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酔っ払い戦争


「うわ、なんだこの臭い……」
 帰省し、実家の扉を開けるなり、エイラは渋面を浮かべた。
 懐かしの我が家のにおい。たとえそれがどんなものであれ、長く火薬や油の匂いに慣れている身にとり、それは包み込んでくれるような、安心するもののはずだった。
 しかし、これは、なんだ。据えた臭気が玄関まで充満している。こんなもの、エイラの知る我が家のにおいではない。
 ……なんだ、と言っては見たものの、こんな臭いをさせるものを、エイラは一つ知っている。
 酒だ。
 締め切った室内に、アルコールの臭いが充満していた。酒に弱い人間ならば、呼吸しただけで卒倒するしかねない。あながち誇張ではなく、その証拠に、エイラは頭がふらりとするのを感じていた。
「ねーちゃん! また飲んでんのかよ!」
 臭気の発生源たる居間に向かって、ただいまを言うより先に、エイラはそう怒鳴り声を上げた。
「あー……? エイラ、帰ってきたのか」
 姉の声で、舌の回らない、どろん、とした答えが帰ってきた。普段の覇気と自信に溢れた声は、まったく跡形もない。
 居間を覗き込み、エイラは呆れた。
 十数本の空き瓶が、床に立っていた。どれもこれも、ビールやワインなどといった、度数の弱いものではない。ウイスキー、ラム、ブランデー、ウオッカ等々、強い酒をこれだけ飲めば、巨人ですら酔いつぶせそうだ。
 その林立する空き瓶の真ん中に、儀式に捧げられる生け贄のように、下着姿のアウロラが、大の字に横たわっていた。
 これから神様に捧げられるにしては、態度がでかいな。
 エイラはそう思いつつ、アウロラの顔をのぞき込む。
「おう。おかえり」
 表情だけを動かして、アウロラは妹の帰宅を歓迎した。
 しかし、無邪気に笑う姉とは対照的に、妹はしかめっ面を崩さない。
「いつから飲んでたんだよ。家中凄い臭いだぞ」
 これでは、実家に帰ってきたのか、それとも酒樽の中に飛び込んだのか、全くわからない。
「んー? 今日、何日だっけ……」
「十七日」
「あー。帰ってきたのが十五だから、ご、ろく、ななで……」
「三日!? 三日もぶっ続けで飲んでたのかよ!?」
「おー、そうそう。三日だ。お前計算早くなったなぁ。昔はなかなか算数できなくて、教えるのに苦労したもん……」
「昔話は置いとけ! あー、もう。飲みすぎだって、ほんと……。死んじゃうぞ」
「このくらいでくたばるなら、とうの昔に死んでたさ」
 アウロラの、豊かなバストが少しだけ持ち上がった。胸を張ったらしい。
「こんなこと自慢にすんなよな……」
 戦場で弾に当たらなかった人間が、酒にあたって死んだなど、逆にサマにならないだろうに。
「ほら、もう、起きろって。片付けるからな」
「おい、まだ残って……」
「全部捨てる! もう十分飲んだろ!」
「嫌だ! まだ足りない!」
「子どもか!」
 駄々をこねるアウロラ。
「ええい、もう。いいからサウナで酔い覚ませよ!」
 その足をひっつかみ、サウナの前まで引きずっていったエイラは、服も脱がせず勢い良く放り込んでしまった。
「ぐえっ」
 どこかにぶつかったのだろう。カエルの潰れたような声が聞こえた。
「姉ちゃんの部下が見たら泣くなコレ……」
 血の繋がった、本当の家族だからこそ見せる油断した姿なのかもしれないが、流石にこんな様では尊敬する気も失せる。
「……エイラー」
「なんだよ」
「服、脱がせて」
「甘えんな!!」
 扉越しに、エイラは怒鳴りつけた。
「エイラー。頼むよー」
「自分のことくらい自分でやれっての……」
 悪態をつきながらもなんだかんだでサウナに入り、アウロラの服を脱がせ始めた。……といっても、上下ともに下着一枚ずつしかまとっていない。なんとも脱がせがいがなかった。
「姉ちゃんの副脱がせても、何も面白く無いしな……」
 胸はあるが、流石に実姉のものともなると、食指が動かない。
「ほら、脱がせたぞ」
「うむ。じゃあ、次は座らせて」
「何様だよ!?」
「……お姉さまって呼びたいのか?」
「ドン引きすなや!」
「いつの間にアホネンの薫陶を受けていたんだ……。姉ちゃんショック」
「やかましいこの酔っ払い!!」
 乱暴に座らせ、白樺の枝を束ねたヴィヒタで、思いっきりその背中を叩く。
「……ッ」
 悶絶したアウロラの背に、二発三発と打ち付けてやる。
 やがて、エイラが息を切らしたところで、その手は止まった。
「ハァ、ハァ……、酔いは醒めたか、酔っぱらい……」
「……悪かった、悪かったよ」
「わかりゃいいんだ……」
「だけどな、叩き過ぎだ……。私を新しい趣味に目覚めさせる気か」
「元々似たようなもんじゃねーか、戦争狂い」
「返す言葉も、ないな……」
 並んで腰掛けた二人は、そのままぐったりと、サウナに入っていた……。

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