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スオムス文庫 芳イラ-5-1『おとしもの その1』

 ストライカーを履き、エンジンへ魔力を送り込んだ。うん、いい調子だ。
整備兵の腕は良いし、スオムスと違って部品も豊富にある。
 常に万全のコンディションで出撃できるのは、心底ありがたかった。
「行くぞ!」
 坂本少佐が叫び、みんなが後に続いた。
私も二番機のミヤフジを振り返り、準備が整っていることを確認すると、一気に空へと飛び出した。
一面の青が私たちを迎えてくれる。
普段は、例え出撃時であったとしても、その美しさを楽しむ余裕がある。
だが、どうしたことか……、何かが欠けている気がしてならない。
ミヤフジは着いてきている。エンジンも快調で、武器に異常はない。
 朝に占った時だって、特に悪い結果が出ていたわけでもない。
 だというのに、もやもやとした不快感が私の胸にわだかまり、まるで初陣の時のような不安に身を震わされる。
「いたぞ!」
 魔眼を煌かせ、少佐が叫んだ。
バルクホルンとハルトマンのロッテが、心得たと言わんばかりに前へ出た。
「シャーリー・ルッキーニは私と並べ!エイラ・ミヤフジは後ろからだ!」
 了解、と皆の声が揃う。
大きな黒い塊が視界に飛び込んできた。
「行くぞミヤフ、ジ……っ!?」
ここに来て、この土壇場で……、私はやっと、何が欠けているのか、気付いてしまった。
「ど、どうしたんですかエイラさん!?」
「見えない……」
「え?」
「見えないんだ……。見えない……、なんで……」
 未来が、見えない。
 魔法を発動させている時、常に私の頭へ飛び込んでくる、未来のビジョン。
 そうだ、今日はそれが、無かった……。
「エイラさん!危ない!!」
 ミヤフジの叫び声で我に帰り、慌ててシールドを張った。
危うく直撃弾を貰うところだった……。
怖い。
身体がガタガタと震えた。
シールドは常に出力が最大で、魔力がどんどん無くなっていくのがわかる。
 本当ならば相手の攻撃や状況に合わせ、出力をいじらなければならない。
 そんな初歩中の初歩すら、頭になかった。
 みんなが戦っている。私も行かなければ。
私はふらふらと上昇し、再びネウロイの光弾で弾き飛ばされた。
焦りと恐怖で思考が上手く働かない。
私は泣きながら銃を乱射しては、ネウロイに弾き飛ばされるということを繰り返していた。
「何をやっている!?エイラ!!邪魔だ!!!」
 坂本少佐の声が、インカムを通して私を叱る。
だが、どうしようもない。わからないんだ、何も!!
「ミヤフジ!エイラはどうした!?」
「わかりません!さっきから、見えない、見えないって……」
「何!?目をやられたのか!?」
「いえ、傷は負ってないみたいで……」
「そうか……。まずはエイラをここから遠ざけろ。
 その後でなんとか説得して、戦線に戻れるようなら連れて来い」
「あ、あのっ……。無理だった場合は……」
「エイラと一緒に帰投しろ」
 弾が切れ、私はついに空中で立ち尽くした。
「どうしたら……、どうしたら……。誰か……」
泣きながら、祈るような気持ちで呟いていた。
そんな私の手を、温かいものが優しく包んだ。
「エイラさん、大丈夫ですか?とりあえずここから離れましょう」
「でも、みんなが……」
 みんなが戦っている。
「みなさんは大丈夫です。それより、怪我はありませんか?」
 私は黙って首を振り、縋りつくように握り返した。この小さな手が、今はどこまでも心強い。
 ミヤフジは良かった、と言って微笑み、手をつないだまま、優しく私を連れ出してくれた。
基地に帰った私は、直ぐ様ミーナ隊長の部屋へ呼ばれた。
ミヤフジも一緒だ。震える私の側で、そっと手を握ってくれている。
 隊長も私の様子を見て、心配そうな顔をしていた。
 私は自分でも状況が整理しきれていなくて、言葉にするのが大変だった。
「未来予知が、出来ない……。そう……。」
隊長は呟いた。私は情けなくて、隊長を見ることが出来ない。
 ミヤフジの手をきゅっと握りしめ、俯いていた。
「それは本当なのか、エイラ」
「少佐……」
 振り返ると、難しい顔をした少佐とバルクホルン大尉が入ってきた所だった。
「ミーナや宮藤と違い、お前の未来予知は常に発動しているタイプのものだったな」
 少佐の問に、私は素直に頷いた。
これから叱責されるのだろう。
散々足を引っ張った挙句、仲間を取り残して戦場を離れた。
 もしかすれば、役立たずとして隊を追い出されるのかもしれない。
寂しい。寂しいが、仕方がない……。
そうして身を硬くする私の予想とは逆に、少佐の声は優しく、いたわるような響きを持っていた。
「エイラ。お前は明日からしばらく出撃から外す。それでいいな、ミーナ」
「わかったわ」
「役立たず、だからか……」
 搾り出すように言うと、ぽたり、ぽたりと、涙が床に染みを作った。
「馬鹿な事を言うな。お前は重要な戦力だし、何より同じ隊の仲間だろう」
 少佐は言葉を一旦切り、子どもに言い聞かせるような調子で、
「なあ、エイラ。私たちがお前の分まで戦ってやる。だから、お前は一日でも早く未来予知を取り戻せ」
 私は泣いた。年甲斐もなく。
ミヤフジが肩を抱き、優しくさすってくれている。
「宮藤。お前もしばらく外す。エイラに着いて、手伝ってやれ。模擬戦その他色々試してみろ」
「はい!」
 年下のちんちくりん。そんなミヤフジが、今は誰よりも頼もしかった。



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