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とある誘拐事件


 窓から差し込む朝日が、朝の訪れを知らせている。
(起きなきゃ……。朝ご飯作らないと……)
 そうは思っても、身体は中々起きてくれない。朝に弱い人間は大変だ。二度寝の誘惑に惹かれつつ、芳佳は身を起こそうとした。
 それにしても、今日はいつも以上に体が重い。
 体調が悪いのかもしれない。
 中々開いてくれない目をこすろうと、芳佳は手を顔へ持って行こうとした。しかし。
(あれ……?)
 手が、動かない。
 金縛りだろうか?
 身をよじってみる。動くことには動くが、何かに締め付けられているような窮屈さを感じる。そして手は、まるで何かに固定されたように動かない。
「う、ん……?」
 無理やり目を開けると、視界に広がる光景に、芳佳は違和感を感じた。
(私の部屋、こんなだっけ……)
 完全に覚めきらない頭でぼうっと考えていると、
「あ、起きた」
「ほんとだ」
「おっはよー。ミヤフジー」
 シャーリー、エイラ、エーリカが、口々に挨拶しながら、顔を向けた。三人は、なにか箱のようなものを覗き込んでいたようで、芳佳から視線を離すと、再びそちらに目を向けた。
「あ、おはようございます……?」
 なんでこの三人がいるのだろう。というか、ここは自分の部屋で良いのだろうか。
「寝坊助だなー、ミヤフジは」
 一人箱の前から離れたエーリカが、ベッド脇にしゃがみこんだ。芳佳はこの人にだけは言われたくないと思いつつ、再び身体を起こそうと力を入れる。
 シャーリーがそれに気付き、振り返った。
「あ、やめた方がいいぞ、ミヤフジ。お前縛られてるから」
「へ……!?」
 なるほど。確かに、両手が縛られ、さらに寝間着の上にぐるぐると縄が巻かれている。手が動かなかったのも、窮屈な感じがしたのもこのせいか……。
「……って、本当になんで縛られてるんですか!?」
「そりゃ、お前……、なあ?」
「なあ」
 シャーリーとエイラが視線を合わせ、頷き合う。
「二人だけで納得しないでください!」
「ミヤフジ! 私を忘れるな! 私も納得してるぞー!」
「私が言いたいのはそういうことじゃないです、ハルトマンさん! 事情を説明してください!」
「落ち着け、ミヤフジ。事情はシャーリーが説明してやるから」
「してやるからー」
「私かよ!?」
 エイラとエーリカによって責任を押しつけられたシャーリーは、咳払いをひとつ、表情を改めて口を開いた。
「実は、な」
 ごくり。芳佳は唾を飲み込む。ネウロイ? 危険物? はたまた、スパイ事件とか? 芳佳は自分が緊張しているのを感じていた。
「最近お前いつもシズカと一緒にいるだろ?」
「え? ええ、まあ」
 だが、シャーリーの言葉は、芳佳の予想のどれとも一致しなかった。
 まあ、それは確かに、そうかもしれない。
 思い返してみれば、この頃どこに行くにも、静夏が後ろを着いてきていた。小うるさいことも言うが、それが日常となれば、無いのは寂しいし、素直に慕って着いてくる静夏が可愛くもある。
「……で、それとこれと、一体何の関係が?」
「いや、お前がいないとき、シズカがどんな生活してんのかなーと」
「そんなことのために!?」
 ち、ち、ち、とシャーリーは指をふった。
「いやいや。そんなことっていうけどな、ミヤフジ。上官として、ある程度は部下のことを知っておく必要があるんだ。お前の後ろについて歩いているところだけじゃ、あいつの良さはわからないからな。例えば、私は大尉だし」
「私は中尉」
「私も中尉ー」
「な? ここにいるのはみんな士官だ。部下を預かるにあたっては……」
 そう得意げな顔をしている三人に、
「……こんな時だけ階級を持ち出すんですね」
「「「げふぅっ!!」」」
 芳佳の一言が突き刺さった。
「お、お前、結構言うようになったな……」
 シャーリーは胸を抑え、他の二人も気まずげに目を逸らしていた。
「いいからもう、ほどいて下さいよ……」
 半ば呆れながら、芳佳はじとっとした視線を向けた。
「わかったわかっ……いや、待て!」
「今度はなんなんですか!?」
 ようやく自由になれそうなところで、唐突に、何かに気づいたシャーリーが手を止めた。
「シズカが目を覚ました!」
「お、やっとか」
「ふぃー。待ちくたびれたよ」
 エイラとエーリカが、箱に視線を戻す。
「…………」
「そうむすっとした顔するなって。まあ、見てみろよ」
 頬を膨らませた芳佳を抱え、シャーリーも箱の前に腰を下ろした。
「……これ、私の部屋?」
「そう。お前の部屋に仕掛けたカメラの映像だ。マイクもあるから音声も拾えるぞ」
「それって犯ざ」
「ほら、静夏が起きた! さてどう動くかなー!」
 盛大に話を逸らされ、諦めたように溜め息をついた芳佳は、モニターに映る映像へ、視線を移した。

『あ、あれ……? 宮藤さん……?』
 目を覚ました静夏は、隣のベッドに視線を送り、戸惑ったように呟いた。
 そこに寝ているはずの芳佳は、朝に強くない。そのため、静夏が起こすのが、半ば日課になっていたのだが……。
『宮藤さん、どこに……?』
 今日に限っては、その芳佳がいない。
 静夏は寝間着のまま、髪も結い上げぬままに、迷子の子犬のような顔で部屋の中をうろついている。
『宮藤さん? 宮藤さーん?』
「……こいつ、ミヤフジが部屋の外にいるって発想ねーのかな」
 呆れたように、エイラが呟く。
『宮藤さん、どこですかー……。いないんですかー……。いないんですねー……』
「いや、きっと寝ぼけてるんですよ……。確かに、静夏ちゃんちょっと抜けてるところもありますけど、流石に……」
 と、芳佳がフォローを入れかけたその矢先、静夏は勢い良く、芳佳のベッドに飛び込んでいた。
『み、宮藤さんのおふとん……』
 顔を布団に押し付け、足をばたつかせながら、喜びを全身で表現している。
「うわぁ」
「うわぁ」
「うわぁ」
「…………」
『うわぁ、うわぁ……。すごくすごいです……』
「何が!? ねぇ、静夏ちゃん!? 何が凄いの!?」
『ああ、これが宮藤さんの枕。そして毛布……。まるで宮藤さんに包まれているみたい……』
 表情は見えないが、恍惚顔を浮かべているであろうことは、その声でわかる。
『……あ、なんか変な気分に』
「もうやめて! やめてよ静夏ちゃん! 私、耐えられない!」
「まぁ、その、何だ」
「落ち込むなよ」
「元気出せ、ミヤフジー」
 三人の慰めが、白々しく木霊した。

 キィ、と軋むような音を立て、画面の奥で扉が開いた。
『静夏ちゃん……』
『み、みみみみ宮藤さん!? 違うんです、これは、その、洗濯しようと思って!』
『ちょっと正座しようか……。話が聞きたいよ……』
『違うんです! 違うんです!』
『いいから』


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