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芳佳と静夏のエイプリルフール


 朝食後、芳佳と静夏は並んで皿を洗っていた。
 静夏も、芳佳が家事をすることについて、口出しするのは諦めたらしい。言っても聞かないということは確かにあったが、それ以上に他の隊員があまりにも家事が出来ず、芳佳がいなければ早晩部隊は壊滅すると、一部の隊員から泣きつかれたことも大きな理由のひとつだった。
 料理以外については、実際はやりたがらないだけなのではないか、という疑念を抱きつつも、上官の命令でもあり、何より尊敬する五〇一のウィッチに言われたとあっては、静夏はそれ以上何を言うことも出来なかった。
 そして今日も、静夏は隣で楽しそうに皿を洗う芳佳を目の端で眺めつつ、こっそりと溜息を吐いている。
「静夏ちゃん静夏ちゃん」
「は、はい。なんでしょう」
 唐突に名を呼ばれ、静夏は横に顔を向けた。やや、下の方に視線を移し、ようやく芳佳と視線が合う。
「今日何の日か知ってる?」
「ええと、四月一日ですよね」
「そうそう」
「エイプリルフール、でしたか? 確か、午前中はどんな嘘を言っても許されるっていう」
「そうそう! だからね、静夏ちゃん!」
 芳佳は一呼吸起き、にっこりと微笑んだ。
「静夏ちゃんなんて、大嫌い!」
 がしゃん。
 静夏の手から皿が滑り落ち、砕け散った。
「静夏ちゃん?」
 芳佳が顔を向けると、静夏は蒼白な顔を強張らせている。
「う……」
「あの、静夏ちゃ……」
「うあああああああああああああああん!!!!!」
 静夏は目の両端から大粒の涙をこぼしつつ、勢い良く泣き始めた。
「えっ!? ちょっ!? 泣くの!? 今の流れで泣くの!?」
 エイプリルフールとか、その内容とか、把握していたのに!
「うあああああああああああああああああああああああん!! ごべんなざいいいいいいいいいいいっ」
「なんだなんだ、ミヤフジ。新人いびりか? お前も隅におけねーなー」
 声を聞きつけてか、エイラが厨房に現れた。誰もいなければフォローは簡単だったはずなのに、人が増えると嫌な予感しかしない。
「ちょっ!? エイラさん!?」
「うああああああああん!! やだあああああああああああっ!! うあああああああああああああああああああああああん!!!!」
「ああ、もうっ! 静夏ちゃん落ち着いて!」
「ごっ! ごめんなざっ!ごめんなざいいいいいいいい」

「……落ち着いた?」
「はい……」
 ぐすっと鼻をすすりながら、静夏は芳佳の問に答えた。
「なんだ、てっきりミヤフジが新人をいびったのかと」
「そんなことしません!」
 芳佳はエイラに怒ったような視線を向けると、静夏の鼻にハンカチを当てた。ぶびぃ、という間の抜けた音を立て、静夏は鼻をかんだ。
「ごめんね、静夏ちゃん。嘘でも嫌いなんて言っちゃ駄目だったよね」
「嘘だって、わかっては、いたんですけど、でも、でも……っ」
「だ、大丈夫! 絶対嫌いにならない! 嫌いにならないから!」
 再び泣き出しそうになる静夏に、芳佳は慌てた。
「それにしてもなー。ミヤフジに嫌いって言われだけで大泣きするなんて、ハットリは意外と泣き虫だな」
 芳佳と静夏のやり取りを、にひひ、と笑いながら楽しそうに眺めていたエイラが口を挟んだ。
「何言っているんですか、エイラさん」
「ん?」
「エイラさんだって、サーニャちゃんに嫌いって言われたらこの世の終わりみたいな顔するくせに」
「んなっ!? し、しねーよ!!」
「本当ですか?」
「あ、当たり前だろ!」
「じゃあ、試してみましょう。お願い、サーニャちゃん」
「……えっ」
 エイラが振り返ると、何故か部屋で寝ているはずのサーニャが、寝ぼけ眼をこすりながら立っていた。
「……ごめんなさい。本当に勘弁して下さい」
 エイラは深々と頭を下げた。
「なんの話……?」
「な、なんでもないぞ! ほら、部屋に戻ろうなー」

「本当にごめんね、静夏ちゃん」
「う、嘘でも、辛かったです……」
「うん。ごめん。もうしないから」
 うつむく静夏の頭を、芳佳は優しく撫でた。
「でも、大好き、とは言わないよ」
 芳佳のその言葉に、静夏が、きゅ、と唇を噛み締める。
「だって、今言ったら嘘になっちゃうから」
「ほえ」
 静夏が顔を上げると、芳佳が微笑んでいる。
「午後になったら言ってあげるね」
 裏表のない芳佳の微笑が、静夏に向けられている。
 約束が、嘘でもいい。
 その微笑だけで、静夏のエイプリルフールは、幸せな日だった。


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