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悪戯に


「リーネちゃんおはよう!」
「あっ! 芳佳ちゃんおはよう!」
 リーネを見つけ、駆けていく芳佳。それまで芳佳の一歩後ろを歩いていた静夏は足を止め、その光景から目を逸らした。
 また、今日も。
 胸の内側から、刺が刺さったような痛みを感じる。静夏は手を、胸に添えた。
 芳佳とリーネは友人なのだ。自分が芳佳と出会う
ずっと前から。頭では理解できても、割り切れなかった。切なかった。
 芳佳の一番でありたい。
 日に日に膨らむその気持ちは、静夏を苦しめていた。
 一番の、何でありたいというのだ。
 弟子? 友人? 部下? それとも……。
「静夏ちゃん? そろそろいかないと、朝ご飯遅れちゃうよ?」
 リーネと並んだ芳佳が、いつの間にか、こちらを向いていた。
「はっ、はいっ! すみませんっ!」
 慌てて後を追った駆け足は、芳佳の一歩後ろで歩きに変わり、距離を保つ。無意識だった。
 これ以上、近付けない。近付きたい、けれど近付けない。芳佳は上官なのだから、自分が後ろを歩くのは当然なのに、どうしてこんなにも辛いのか。
 手を伸ばせば届く距離。それは、手を伸ばすことができない距離でもあった。たかが数十センチの、なんと遠いところだろう。
 静夏は胸に手を当てた。
「ちくちく、する……」
 胸の痛みは増す一方。
 呟きは、誰に聞かれることもなく、霧散した。

「あー、美味しかったー!」
 部屋に戻るや、芳佳はベッドに飛び込んだ。
「宮藤さん。軍服のまま横になられたら、皺になってしまいます」
「あ、そっか」
 芳佳は白い士官用の軍服を脱ぎ捨て、ボディスーツの姿になった。
 どきりとした。
 何度見ても、芳佳の服を脱ぐ姿には慣れない。心臓が跳ねるように高鳴っていた。
「静夏ちゃん」
「は、はい……」
「おいで?」
 横になった芳佳が、迎え入れるように、両手を伸ばした。
「で、でも」
「いいから、ほら、おいで。それとも、命令してほしい?」
 芳佳の微笑みにつられるように、静夏はふらふらと近付いた。
 靴を脱ぎ、ゆっくりとベッドに上がる。横になった芳佳に跨がるような姿勢になった後、芳佳の胸に、静夏は顔を当てた。
 芳佳は静夏の頭を抱きながら、
「静夏ちゃん、朝からずっと寂しそうな顔してたよ」
「……そんなこと」
「なかった?」
「……あり、ました」
 抱きつきながら、芳佳の胸に顔をすりつける。
「もう寂しくない?」
「……まだ、ちょっとだけ」
「甘えん坊なんだ」
「だって、宮藤さんが、リネット曹長ばっかり」
「友達だもん」
「でも、うらやましいです。私だって……」
 芳佳の手が、静夏の頭をなでる。自分のものよりずっと小さく、頼りない手のひら。なのにどうして、こんなにも安心するのだろう。静夏は腕に力を込め、さらに密着した。
「どうしたら、静夏ちゃんは寂しくなくなるのかな」
 芳佳が、優しい声音で言う。
「そんなの、わからないです……」
「こうしてくっついてるだけじゃだめ?」
「う……」
「あったかいよ」
 確かに、芳佳は温かい。体温が高くて、柔らかくて、いいにおいがする。でも、足りない。わがままなのはわかる。でも、もっと、芳佳が欲しい。
「何か、してほしいことでもある? 言ってみて。怒らないから」
「……そ、そのっ。リネット曹長にしてないこととか、してほしい、です……」
「リーネちゃんにしてないこと……。キスとか?」
「キっ!? キキキキキキスぅっ!?」
 がばり。静夏は勢いよく身を起こした。顔を真っ赤にして、口元を手で庇う。視線は右へ左へ、せわしなく泳いでいた。
 一方で、芳佳は平然と静夏を見つめている。それくらいなんでもない、と言うように。それはそれで、静夏としては複雑な気分になるのだが……。
「だって、抱きついたり手をつないだり一緒に寝たりはよくするし」
「そ、そんな、宮藤さんと……」
「イヤ?」
「と、とんでもない! でも、私なんかじゃ宮藤さんが……」
「静夏ちゃんならいいよ?」
「えっあっあう」
「おいで、静夏ちゃん」
 芳佳の手が、静夏の頭に回される。引き寄せられるままに、静夏は顔を近付けていった。

「ふっ、う、んっ」
 どちらのものともわからない喘ぎが、室内に響いていた。
 ベッドの上では、静夏が芳佳に覆い被さり、一心に口内を貪っている。
(早くやめないと、変になる……っ)
 静夏の理性は、これ以上は危ない、そう告げている。しかし、止まらない。止められない。あるいはもう、変になっているのかもしれない。
(宮藤さん、宮藤さん、宮藤さん、宮藤さん……っ)
 これではまるで、ケダモノだ。
「ふぁ」
 時折、芳佳の口から声が漏れる。それが耳に入る度、静夏の脳は痺れた。
 舌が、自分のものではないように、勝手に動く。別の生き物かと思えるくらいだ。
 芳佳の舌を舐める。最初は舌先でなぞるように。我慢できなくなったら、深く深く根元まで、絡め取る。そのまま舌を巻くように動かして、舌同士をこすりあわせた。
 芳佳の顔も、上気している。潤んだ瞳に、静夏の顔が映った。
 もっと、もっと芳佳が欲しい。
 静夏の手が、芳佳の胸に伸びた。
「んう」
 その手が、それまで一切抵抗しなかった、芳佳の手に掴まれる。
「ぷあっ」
 静夏の唇が、芳佳から離れた。
「宮藤さん、私……っ」
「だめ。おあずけ」
 怒られたのかと思った。
 しかし、宮藤は笑っている。
「宮藤さ……」
「だーめ」
「うう」
「静夏ちゃんのえっち」
 返す言葉もない。
 静夏は俯いた。その額に、芳佳の唇が触れる。
「訓練の時間だよ。軍規、まもらなきゃ」
「は、はい……」
 普段は、静夏が言う台詞。
「また今度、ね」
 芳佳の悪戯っぽい微笑みを、静夏は初めて、目にした。

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