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迫る影


 窓の向こうから虫の声だけが響く、静かな夜。
 ベッドの上には、寝間着姿の芳佳が横たわり、安らかな寝息を立てていた。……そこに。
 みしり。家鳴りがした。
 みしり。風もないのに。
 みしり。違う。
 みしり。床板の、きしむ音だ。
 音は、芳佳の眠るベッドの脇で止まった。
 寝息を立てる芳佳に、黒い影が覆い被さる。黒い影が芳佳に手を伸ばした。その、瞬間。
「……静夏ちゃんっ! ステイ!」
 勢いよく身を起こした芳佳が叫んだ。
「……っ!」
 影がぴたりと動きを止める。
 芳佳が枕元のランプに火をつけると、灯り照らされて、今にもとびかかりそうな姿勢で固まる静夏が現れた。
「危なかった……」
 芳佳は額の汗を拭った。
「ううう、宮藤さん……」
 静夏が姿勢をそのままに、縋るような視線を向けた。
「静夏ちゃん、お座り」
「あう」
 床にぺたん、と座り込む静夏。
「もう。ダメだっていったよね」
 腕を組み、芳佳は静夏の正面、ベッドの上に正座して、静夏を見下ろした。
 寝間着姿で髪を下ろした静夏は、普段より幼く見える。しかし、それにだまされてはいけない。静夏の夜這いは今日これが初めてではなかった。
 過去、幾度も芳佳の布団へ潜り込んでいるのだ。性知識のない静夏のすることだから、決定的な行為に至ることはないものの、本能のままに身体をまさぐられ、切ない声で名を呼ばれては、安眠などできようはずもない。
 それについて、これまで幾度も注意したはずなのだが。
「す、すみません……」
 静夏は、しゅん、と頭を下げる。
「そんなに私の言うこと聞きたくない?」
「ちっ、違いますっ! ただ、その、私……」
 なにやらもにょもにょと、我慢できなかっただとか、宮藤さんが構ってくれないだとか、そんなことを呟くように言う静夏。
「言い訳しないの」
 芳佳はぴしゃりと言い放った。
「すみません……」
「じゃあ、私は寝るからね。静夏ちゃんはそのまま反省してて」
「はい……」
 芳佳は静夏に背を向け、ごろりと横になった。
 再び、室内に静かな時間が戻る。
 二人分の、微かな息づかい。秒針が時を刻む音。虫の声。木々の擦れ合う音。本当に、静かな「くちゅん! ふぁ……。ずびびっ」静かな、夜のはずなのだが。
「……静夏ちゃん、寒い?」
 背を向けたまま、芳佳が口を開いた。
「い、いえっ! そんなことはありません!」
「そ、そう……」
「へくちっ」
「……くしゃみ、可愛いね?」
「え、あ、可愛いだなんてそんな……」
 顔を赤くして、照れる静夏。
 芳佳はため息をついた。そして身を起こし、
「もう。今日だけだからね」
 掛け布団を捲りながら、静夏に言う。
「でも……」
 逡巡する静夏。芳佳はその手を取った。
「その代わり、なにもしないこと。なにかしたら怒るからね。わかった、静夏ちゃん?」
「はっ、はいっ!!」
 芳佳のにおいのする布団へ、静夏は潜り込む。
 その顔は、嬉しそうに笑っていた。

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