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スオムス文庫 サニャイラ-1-1『ずっと……』

「さーにゃーさーにゃー」
 エイラがぬいぐるみに向かって、私の名前を呼ぶようになった。
 原因はネウロイとの戦いで負った戦傷だ。
 彼女が初めて負った傷。
 それは絶望的なまでに深かった。
 私は黙ってエイラの頭をなでる。
 以前、エイラが私にやってくれていたように。
 エイラはくすぐったそうに目を細めた。
 込み上げてくるものを抑えこんで、頑張って微笑む。
 エイラの前では絶対に泣かないと決めたから。
 負傷の原因は、私だった。
 ある日の夜間哨戒、エイラも一緒に飛んでいた。
 いつもの通り、他愛のない話をする。
 私はあまり口数が多くないから、自然とエイラが喋り、私が返すという形になる。
 それでもエイラは、とても楽しそうに笑っていた。
 ネウロイと遭遇したのは、話が途切れて星空に見入っていた時だった。
 多数のネウロイに囲まれながら、私とエイラは必死に戦った。
 増援が来るまで耐え抜けば、生きられる。
 エイラが先陣を切り、私は後ろから援護する形になった。
 いつも彼女は私を守ろうとしてくれる。
 だから、私も守りたかった。
 その気負いが、エイラを傷つけてしまった。
 前を飛ぶエイラにばかり注意を向け、後ろへの警戒を怠った。
 後ろから忍び寄るネウロイに気づいたのは、光弾を放つ瞬間。
 遅かった。
 だが、その光は私に届くことはなく、銀色の髪をたなびかせたエイラに遮られた。
 エイラは見ていたのだ、私が負傷する未来を。
 大丈夫か、サーニャ。
 気遣うような笑み。
 ありがとう、エイラ。
 せめて微笑と一緒に礼を言おう。
 不意に、エイラの笑顔が視界から消えた。
 ストライカーから煙を吹き、落下していくエイラ。
 右側からの射撃が、エイラのストライカーを直撃したのだ。
 私を庇っていたせいで、シールドに慣れていないエイラは、避けることも出来ないまま被弾した。
 私は無我夢中でエイラを追った。
 残ったネウロイのことなんて、すっかり忘れてしまった。
 ネウロイの細い光弾がエイラに向かって注がれる。
 エイラは身を捩って回避したが、またストライカーに当たった。
 爆発するストライカー。
 エイラ…!
 私の小さな叫び声は、エイラの悲鳴でかき消された。
 海面に落ちる寸前、ようやく捕まえた。
 意識を失っているが、まだ息はある。
 ほっと息をつきかけて、飲み込んだ。
 あるべきものが無い。
 両方の足が、無かったのだ。
 事実をようやく理解できたのは、援軍で来た仲間たちに守られて、基地に辿りついた後だった。
 誰が援軍で来てネウロイを殲滅してくれたのか、
 自分がどこをどう飛んで基地まで帰ってこれたのか、全く覚えていない。
 私は横たわるエイラの脇で、何も出来ずにただ泣いていた。
 目を覚ましたエイラが無事でよかったと微笑む様子を見ては泣き、
 気にするなよと気遣う姿を見ては、また泣いた。
 ごめんなさい。
 謝り続ける私を、エイラは抱きしめてくれた。
 私はエイラの胸の中で、声を上げて泣いた。
 軍病院を退院したエイラは、除隊することになった。
 私も一緒だ。
 これからは私がエイラの足にならなければならない。
 501のみんなが、温かく送り出してくれる。
 私は嬉しくて泣いた。
 エイラも憎まれ口を叩きながら、涙目になっていたように思う。
 私たちはロマーニャに家を買うことにした。
 基地からもそう遠くない。
 時々なら、501の仲間たちとも会えるはずだ。
 私と二人でいるよりも、エイラにはその方が良い。
 私は努めてエイラの足を奪ったことを気にしないようにした。
 私が少しでも沈み込むと、エイラがつらそうな顔をするからだ。
 それは難しいことだったが、エイラの笑顔のために頑張った。
 エイラは絶対に私を責めず、世話をやく私に申し訳なさそうに礼を言う。
 そのたびに私はエイラを抱きしめて、礼を言わないでとお願いした。
 一年がたつ頃には、私たちの生活はとても自然なものになっていた。
 エイラは前のような明るさを取り戻したし、私も時々はエイラに怒ってみせたりする。
 思えば、一番幸せな時期だった。
 ある晩、いつも通り二人でベッドにはいると、エイラは私を抱きしめて泣いた。
 突然のことに驚いて、傷が痛いのかと聞いたが、違うという。
 私が何かしたかと聞いても、首をふるだけだ。
 エイラは震えて、泣き続けた。
 私は一晩中エイラを強く抱きしめ、絶対に離さないと、理由もなく考えていた。
 サーニャを忘れたくない。
 エイラは小声でずっとそう言っていた。
 彼女は知っていた。
 後遺症で記憶がどんどん薄れていることを。
 そして、見ていた。
 朝起きた頃には、私をサーニャだと思えなくなっている事を。
 翌朝、私は何が起こったかをすぐに理解した。
 私の置いていたぬいぐるみの一つを、エイラは優しく撫で、時々サーニャ、と呼びかけてる。
 それでもやることは変わらない。
 こうなって初めて、彼女がどれだけ私を愛してくれていたのかがわかった。
 愚かなことだが、全てを忘れてなお、
 エイラがサーニャを求める様子を見て、ようやくそれを知ったのだ。
 私は謝らなければならない。
 彼女がすべてを取り戻した後で、彼女を抱きしめながら。
 そして言ってやろう。
 エイラ、大好きだよ、と。


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