ただし、後悔はない。どんな結末だろうと、私は私にとって正しい行動をしたと、そう信じられる。
 ……とりあえず、私はエイラをそのままにして、床に飛び散った紅茶やカップの破片を掃除した。どの程度まで子どもになるかはわからないが、念のため、念のため。万が一にも怪我をさせてしまっては一大事だから。
 それにしてもエイラはよく眠っている。まるで天使の寝顔だ。時折見せる凛々しい顔もいいけれど、こうして間の抜けた、もといあどけない表情で眠る姿もいい。小さい頃の写真のように、可愛い服を着せてみたくなる。本人は嫌がるけど。
 エイラが目を覚まさないまま、十数分が経過する。
 私は紅茶に濡れたエイラの服が気になってきた。濡れたままで気持ち悪くないだろうか。風邪を引いたりしないだろうか……。
 脱がせるべきだ。
 決断は早かった。私の筋力だと、エイラを支えるのは辛い。魔法を発動させて抱きあげる。眠ったまま、まったく起きる様子のないエイラを、私はベッドのまで運び、仰向けに寝かせた。
 エイラの襟に指を伸ばす。ぷつりと音を立てて詰襟が外れた。どうして他人を脱がすというのはこんなにどきどきするのか。エイラの下着姿も、その下の姿も見慣れているというのに。
 何やら新しい趣味に目覚めそうな動悸を押さえ込みながら、私は一つ一つ、ボタンを外していく。
 紅茶の染みは下のシャツにも染みていた。それと、外履きのズボンの太腿あたりにも。両方脱がせるしかないらしい。私の胸はさらに激しく高鳴った。
 軍服を脇に放り投げ、シャツを脱がせる。下着まで染みていたらどうしようかと思ったが、幸か不幸か、下着は無事だった。続いて外履きのズボンへ……。
 ごくり。エイラの細い腰に食い込む輪郭に指をかけ、私は唾を飲み込んだ。
 なんとなく、これを下ろしたら帰れないような。
 震える手を叱咤し、私はゆっくりとズボンを下ろす。途中、その下に履いている方にまで指がかかってしまい、ずれてしまった。私は顔が熱くなるのを感じながら、急いでそれを直した。もし一緒にずれ下がっていたら、帰れないどころか深みに向かって真っ逆さまだ。
 そうやって慎重に白い外履きを太腿の半ばまでずらし終えたその時。
「……サーニャ?」
 心臓が口から飛び出るかと思うほどの衝撃。
 一気に吹き出た汗でびしょぬれになった顔を恐る恐る上げると、エイラがこちらを見つめていた。
「なんで、ぬいでるの」
 くりっと可愛らしく顔を傾けるエイラ。
 ……ッッッ!可愛いッ!!!!
 私はとっさに鼻に手をあて、吹き出しそうになる鼻血を塞き止めた。
「エイラが紅茶をこぼしちゃったから。このままだと、風邪を引くから、ね……?」
 とっさに冷静をつくろえた自分をこの日ほど褒めてやりたいと思ったことはない。
「そうなんだ」
「そうなの……」
「ありがと」
 エイラは私へ、春の日差しのように柔らかく、暖かな笑顔を向けた。
 限界だった。
 ボダボダと、鼻から血が滴り落ちる。私の軍服、エイラの白くなめらかな脚、シーツという順番で汚した。
「サ、サーニャ!?」
 慌てたエイラが身を起こし、私の肩をつかんだ。泣きそうな顔がぐんと私の目の前で近づき、興奮度はさらに上昇する。鼻血の勢いも比例して増し、鼻を押さえる私の手は真っ赤に染まった。
「いたいの!?だいじょうぶ!?」
「だ、大丈夫……。気にしないで、平気だから……」
「でも、ちがいっぱい……」
「本当に大丈夫よ……。エイラは優しいね」
 汚れていない方の手でエイラの頭をなでる。不思議な感覚だ。いつもはエイラが大人びた顔を作って私の頭をなでるのに、そのエイラの頭を今私がなでている。
「えへへ……」
 褒められたエイラは一転、照れたような笑顔を浮かべた。そして頭に置かれた私の手、というか、指をつかみ、にぎにぎと握って遊びだす。
「……楽しい?」
「サーニャのゆび、きもちいい」
 私は確実にその音を聞いた。身体のうちから響く、濁流のような音を。何の音だろう?……決まっている。鼻から血が吹き出す音だ。
 この量は不味いかもしれない。いや、この分だと今日私は死ぬだろう。しかし悔いはない。私は私が正しいと思う道へ進んだのだから。
 エイラは私より大きな手を器用に使って、私の人差し指と小指を夢中になって握っている。
 ああ、天使だ。この子は間違いなく天使。私を天国へ、そう、文字通りの意味で、天国まで連れていってくれる……。
「……サーニャ!?」
 あれ、なんだか、エイラの声が遠く……。頭がふらふらして、痛くて、意識が遠のい……。

「……ニャ!サーニャ!大丈夫か!?」
 がくがくとゆすられ、私は目を覚ました。
「ここ、天国……?」
「え、縁起でもないこと言うなよぅ……」
 情けないエイラの声。今にも泣き出しそうだが、さっきまでのあどけなさは消え失せていた。
「時間切れ、か……」
「なんかいったか?」
「ううん。何も……。ちょっとふらふらするから、少し寝るね……」
「うん、そっか。そうだよな……、薬がきいてくる頃だろうし」
 ……くす、り?
「ほら、テーブルにあった薬だよ。サーニャが持ってきた薬だろ?」
 そう言えば、薬を飲むとその前の記憶が……。
 ああ、駄目。ねむ、い……。


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