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スオムス文庫 サニャイラ-3-6『Small World 6』

 ついにこの日が来てしまった。
私はバルクホルン大尉の部屋の前で立ち止まると、緊張と怯えからすっかり足が竦んでしまい、一歩も動けなくなってしまった。
「こんなことなら、ミヤフジに着いてきてもらうんだった……」
 遡ること一週間前。
大尉は基地内で誘拐事件を起こし、一週間の飛行禁止、
 雑用・軍務以外での外出を禁ずる自室禁固処分を言い渡された。(書類上は休暇扱いだが)
その一件と、事件の被害者である私が、今ここで立ち竦んでいる事には、割と密接な関係がある。
大尉の自室禁固の期間は今日で終わり、また明日からは出動、訓練と忙しい日々をおくることになるわけだ。
しかし、いくら罰の意味合いがあるとは言え、大切な休暇を雑用と自室禁固で終わらせるのは、
 自業自得とは言えあまりにも可哀相だ。
なにせ、大尉は501のトップエースであり、戦闘ではハルトマンと並んで支柱なのだ。
事件の再発防止と、大尉のメンタルケアは必須。
 そこで私に出番が回ってきた。
要するに、一日姉妹というわけだ……。
「た、大尉ー?」
 扉をノックすると、バタンバタンという騒がしい音に続いて、息を切らせた大尉が顔を出した。
「き、来たか……!」
 どうもバツが悪いらしい。そわそわと落ち着きがない。
まぁ、そりゃそうだろ……。
「入ってもいいか?」
「あ、ああ。だが、ハルトマンの方には行くなよ。危ないからな」
 早速大尉はお姉ちゃん風を吹かせ始めた。
「すまんが、私の部屋には遊べるものが無くてな……。
 話すか、本を読むくらいしかやることがないのだが……」
「それで良いよ」
 私も、大尉の戦歴なんかには興味がある。
「その時クリスは……」
「クリスの奴、転んだ私を見てな……」
「クリスは全く……」
「クリス……」
 妹の話ばっかりだった。
 本当に妹が全てな人生なんだな。
 しかし、あまり器用でない大尉に話術など期待できる筈もなく、ただ聞いているだけでは退屈だ。
そこで私は、楽しそうに話す大尉に茶々を入れてその反応を楽しむことにした。
 悪くない。大尉も心なしか、楽しげだ。
やがて窓の外は薄闇に包まれていき、腹の虫が大きな声を上げて鳴いた。
楽しげに思い出を話していた大尉は、しばしぽかんと口を開けていたが、
 やがて大きく口を開けると、たまらないという風に笑い出した。
私も苦笑する他なかった。
なぜなら、丁度今、大尉が話していたクリスも全く同じことをしていたのだから。
「そろそろ宮藤が食事を持ってきてくれる。待てるか?」
「子供扱いすんなよな……」
「身体は子どもだろう。正直なものだぞ」
 大尉の顔が少しばかり、実姉とダブって見えた。
 歳も離れていたし、やんちゃであまり家にはいない人だったが、時々こうして私を気にかけてくれたものだ。
 そうして少し、懐かしい気分に浸っていると、ミヤフジが温かい料理を運んできてくれた。
大尉は礼を言い、少し話でもしていかないかと誘ったが、
 ミヤフジはそれを断り、微笑ましいようなものでも見るように目を細めて、静かに部屋を出て行った。
「フラれちゃったな?大尉残念」
「そ、そんなことはない!!」
 小さなテーブルを囲み、二人で取る夕食。
普段は大勢で食べているせいか、少し新鮮だ。
「ほら、落ち着いて食え……」
 大尉は頬についたパンくずを取ってくれ、私の皿へ芋を一個、分けてくれた。
 子どもの身体というのは本当に正直なものだ。やせ我慢なんて出来やしない。
私は頭を下げて礼をすると、私はがっつくように口の中へと放り込んでしまった。
そんな私とは対照的に、大尉はいつも通りのゆっくりとした調子で食を進めていて、
 時折私が顔を上げると、何故か柔らかく微笑んでいた。
「……なんだよ」
「気にするな。ほら、もう一個食え」
 大尉のこんな顔は、初めて見た。
ちょっと胸が熱くなってしまい、なんだか少し気恥ずかしい。
私は黙って皿を差し出し、大尉も何も言わずに芋をよこした。
 食事が終わり、私たちは風呂に入ってもいいということになった。
大尉は私の髪を優しく洗ってくれ、私はそのお返しに大尉の背中を流した。
みんなは既に上がった後らしく、浴場にいるのは私と大尉の二人だけ。
お陰でゆっくりと、湯船に浸かることが出来る。
「この間は、本当に済まなかったな」
 私を膝に乗せたまま、大尉はつぶやいた。
私は湯船に浸かったまま座ると、顔の半分まで沈んでしまうのだ。
「私も何であんなことをしてしまったか、分からないんだが……。
 お前やサーニャには特に迷惑をかけた」
 声は私の背中の方から降ってくるので、表情まではわからない。
 だが、声は沈んでいて、今日にいたるまで、相当苦悩したことがうかがえた。
「私は気にしてないし、大尉もあまり気にしちゃ駄目だぞ。サーニャももう怒ってないし」
 多分。
「そうは言うが、な」
「大尉は真面目だからなあ。その分何かが切れると、とんでもないことやっちゃうんだな」
 いつもなら即座にそんなことはない!なんて叫ぶんだろうが、
 流石に事件の直後でもあり、何も言えないらしい。
「まぁ、でもさ。今回のは大尉に良い教訓になったんじゃないか?」
「教訓?」
「そ。溜め込み過ぎは良くないって言うさ。
 大尉は妹さんのこととか、カールスラントのこととか……、あとは手のかかる部下達のこととか?
 まー色々悩んでるんだろうし、それを周りに言えないってのもわかるよ。
 でも、ちょっとは吐き出すのも大事だよ。私たちだって大尉に甘えるだけじゃないんだから」
 頼りないってのはわかってるんだけどね。
大尉は考え込んでいるようだった。
年上で、しかも私よりも遥かに大量の戦果を上げている大尉に、なんてこと言ってるんだ、という気はする。
でも危なっかしいのも事実だ。
大尉はややあって、そうだな、と呟き、
「上がろうか。このままではのぼせてしまう。それに、そろそろ子どもは寝る時間だ」
「だから子供扱いすんなって!」
 パジャマ替わりにサーニャのシャツを羽織ると、大尉は私の髪を優しく拭いてくれた。
子供扱いするなとは言ったものの、もう眠くて眠くて仕方がなくて、
 髪を拭かれながらこっくり、こっくりと舟を漕いでいた。
「眠いのか」
 優しく問いかけられる。
私は頷いたつもりだったが、それが大尉に伝わったかはわからなかった。
ぼんやりと覚えているのは、大尉が私に一言二言囁いたこと。
後は、布団に寝かされた後、髪をなでる優しい手があったということだけだ。



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