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スオムス文庫 エイリカ-1-1『スオムスより愛を込めて』

 ある朝、目を覚ました私は、自分が縛られていることに気が付いた。
「うむ!?むぅー!!!」
 猿轡を噛まされ、ご丁寧に目隠しまでされている始末。
唯一得られる情報といえば、凄く狭い場所にいるということだけだ。
 ……いや、まだある。
 小刻みな振動と、エンジン音?
何が何だかわからない。
 なんとか自由を得ようともがいてみたが、何一つ、良い兆候は無かった。
 魔法を使ってみたが、予知できる限りだと、しばらくこのままだ。
 開放されるのはまだまだ先らしい。
 仕方がない。私は諦めて、成り行きに身をまかせることにした。
「ん……?眩し……」
 眠っていたらしい。
 白い光が私の視界を覆っている。
 それを遮る人影……天使?
いや、違う。
「ちっす」
「……ハルトマン中尉」
 私を縛っていた縄が解かれ、トランクケースから這い出た。
 なんてやり方だ。
 荷物扱いされる日が来るかどうかなんて、占ってもみなかった。
「ここ、どこだ……」
 痛む関節を伸ばしながら聞く。
 平常心を保つよう努力はしているが、苛立は抑えられなかった。
「ブリタニア」
「なんで!?」
「歩きながら話すよ。
 明日にはロマーニャに帰らないと」
 そう言ってハルトマンはくいっと進行方向を指差し、気だるげに歩き出した。
「ま、ま、ま、待てよ!」
「クリス、あ、トゥルーデの妹なんだけど、そのクリスがね、エイラに会いたいんだってさ」
 私はへ?と間の抜けた声を出してしまった。
 何だってそう、唐突なんだ!
「それと、私が荷物扱いで空輸されたことに、なんか関係あんのかよ……」
「大ありだよ!トゥルーデがエイラとは会わせん!って大騒ぎ。
 今日も基地でエイラの部屋を見張ってるよ」
「な、なんでそんなことに……」
「クリスはミーハーだからねー。
 マルセイユからサイン欲しがったり、伯爵から花束送られて喜んだり。
 エイラもサーニャが絡まなければバッチリクリスの好みだからね。
 トゥルーデも慌てるってわけ」
 何箇所か、気になる部分はあったが、自体は把握した。
 要するに、出来る限りの格好良さで、バルクホルン大尉の妹を見舞ってやれば良いわけだ。
 ここまで来てしまった以上、足掻いてもししょうがないだろう。
 それくらい、やってやるさ。
「仕方がねぇなー……。
 あとで何かおごれよ……」
 駐車場からはハルトマンが運転した。
 手配済みだったらしい。
 寝ている間に荷造りされたことといい、空運の手続き、さらには車の手配と実に手際が良い。
 私はつい関心してしまった。
「っていうか、そのうちニパにやってやろう……」
「ん?なんか言った?」
「なんでもないなんでもない」
 基地から15分程走ると、クリスのいるという病院に到着した。
「うぇ。軍服しわくちゃ……」
「ほらいくぞー!いっそげー」
「あ、待てって!」
 こんなハルトマン中尉ですが、私よりも年上です。
「どうぞ」
 病室の扉をノックすると、明るい声が返ってきた。
「やっほー!クリス元気ー?」
 馴れた風でずかずかと入っていくハルトマンに、私も続いた。
 ハルトマンを見て、可愛らしい少女は満面の笑みを浮かべた。
 なるほど、確かにミヤフジと似ているかもしれないな。
「あ、ハルトマンさん!あ、そちらの方は……」
「エイラ・イルマタル・ユーティライネン。
 はじめまして、クリス」
「わぁ!はじめまして!」
 輝いた目がとても眩しい。
 ミヤフジもこういう目をするなぁ……。
 少し気恥ずかしい。
 クリスはとてもいい子だった。
 明るくて、気立てもいい。
 バルクホルン大尉が姉バカになるのも、なんとなくわかる。
 元気さに至っては、こちらが少し押されるくらいだった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、そろそろ帰らなければいけない時間になった。
 最後にサインを求められたので、何か適当な紙はないかと見回す。
「はい、これ」
「ありが、と……!?」
 ハルトマンの差し出した紙は、ちょっと前に私が取ったものだ。
 だが、ただの写真じゃない。
 マルセイユが来たとき、対抗して取った写真で、破棄したはずの一枚だ。
「な、ななななななな……!?」
 にしし、と笑うハルトマン。
「わあ!この写真、すっごくカッコいいです!
 これにサインしていただけるんですか!?」
「う、うぇ!?」
「そうらしいよー。
 良かったねークリスー」
「はい!」
 写真の私が精一杯キメた笑顔で、私を見ている。
 ごくり、とつばを飲み込む。
 結局私は、震える手で生き恥にサインを施したのだった。
「……なんであの写真持ってんだよ」
 帰りの飛行機で、私はハルトマン中尉に聞いた。
 正直、頭を抱えたい気分だ。
 問い詰めるほどの元気はない。
「さぁ?何ででしょう」
「まだ、何枚か、あるのか?
 まさかとは思うけど、サーニャには見せてないよな!?」
 含み笑いだけで、答えはない。
 変な汗が出てきた。
どうしよう……あんな写真、サーニャに観られたら恥ずかしくて死んでしまう。
私は横目でハルトマンを睨みつけた。
 こっちを見て微笑んでいるハルトマンと目が合い、慌てて目を逸らした。
「またクリスに会ってくれるかな」
「…………それくらい、別に良いけどさ」
 ハルトマンは嬉しそうに笑い声を上げると、すぅすぅと、寝息を立て始めた。
 毒気を抜かれた私も、それに習い、ゆっくりと目を閉じた。



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