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かすれ声。震え声。涙声。


「お、おい! やめろ、智子!」
「なによぉ。寒いんだから一緒に寝てくれてもいいでしょぉ」
「よくない! こ、の……、酔っ払いが……!」
 酒に酔い、うとうととし始めた智子を、ベッドに寝かせてやるつもりで抱きかかえたビューリングだが、バランスを崩し、ベッドに倒れ込んでしまった。そこへ、酔っ払った智子が覆い被さってきたのだ。
 普段なら、智子を押し抜けることぐらい、ビューリングには造作も無い。なんだかんだ言っても智子は非力だし、体重が軽い。
 しかしこの晩は、ビューリングもしたたかに酔っていた。足腰はふらつき、腕にも力が入らない。
 智子も同じ条件ではあるが、上からのしかかっている分、それほど力を必要としていなかった。
「やめろ、智子……!」
 足掻けば足掻くほど、智子はしがみついてくる。
「なぁに、それともただ一緒に寝るだけじゃやなの?」
 からかうように、智子は囁いた。
 そうだ、と言えば、智子は退くかもしれない。ふと、ビューリングはそんなことに思い当たった。
 普段ハルカやジュゼとの同衾を(口の上では)嫌だ嫌だと言っている智子だ。いくら酔っているとはいえ、本当に嫌だと思っているなら退く筈だ。それで退かないならば、そのときは仕方がない。殴ろう。
 朦朧とした頭の導き出した答えだが、悪くないように思えた。
 どうせ智子も自分も、明日になれば、忘れているに決まっている。なら、恥を忍んで言ってしまってもいい。既成事実を作られるより、余程マシだろう……。
 ビューリングの口は動いていた。イエス、とただそれだけを言うために。
「……そう」
 智子の答えは短かった。
 その代わりにしたことは、歴史上のどの弁舌よりも、遥かに雄弁な口付けだった。
「んん……っ!?」
 くぐもった声を、ビューリングが漏らす。
 まったく、予想もしていなかった。退かない場合は、そのまま抱きついてくるか、尻や胸を触る程度だろうと考えていたのだ。
 それがまさか、いきなりキスとは。しかも、触れるだけの可愛いものではない。ビューリングの口の中を貪欲に食い荒らす、実に荒々しいものだった。
 二人はしばらく、酒のにおいをぷんぷんとさせる息を交わらせつつ、獣の如き接吻に興じた。
「ぷあ」
 智子が唇を離した。その顔が上気しているのは、決して、酒のせいだけではあるまい。至近距離でビューリングを見つめる智子の目には、獲物見つけた狩人の喜びが、炎のように揺らめいていた。
 やがて、智子の手が、ビューリングのセーターの裾にかかった。
「や、やめろ……」
 その手を弱々しく掴み、ビューリングは慈悲を請う。
 智子は手を止めた。変わりに、ビューリングの手を取り、震える中指の先を、これ見よがしに口に含んだ。
「う、あ……」
 喘ぎが、ビューリングの口から漏れた。
 智子には、やめるつもりなどまったくなかった。それを誇示するかのように、わざと水音を立てながらビューリングの指を吸い、舐め、しゃぶり、唾液で濡らしていく。
「トモ、コ……」
「いいから。任せて」
 酔いはどこへやったのだ。
 ビューリングがそう思ってしまうほどに、智子ははっきりとした口調である。
 顔に、布が当たった。
 セーターを脱がされているのだと気づくのに、少しばかりのタイムラグが必要だった。
「ビューリング。震えてる」
 そんなことはない。
「前から思ってたけど、結構胸あるわよね」
 やめてくれ。
「不摂生してるくせに、肌はきれいだし」
 頼むから。
 抗議を試みたが、言葉は出なかった。
 喉が張り付いたようで、まず声が出ない。
 それに。
 智子の言葉のひとつひとつが、自分に、自分だけに向けられている。
 嬉しかった。嬉しくなってしまった。
 もう、腰砕けだ。
「ト、モコ……」
 かすれ声。震え声。涙声。その全部が揃った、情けない声。
「なに?」
 蠱惑的な笑みを、智子は浮かべている。
「や、やさしく……」
「どうしようかしら」
「は、はじめて、なんだ」
「…………」
「やさしいのが、いい……」
「……自信なくなってきた」
「トモ」
「まぁ、頑張ってあげる。できるだけ、優しくね。……でも、あんまり可愛いと、わからないからね」

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