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スオムス文庫 エイニパ-1-1『とてもついてるカタヤイネン』

 それはまだ501が結成される前、私がスオムス空軍飛行第24戦隊に所属していた頃のこと。
 私は同僚のニパに先んじて、准尉に任官されたばかりだった。
「ごめん……イッル」
 顔をうつむかせ、呟くように謝るニパ。
 その日、私たちは何でもない哨戒飛行任務に就いていたのだが、
 帰路についた途端ニパのストライカーは煙を吹き、速度を出せない状態になってしまった。
 お陰で寒空を低速で飛行するハメになり、温かいコーヒーはしばしお預けというわけだ。
「まぁ、気にするなよ。
 それより基地までばらばらにならないように気をつけるんだぞ。お
 前を背負って帰るのはゴメンだからな」
「うん……ごめん」
 また謝るニパ。
 私はニパに聞こえないよう溜息を吐いた。
 ニパはその運の無さから「ついてないカタヤイネン」とあだ名されている。
 過去何度も死の淵から蹴り落とされ、その度に這い上がるという事を繰り返してきたからだ。
 本当は単純で気のいい奴なのだが、周りを巻き込んでしまうことをとても気にしていて、
 周囲から距離をおくところもある。
 私は何度も考えすぎだと言ったが、ニパはいつも困ったような笑みを浮かべるだけだった。
「まったく謝るなよな。
 別についてないのはお前のせいじゃないんだしさ」
「ありがとう……」
「もー……ウジウジすんな。
 そんなだからツキに逃げられるんだよ」
「ごめん……」
 大体いつもこんな調子である。
 何か気を紛らわしてやりたいとは思うが、こんな空の上では何も無い。
 タロットカードもニパ相手だと見事なまでに逆効果で、基地の話をすれば、それはそれでまた落ち込む。
 結局は他愛のない話に戻らざるをえなかった。
 こっそりと、二度目の溜息を吐く。
 ニパはイイヤツだし、友達だ。
 何とかしてやりたい。
 けど、こればかりはニパが自分で切欠を見つけて、自分で変わるしかない。
 私に出来るのは手助けが精精だ。
「不運だって、気の持ちようだと思うんだけどな……」
「……っ!イッル!あ、あれ!!」
「ん?」
 ニパは顔を蒼くして進路を指差している。
 その先には、無数の黒い物体が浮いていた。
「……ネウロイ!!」
「い、イッル……どうしよう」
 今のニパは的も同然、闘いながら突破するのは無理だ。
 かといって、遠回りしてたらニパのストライカーはもたない。
 そもそも、遠回りしたからって発見されないとは限らないのだ。
 それなら、方法は決まっている。
「どうするもこうするも……やるしかないだろ」
「で、でも……」
「ニパ、銃よこせ」
「え?」
「私があいつらを全滅させるまで離れてるんだ」
「そ、そんな……嫌だ!
 私のせいでイッルを危険な目にあわすなんて!!」
「……おい」
「……っ」
 ニパのセーターの襟首を掴み、顔を引き寄せた。
 中性的な顔が強張って、泣きそうになる。
 だが、『私のせいで』とニパは言ったのだ。
 こいつは悪くない。
 悪いのは故障したストライカーで、たまたまい合わせてしまったネウロイの群れだ。
 なのに、また自分の不運が私を巻き込んだと思っている。
 我慢出来なかった。
「確かにお前のストライカーが不調だ。
 だから、ここを抜けるには私が戦うしか無い。
 でもな、ニパ。ストライカーを壊したのはお前じゃないし、
 まして、あいつらと出会ったのもお前のせいじゃない。
 いい加減、何でもかんでも自分のせいにするのはやめろ」
「で、でも、私のストライカーのせいで、イッルが一人で……」
「あいつらくらい、何でも無い。
 なんてったって、私はエースだからな」
「イッル……」
「ニパ、考えてみろって。逆の立場ならお前、どうする?」
「…………」
「同じことをするんじゃないか?
 それにさ、私があんなやつらに負けると思うのか?」
 ニパは勢い良く首を振った。
 そうだ。私は未来が見える。
 どんな敵が相手でも、絶対に落とされることはない。
 私はにっと笑った。
「な、ニパ。友達だろ?
 私を信じろよ。お前の友達は、絶対にお前を裏切らない」
 ニパはちょっとだけ呆けたような顔をした後、何度も何度も、
 首がちぎれ飛ぶんじゃないかってくらい頷いた。
 顔はくしゃくしゃで、可愛い顔が台無しだ。
 泣くまいとしているのはわかるが、これしきのことでそうなるなんて。
「まったく……。
 可愛いやつだなーお前は」
「う、うえええ!?」
 そして、凄くからかいがいがあるやつだ。
「ニパ。私と一緒にいる限り、お前はついてないカタヤイネンなんかじゃない。
 私が守ってやるからな」
 ニパの頭に手を置いて、優しく、諭すように言ってやる。
「う、ううー……」
「もー泣くなよなー。基地に帰ったらちゃんと言うんだぞ。
 イッルがいてラッキーだった、私はとてもついてるカタヤイネンですって」
「な、なんだよそれぇ」
 ニパは笑った。
 泣きが入ってたけど、良い笑顔だ。
「うん、じゃあ、行ってくる。
 ちゃんと隠れてるんだぞ」
 そう言ってニパに背を向け、両手に持った銃を広げてみせた。
 見てろよ、ニパ。
 お前のジンクスなんて、簡単にぶち破れるんだ。
 背中で言ってやった。


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