「あれ?エイラじゃーん。やっほー」
夕食のため食堂に入ろうとした私は、小瓶をもったルッキーニに遭遇した。
「お前元気だなー……。
ん?その瓶……何はいってんだ?」
「虫ー!」
「虫って……この間の件でこりてないのかよ……」
「だってだってー!あれ私悪くないもーん!」
まぁ、確かにそうかもしれないけど。
「それよりも、また珍しい虫見つけたんだよ!見る?見るー?」
「いや、私は……」
「えへへ……仕方がないなー。はい!」
私の話を聞かず、ルッキーニは瓶から虫を取り出した。
「どうー?すごいでしょー?」
得意げなルッキーニ。
しかし、私の思考は別の方向へ飛んだ。
黒くて、つやつやしていて、背中に赤いマークのある虫……。
こんな虫、前にどこかで……。
「っておい!ルッキーニ!」
「あ、飛んだ」
「これネウロ……んぐ!?」
ネウロイだろ、と言おうとして、私は言葉をつまらせた。
何かが私の喉に入ってきたのだ。
「あー!!!!?エイラが私の虫食べたー!!!!!!!!」
「げほっげほっ……うえ!?」
じ、じゃあ、あのネウロイ(?)が私の中に……!?
泣き喚くルッキーニ。
何を騒いでいる、と声をあげて飛び出してくるバルクホルン。
何かあったんですか、と顔を出す宮藤とリーネ。
食堂の前はウィッチでごった返し、ちょっとした騒ぎになった。
そこから夕食を取るまもなく、私は少佐と隊長に医務室へと連行された。
「ふむ……確かにネウロイがいるようだが……」
坂本少佐が捲り上げた眼帯を戻しながら呟いた。
「だが、ほとんど消化されている。
もうすぐコアも破壊されるだろう。
あまり悪さをしている様子もないが……。
どうする、ミーナ?」
「うーん……。
何分前例のないことだから……。
エイラさん、身体の調子はどう?」
「んー……少し熱っぽいくらいで、他は何も無いな……」
「そう……。
それなら、今夜一晩様子を見ましょう。
明日になっても続くようなら、一度病院で検査した方がいいわ」
その晩はそれで解散となった。
異変が起こったのは次の日のことだ。
目を覚ました私は、何か妙な違和感に苛まれた。
別段体調が悪いわけでもなく、どこか痛む箇所があるわけでもない。
ただ、何か……。
「っくしゅん!あれ……?
私、裸で寝たっけ……」
くしゃみをして気づいたが、私は一糸纏わぬまま寝ていたらしい。
サーニャにこんなみっともない格好は見せられない。
早く何か着るものを。
「……?
なんか、広い……?
おっきい……?」
ベッドから降りると、住み慣れたはずの部屋が普段よりもずっと広く感じた。
それだけではない。椅子やベッドといった家具も、記憶にあるものよりかなり大きい。
「……エイラ、なの?」
混乱する私に追い打ちをかけたのは、サーニャだった。
「ち、違うんだサーニャ!
これは、その、汗をかいたから着替えようと思って!!」
「やっぱり、エイラなんだ……」
サーニャが近づいて……近づいて……あれ?
サーニャこんなに背、高かったっけ?
「エイラ……何があったの……?」
「サ、サーニャ?」
サーニャは私の両脇に手を差し入れ、ひょいと持ち上げてみせる。
「サーニャ、こんなに力持ちだっけ……」
「違うわ……エイラ、小さくなってる……」
「え?」
今なんて?サーニャ、もう一回お願い。
「エイラが小さくなってるの……」
「えええええええええええええええええええ!!!!????」
とりあえず私は、サーニャに服を貸してもらい(それでもダボダボだ)、状況を整理することにした。
椅子に腰掛けようとしたが、大きい服が引っかかってなんとも座りにくい。
四苦八苦してたら、サーニャが膝に座らせてくれた。
「さ、サーニャ?」
「いいから……」
「う、うん……」
すっごいドキドキする。
照れ隠しも兼ねて、私は少し、大きな声で喋りだした。
「多分、っていうか、原因は絶対アレだ。
昨日、夕食の時ルッキーニが虫を持ってきてさ。それを飲み込んじゃったんだ……」
「虫を飲むだけでそうなるの……?」
「その虫がネウロイだったんだ!
見た目もそれっぽかったし!!」
「そう……。
エイラ……もう少ししたら、ミーナ隊長と少佐のところに……」
「わかってる」
眠いだろうに、膝に私を座らせて優しく髪を撫でてくれるサーニャ。
「大丈夫だよ、エイラ……。みんなついてるから……頑張って元に戻ろうね……」
サーニャの優しい言葉に、私は不覚にも、涙を抑えられなかった。
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テーマ : 二次創作:小説
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