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スオムス文庫 サニャイラ-5-1『じゃれあいの裏で』

白いシーツの続きです





目を擦りながら時計をみると、まだお昼前。中途半端な時間に起きてしまったものだ。
エイラはどこだろう。
この時間はあまり一緒にいてくれないのだけど、ついつい部屋の中を探してしまう。
部屋はしん、と静まり返っていて、私しかいないようだった。
少しだけ、残念。
エイラにはエイラの仕事があるし、仕方がないとは、分かっているのだけど……。
 水差しからコップへ水を移し、一口、二口と舐めるように飲んだ。
ぬるい水で口を潤し、もう一眠り……。そう思った時だった。
「あ!バカ!折角干したのに!」
 外からエイラの声が飛び込んできた。楽しそうな声。
気にすることでもないはずなのに、どうしてもこのまま眠る気にならない。
もしかしたら、今声をかけたら、少し一緒にいてくれるかも、
 なんて都合の良い事を考えたのかもしれなかった。
窓を開けて、声がした方を覗き込んだ。エイラを呼ぼうとして、飛び込んできた光景に息を飲む。
「ごめんなさーい!」
「あーもー!どろだらけじゃないか!」
 端っこに泥が着いたシーツを持ったエイラが、芳佳ちゃんを追い回していた。
その光景が、まるでじゃれ合っているようで……。
「あっ」
「あ……」
 何となく言葉に出来ない思いを抱いていたのは、私だけじゃなかったらしい。
「サーニャ、ちゃん」
 隣の窓から身を乗り出していたリーネさんが、私を見て微笑んだ。
 いつもの柔らかい笑顔じゃなく、気まずそうな、ぎこちない笑顔。
 私たちはしばらく、変な緊張感を共有しながら、どう動いたものかわからず、じっと見つめ合っていた。
「あ、あの……そっち、行っていい?」
 最初にそれを破ったのはリーネさん。私は頷いて扉をあけた。
「芳佳ちゃんとエイラさん……。仲、いいよね……」
 私は頷いた。なんて言えば良いかわからなかったから。
 エイラはどろんこのシーツを広げて、芳佳ちゃんをくるもうと追いかけていた。
 芳佳ちゃんは笑いながら逃げている。
 ちらっとリーネさんの横顔を盗み見ると、なんだかとても悲しそう。
私はどんな顔をしているんだろう。
「捕まえた!」
 エイラが芳佳ちゃんを捕まえ、抱きつくようにしてシーツでくるむ。
 そして何かに躓いたのか、ごろごろと芳佳ちゃんを抱きしめたまま、転がった。
なんだろう。
なんだか、すごく面白くない。
芳佳ちゃんと仲良くしているエイラに感じている気持ちなのか、
 エイラと仲良くしている芳佳ちゃんに感じている気持ちなのか。
今すぐ下に降りていって、芳佳ちゃんからエイラを引き剥がしたい。
そして、そして……。何を、言えばいいんだろう?
「あ、あの……サーニャちゃん……?」
 私の頭はぐらぐらと熱くなっていて、リーネさんといた事を、すっかり忘れてしまっていた。
慌てて振り向くと、困った様子でこちらを見ていて、ちょっと申し訳ない。
「……ね、座ろっか」
 私は黙って頷いた。
だって、外を眺めているのが辛い。リーネさんも多分、同じ気持だ。
「なんだか、仲の良い友達が、他の人と仲良くしてるのって、つらいよね」
 リーネさんは、ちょっと強がりな笑顔を浮かべ、
 ただのワガママってわかってるんだけどね、と付け加えた。
私はどうしても笑い返すことができなくて、膝の上に置いた自分の手を、じっと眺めていた。
友達。私とエイラは、友達?
エイラは私を大切にしてくれているけど、本当に友達なんだろうか。
私はエイラの足枷になっている。それは、ずっと前から思っていたことだ。
 サーニャと一緒ならどこへでも行ける。エイラは何度も何度も、私に言ってくれる。
でも、それは本当?
私さえいなければ、今よりもずっと早く、遠くへ行けるんじゃないか。
だって、エイラはウィッチとしても、人としても、眩しいくらいに光っている。
スオムスでエイラが、どれだけの人に慕われているか、私はそれをよく知っている。
一緒にスオムスに行ったときは、エイラを知らない人なんていなくて、常に人に囲まれていた。
エイラが眩しいと思った。寂しいとも感じた。なんだか遠くにいるようで、声をかけられなかった。
それでも、エイラは私に手を差し伸べて、一緒に行こうと言ってくれたのだ。嬉しかった。
そこまで考えて、私はエイラがいないと、何もできなくなっていることに気が付いた。
どうしよう。
このまま、エイラが芳佳ちゃんと一緒にいるのは、嫌だな。
 突然、リーネさんが立ち上がった。
「サーニャちゃん、行こっか」
「え……?」
「なんか悔しいし、二人のところ行って、混ぜてもらお?」
 いつの間にか、リーネさんの笑顔に、力強さが戻っている。
強いんだ、リーネさん……。
私も勇気をもらった気がして、腹を括った。
エイラはもう、私の一部。
芳佳ちゃんは友達だけど、何時までも貸している気にはならない。
 5分後、私はリーネさんと一緒に、ごろごろ転がる二人の上へ飛び込んでやった。
エイラが驚きながら、私を抱きとめる。
びっくりしたエイラの顔は、なんだか間が抜けていて、可愛らしい。
私はささやかな戦利品として、その時の顔を胸の奥にこっそりと、仕舞い込んだのだった



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