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破天荒に巻き込んで


 醇子の視線は、ずっと美緒に向けられていた。
 たったの三分。
 自分だけを見てくれたのは、先に着いた二人が美緒を待つ間の、それだけの時間だった。
 子どもの頃なら、美緒につっかかったり、醇子にちょっかいを出せた。今は、分別がそれをさせない。鬱屈した思いが胸にわだかまる。それを表に出すことすら、できなかった。
 美緒と並んで歩く、醇子の背中を見つめる。
 二人の一歩後ろを歩きながら、徹子は下唇を噛みしめた。
 醇子と二人の時は、楽しかった。他愛のない話しかしなかったけれど、それで十分だった。
 今は、寂しい。
 それもこれも、醇子が美緒ばかり見るせいだ。
 かといって、醇子どころか、美緒を恨む気にもならない。徹子は、醇子とはまた違った意味で、美緒のことが好きだった。
 割って入れば良いのだ。
 それくらい、わかっている。
 わかっていながら出来ないのが、徹子だった。

 店は簡素な食堂だった。
 美緒はそもそもこだわらない。徹子は出てくるものが美味ければそれで良い。そして醇子は二人に流される。そういうところは昔から変わらない。
 そういうわけで、三人は目に付いた店に入った。
 奥のテーブル席に通される。
 美緒が座り、その向かいに徹子が座る。醇子は自然な動作で、美緒の隣に座った。
 まあ、そうだろう。がっくりとしたが、わかってはいた。
 顔がよく見えるし、それで良いか。
 諦めた徹子が、少し身体を醇子の前へ寄せようとした、その時。
「いてっ」
 隣に座っていた人間の顔に肘を当ててしまい、徹子は慌てて身体を戻した。
「あ、悪い」
「なにすんだ!」
 横を向くと、義子が威嚇するように両手を上げ、ぷんすかと怒っていた。
「まあ、徹子もわざとじゃないんだから許してあげて」
「あれくらい避けれないようでは、魔王の名が泣くぞ」
「なんだとう!」
 醇子と美緒のフォロー?も空しく、義子は臍を曲げている。
 困ったな、久々に集まったのに。そこまで考えておいて、徹子は我に返った。
「……って待て待て待て待て。なんでこいつがここにいる!?」
「……あら、確かに」
「いつの間に来たんだ、お前は」
 徹子の声に、ワンテンポ遅れて、醇子と美緒は反応した。
 当の義子、西沢義子は、何のことかわからないというように、首をひねった。
「というか、あなた扶桑にいたの……?」
 醇子の言葉には、驚きが含まれている。美緒も呆れ顔を浮かべて、
「基本的に消息不明だからな、こいつは……」
 などと呟いている。
「わははは! なんかメシ奢ってもらえそうな気がしたから帰ってきた!」
 義子はなぜか上機嫌だった。
「どんな気だよ!?」
 わけがわからない。何度話しても、義子の理屈は理解不能だった。
「メシぐらい奢ってやるから、たまには居場所くらい知らせろ」
「けどなー、坂本。狼煙ってあまり遠くまで届かないんだぞ」
「お前の連絡手段はそれしかないのか!?」
「あ、そうだ、醇子。こないだ鳩捕まえて足に手紙付けて送ったけど、届いた?」
「届くわけないじゃない」
 万事、この調子である。
「それとな、どこか基地に立ち寄ったなら、誰でもいいから連絡しろ」
「なんで?」
「この頃、戦闘中未確認のウィッチが現れて、瞬きする間にネウロイを撃墜してどこかへ消えたとか、行き倒れた所属不明のウィッチに食事を与えたら、礼だと言ってその日現れたネウロイを全滅させたとか、嘘か本当かわからん噂話が多くてな……」
「覚えてるよーな、覚えてないよーな……」
「もう妖怪だな……」
 徹子は呆れて、突っ込む気力さえなくした。

「じゃあ、私たちはこっちだから」
「元気でな、徹子。義子」
「おう!」
「……ああ、またな」
 夕方にはまだ早い時間だが、この日は醇子も美緒も、仕事があるというので早めの解散となった。
 結局、義子の乱入もあって、醇子とはあまり会話することができなかった徹子だが、その表情に屈託はない。
「さて、私も帰るかー」
 そう言って、のびをする義子を、徹子は見つめていた。
 不思議なものだ。
 義子と話していると、その破天荒なペースに巻き込まれ、何を考え込んでいたのか忘れてしまう。
「……なんだよ」
 義子が怪訝な目で徹子を見る。
「いや」
 徹子は自分の頭をくしゃくしゃとかき、
「なんか、お前見てると色々どうでもよくなると思っただけだ」
「ふうん」
「羨ましいよ」
 何が、とは言わない。
「……なあ、もう一軒行かないか。肉でも食いに行こうぜ」
「肉! 行く!」
 もう少し、醇子に向けた気持ちを、徹子は忘れていたかった。

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