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雪花


 この旅館に止まるのは、何度目だろう。
 雪の積もる、古めかしいその宿を見上げ、土方は大きく息を吐き出した。溜め息ではなかった。どちらかといえば、深呼吸に近い。
 逸る気持ちを、土方は抑えこんでいた。
 この宿で、二人が初めて閨を供にしたあの部屋で、坂本が待っている。
 何も思うなという方が無理な話だった。
 坂本と逢うのは、決まってこの宿の、あの部屋である。坂本は特別な愛着を抱いているらしく、それは、土方にとっても同じことだった。
 気もそぞろに玄関を入り、案内するという中居を断って、土方は部屋へ急いだ。
 部屋は大分奥まった所にある。廊下を幾度も曲がらねばならないが、土方の足取りに迷いはない。板張りの廊下を泳ぐように、部屋を目指した。
 最後の曲がり角。そこを曲がると、目の前に、坂本が浴衣姿で立っていた。
「そろそろくる頃だと思っていた」
 土方を見上げ、それから視線を下ろし、はにかみながら、前髪を指先で遊ぶ仕草が可愛らしい。豪放さや凛々しさは、軍服と一緒に任地へ置いてきたようだった。
「……遅くなってしまい、申し訳ありません」
「本当だ。私がどれくらい待ったと思っている?」
 悪戯っぽい笑顔でそう言われては、土方も日頃の謹直な顔を保つわけにはいかない。
「本当に申し訳ありません」
 繰り返しながら、苦笑を漏らした。
 そして胸の内で、やはり中居の案内を断って良かったと呟いた。

 部屋で荷物を解く土方は、背後に視線を感じていた。
 言うまでもなく坂本の視線だ。
 そして聞くまでもなく、坂本が何を思ってそのような視線を向けてきているのか、土方にはわかっていた。
 坂本は、土方を急かしていま。早く終わらせろと、早くこっちを見ろと、言葉以上に雄弁に、その視線は語っていた。
 苦笑しつつ、鞄の中から包みを取り出した土方は、ゆっくりと、坂本に向き直った。
「中佐」
 そう呼びかけて、包みを差し出す。
 二人は相変わらず、「土方」と「中佐」である。それについて、違和感を抱いたことすらない。
「これは?」
 怪訝な顔を、坂本は向けた。
「贈り物です。先日街で見かけ、中佐に似合うかと」
「誕生日ではないが……」
 どこかつれないようなことを言いながら、坂本は落ち着きなく前髪をいじる。
 土方は微笑んだ。
「どうしても贈りたかったのです。口実を考えるより先に買ってしまい、結局浮かばぬまま、こうしてお願いしています」
 受け取って頂けませんか。
 そう続けられ、坂本は顔を照れさせながら、ためらいがちに包みを受け取った。
 中身は、帯だった。
 濃紺の生地に、刺繍された白い小さな花びらが無数に舞い、また、それがまるで雪のように、下側に線を作っている。
 坂本はしばし、見入った。
「い、いいのか、本当に」
「気に入って頂けたなら」
「あ、ああ。大切にする」
 坂本はいつまでも、花びらを指先でなぞっていた。

「あっ、あ」
 うわずったあえぎ声を、坂本は漏らしていた。
 うつ伏せで腰だけ上げた坂本に、土方は覆い被さり、二つの乳房に手をかけ、坂本の横顔に自分の顔を密着させながら、容赦なく腰を振っていた。
 土方が腰を引き、坂本の背を、ぞくぞくとした痺れが走る。
 土方が腰を突き入れ、坂本の頭の中で、大きな痺れの塊がはじけた。
 最初は抑えていた声も、それを繰り返されるうち、理性が飛び飛びになり、気がつくと、はしたない声であえぐようになってしまう。
 その声に土方は興奮を強め、腰を打ち付けるのだった。
 初めは痛がった坂本も、逢瀬を重ねるうち、身体が順応したのか、快感を覚えた。意識してかしないでか、自分から腰を振るほどである。
 好みの体位というものもある。覆い被さる土方の背に手を回し、しがみつくようにするのが、坂本は好きだった。
 ただ、今日は体勢が違う。
 普段は嫌がる後ろからの体勢を、今日は坂本が望んだ。
 坂本の手は、枕元に延びている。
 そこには帯が広げられていた。
 涙に潤んだ瞳で、口から情けない声を漏らしながら、その手は帯を、優しく撫でている。
 行灯の光が白い花びらを金色に光らせ、それが美しい。
 坂本は、気をやるまで、帯を握りしめることなく、優しく、優しくなで続けていた。

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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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