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スオムス文庫 芳イラ-4-1『白いシーツ』

 ミヤフジは、私にとって何なんだろう。
そんな考えがふと浮かんでからというもの、気がつくと、そのことばかりを考えていた。
これじゃあまるで私がミヤフジのことを好きみたいじゃないか。
厨房に立つミヤフジを、横目で睨む。
相変わらず、何が嬉しいのかにこにこと笑っていて、私の悩みなんてお構いなしだ。
……まぁ、構われても困るんだけど。
ミヤフジの作る料理は美味い。
美味いと言ってやると本当に嬉しそうに笑って、「ありがとうございます!」なんて言う。
 礼を言うべきなのはこっちなはずなのに。
他のみんなが思い思いに席を立っても、後始末に昼食の仕込みと、
 食後のちょっとした自由時間も、みんなのために使ってしまう。
お人好しだと思う。
時々歯がゆくなることもないではない。
だけど、そんなお人好しのお陰で、殺伐としたものになりがちな、
 最前線の空気から救われているのも事実だ。
食事の後片付けが終わると、今度は掃除のために基地中を走りまわる。
 休暇の日だろうと、それは変わらない。
この後に訓練や哨戒、出撃なんかを控えていることもあり、体力が持つのかと心配になったりもするのだ。
原隊にいた頃は、上がりを迎えて退役したウィッチや、
 男性兵士の奥さんなんかがそういった雑事を片付けてくれ、私たちは戦闘に集中することが出来た。
ウィッチの宿舎以外は普通に男の兵士が歩きまわったりしていたし、
 世話をしてくれる女性がいないときは交替制でやったりしていた。
隊長の苦労や心配も分かるけど、あまりリーネやミヤフジにばかり負担が集まるってのも……。
「……って、ちょっと待て」
そういう話なら、暇な奴が手伝ってやればいい話じゃないか。
まぁこの部隊、手伝えない程に忙しい人たちと、
 とても手伝えるとは思えないガサツな人たちが大半だけど。
とにかく、私は料理以外ならそれなりにやれるのだ。
今日くらいミヤフジの手伝いをしてやっても良いだろう。
これも、日頃の感謝の気持ちだ。それだけだ。
「なぁミヤフジ。なんか手伝うことあるか?」
「えっ!?」
 私の急な申し出に、ミヤフジは目を見開き、転ばんばかりの勢いで仰け反った。
「そんなに驚くなよ。たまには手伝ってやろうと思ってさ。……あ、もしかして、邪魔か?」
「そ、そんなことないです!嬉しいんですけど、突然だったのでびっくりしちゃって……」
 この基地の人間で手伝いを申し出るやつなんていないだろうしな……。リーネは別として。
「じゃあ、今から洗濯物を干しに行くんですけど……手伝ってもらえますか?」
 にっこりと笑うミヤフジ。
良かった、喜んでくれたみたいだ。
 外は今日も快晴。微かに風があって、手伝いが終わったら昼寝するのも良いな、なんて思ってしまう。
私たちは早速、籠を一つずつ持ってその中身を干し始めた。
「それにしても、どうしたんですか?急に」
 ミヤフジ楽しそうに笑いつつ、聞いてきた。
「えーと……なんでだっけ。確か……」
 確か、ミヤフジが日頃頑張ってて、軍務でヘバらないかな、と思ったんだよな。
 その前にも何か考えてた、よう、な……。
ここにきて、私は最初に抱いていた、青春風味たっぷりの、恥ずかしすぎる悩みを思い出してしまった。
流石にこれは言えない!
慌てて手を振りながら、
「な、な、なんでもない!ただの気まぐれだよ!気まぐれ!!」
「?そうなんですか?でも、嬉しいなぁ」
 えへへ、とミヤフジは笑い、足元の籠から次のシーツを拾い上げる。
 流石に手馴れているな。早い。
私はと言うと、動揺のあまり手が止まっていて、ほとんど進んでいなかった。
 これでは足をひっぱるばかりだ。
「でも、そんなに大変なのか?隊長に言って、もう少し仕事の量減らしてもらったほうが良いんじゃないか?」
「いえ、こういうお仕事は嫌いじゃないので平気です」
「ふうん?まぁ、辛くなったら言えよ。一緒に隊長のトコ、行ってやるからさ」
「はい!ありがとうございます」
 こうしている間にも、ミヤフジはどんどん進めて、自分の分を空にしてしまった。
「そっち手伝いますね」
「悪いな」
 気にする様子もなく、笑顔で私の分を手伝い始めた。
「あの、エイラさん」
「どうしたー」
「今日は本当にありがとうございます」
「良いって。いつも任せっぱなしじゃ悪いしな」
 少し強い風が吹いて、シーツをばたばたと羽ばたかせた。
一瞬飛んでいってしまわないかと冷や汗をかいたが、クリップは存外しっかりしているらしく、
 一つとして舞い上がったものはない。
だが、風はまだ吹き続いていて、暴れるシーツはミヤフジを、すっかり覆い隠してしまった。
「今日は……」
「ん?なんか言ったか?」
 風とそれに煽られるシーツの音で、ミヤフジが何を言ったのか、聞き取れない。
「いえ、何でもありません!」
 何度か聞き返しても、ミヤフジは答えてくれなかった。
 でも、ちらっとみえたミヤフジの笑顔は、何故か幸せそうだった。
いつの間にか、籠の中も、空になっていた。



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